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逆噴射小説大賞2021エントリー収集

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#逆噴射小説大賞2021  のエントリー作品を全て収集するマガジンです
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2021年10月の記事一覧

神の国を血に染めて

 会社を辞めた直後に見上げる青空ほどこの世に美しいものはない。それがクソみたいな職場であ…

棺桶六
2年前
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新校舎の蜘蛛

 女はブリッジをしていた。逆さ向きになった人間の顔はどうしてこれほど恐ろしいのだろう。そ…

zealotofBW
2年前
8

御竜氏は竜の威を借る者を狩る

夢を見ていた。竜王の提案を呑んで竜殺しをやめた日の夢だった。表情と反応から察するに、おれ…

グエン
2年前
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クロの買い物紀行

待ち合わせの場所にサラは来なかった。三日前の話。その代わりにあれが来た。 赤い花々で彩ら…

Oo_t(uki)
2年前
8

デビル・ミーツ・ガール

 聖堂の天蓋を見ていたシスターの視界は、自分を犯そうとした兵士の噴き出す血で真っ赤に染ま…

ナタ
2年前
9

宙、つめたく冷えて

 横薙ぎに椅子を男のこめかみに叩きつける。  吹っ飛んだそいつに椅子を投げつけ、腹の包丁…

摩撫甲介
2年前
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切られた脳と、消せないアイツ

俺の頭をいじくるように推薦したのは仁らしい。 「そこのバイク止まりなさい!」 「前原逸男! 君には出頭義務がある!」 パトカー三台、黄色で『処理推進センター』のロゴが入った黒のバン。 「原チャ一台にかよっ!?」 警官に囲まれたオレの前でバンのドアが開く。 出てきたのは女だ。出るとこは出てるカラダをリクスーに包んで、手には竹刀。 「前原くん、出頭命令が出たことはわかってるよね」 笑った。けど、こっちを殴る事しか頭にない。そんな笑顔だ。 「ざっけんなよ!」 女の陸上選手みたい

【小説】ドラゴン銀行

我ら兄弟、ちちははは別なれども流れる血は同じ。 我ら同胞の血を溢さず、また銀に換えず。 ~…

脱臼
2年前
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パニシュ・ユア・ヴァニシュ

 問題。重量2g余りの僅かな金属片で人が殺せるか。答えは恐らくイエス。全長15mmのリムド薬莢…

直感探偵

 口にはバツ印に赤いマスキングテープを貼られ、心臓は百円均一の包丁で一突き、太ももに花の…

にーにー
2年前
6

13階段

折り畳んだメモを開く。 十数名の名前が並ぶ。すでに三人の名前には、赤い線が上から引かれて…

shunya
2年前
5

朝の梟と夜の太陽

 あなたは大丈夫だよね。  彼女がそう言っていたことをどうしても思い出す。あの時、彼女の…

宮塚恵一
2年前
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サラエボの日

 1914年6月28日。オーストリア=ハンガリー帝国領、サラエボ。  僕は小さなカフェから、窓の…

bluebird_kndk
2年前
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ピーターパンの手枷

俺は、今地上から70m上空にいる。多分。 無職になって、早半年。自棄になった俺は飲み屋で暴れて、追い出された。前後不覚のまま路地裏でぶっ倒れて、空を眺めていたとき、アルコールのせいか、妙にふわふわ浮くような感覚があった。「今なら、飛べる!」と叫んだ辺りまでは覚えている。気づけば、俺は単身で宙に浮いていた。それも遥か上空で。 始めは酔いもあって喜んだが、一時間飛んでいれば、酔いも覚める。いま、落ちたら死ぬという恐怖も二時間も浮いていれば薄れる。そして、どうすれば降りること