第1回逆噴射小説大賞:二次選考通過作品まとめ

256
テイルズ・オブ・クレッセント・シティ:テッサリアの歌

テイルズ・オブ・クレッセント・シティ:テッサリアの歌

 三本腕のドラマーが完璧なシンコペーションを展開している。この波に乗って、トランペット、トロンボーン、クラリネットの三管が自由に音を遊ばせている。三管を担当するのは二人。長身の一体双頭の結合双生の女と、彼女達の足元で跳ね回る小人。  不意に重厚な音が層を作り、クラブ全体を包み込む。アップライトベースが演奏に参加してきたのだ。このベースは巨人症の持ち主に相応しく、通常のベースより更に大きく厚い。その音はまるで山脈の呟きだ。  TCFの演奏が終わり、クラブの天井は紫煙で燻される

3
De Vermis Cultusist

De Vermis Cultusist

 紺碧の海面に斜陽が煌めいている。海原を吹き抜ける風が心地良い。サンフランシスコから上海までをつなぐ太平洋航路、SSプレジデント・クーリッジは予定通りホノルルへ向かい航海中だ。  スペシャル・クラスの船室に陣取った二人は、神経を尖らせて拳銃の手入れをしている。その眼差しは狂気の一歩手前といったところである。  「間違いない、この船のどこかに『ワーム』はいる」  「『妖蛆』か、実在するとは思わなかったが……既に最下層で死体を見つけた。無残なものだった」  男は溜息をつきながら

3