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【試読】ダイハードテイルズ・サンプラー

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#ダークファンタジー

【試し読み】ダークゴシック・ヒロイックファンタジ小説「灰都ロヅメイグの夜」 1:霧と酩酊

1:霧と酩酊  霧。隠匿。酩酊。霧。隠匿。酩酊。  今宵はいささか、冷え込む。  重たげな霧がセード式外套の袖口をこじ開け、忍び込もうと試みていた。疾く早く、今宵の酒場に逃げ込もう。君は懐から真鍮性の酒入れを取り出し、蓋をひねり、秋の香りのゾード果実酒を軽く口に含んだ。麗しき風味が鼻腔にまで広がり、心の臓がゆっくりと拍動を速める。当座のしのぎを存分に味わった。  多層の蜘蛛の巣の如く張り巡らされた、幾千もの街路橋の一つを彷徨い歩く。ゾード酒が程良く回ってきた。石畳を踏

【試し読み】灰都ロヅメイグの夜 2:我等が故郷

承前 2:我らが故郷 無数の寺院、神殿、学院、書庫、大劇場、賭場、工房、地下大墳墓、坑道、貧民窟、伏せ目の辻、教団、殺害者ギルド、陰謀団、金銀、宝石、財宝、剣、弓銃、銃、蒸気鉄車……神秘と欲望の香り漂うあらゆるものが灰都で作り出され、編み出されている。だが、その多くが巨大都市直下の遙か地底にて、絶える間もなく行われる大規模な発掘作業による成果であると云われ、少なくともこの数世紀の間、ロヅメイグに於いて新たな物は何一つ作り出されていないのだとも云われる。魔法もまた、灰都にあっ

【試し読み】灰都ロヅメイグの夜 3:斜陽の剣士達

承前 3:斜陽の剣士達 廃屋の二階、ロー・ロクムの鍛錬場は、少なく見積もっても五十人の剣士がその技を磨くだけでなく、炊事その他を賄うに十分な広さを有している。そして、かような夜更けにあってもなお、十人からの剣士が其処に在った。もっとも、そのうち高位に属する数名は、窓際のテーブルを囲んで、フォウス酒とポーカーを愉しんでいるのであるからして、剣技の鍛錬に励むは僅か四人となるのだが。  剣技の鍛錬を行う四人のうち二人は、未だ剣の道を歩みだして間もない少年であった。真剣を扱うさ