逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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ドクター・サンクスギビング

時間がなかった、時間がなかっただけなんだ。成り行きでやったことだから私は悪くない。仕方のなかったことだ。
「クソッ!」
 パソコンを見ながら私は手に持ったマウスを床にたたきつけた。画面にはNMRスペクトルが表示されている。その結果は、本来あるべきケミカルシフトが表示されていない。つまり私が論文で発表した化合物は合成できていない。深夜2時の研究室には私以外誰もいない。蒸留器と乾燥機がゴウゴウと唸り、

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