逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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夜を撫でる手

早朝。
ひんやりとした心地よい気配に、目を開ける。
薄っすらと青みがかかった静謐な空気の中、ぼんやりと周囲に目をやると、部屋が樹海になっていた。
ベッドを中心として半透明の植物達が所狭しと生態系を構築し、淡い緑色に発光する粒子が海中のクラゲのように漂っている。苔むした布団から身を起こしあくびをする俺の横を、光る小魚の群れが泳いでいった。
「あたりだな」
素晴らしい目覚めだ。
昨日は大小様々な虫達が

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Bless you forever......and ever:)
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Bet everything But no-life

誰もが怯え、しかし騒然とすることさえできないホールで笑っていたのは、銃口を二つ突き付けられていた男本人だけだった。
不自然なほどのチップの塔の前に座る彼は、ラフに着崩したスーツスタイルだ。白いジャケットから覗く黒いシャツには皴がない。ホールドアップした手首に光るアクセサリーも厭らしくない。整った身形の中で、今は卓に置かれている黒いパナマハットだけがくたびれていたのが印象的だった。

「ベック、少し

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出番を待っています。
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