逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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去りゆく冬の日々

――10月8日(木)

煙草の煙を通して、凪いだ海が見える。気持ちのいい晴れだ。遠くにはぽつりぽつりと雲が見える。空気は少し冷たい気もするが、陽射しは温かい。朽ちつつあるコンクリートの桟橋にいるのは俺と、釣り糸を垂らす爺さんだけだ。

「釣れますか?」
「釣れないね」
「そうですか」

そして、また煙草を一口。

「あのバイク、あんたのかい?」
「そうですよ」
「ツーリングか何かの途中?」
「いや

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サンキュー!
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