逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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妖刀狸

 刃野刀一郎は妖斬りの浪人である。その日も首尾良く荒れ寺の大入道を斬って捨て、幾ばくかの銭を得てから一日を終えようとしているところであった。

 その珍妙な来客が訪れたのは、彼が旅籠の布団に入り、うとうととし始めた頃合いである。

(妖気)

 漂う違和感に、刀一郎はカッと目を見開き、飛び起き様に傍の刀へ手を伸ばした。

「何奴!」

「あいや、お待ちを! 怪しいものではございませぬ」

 慌てて

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アリガトゴザイマス!
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