逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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「よろず屋サカズキ」営業中

──この酒、味がしない。

 それに気付いたのは、皿に零した酒を啜った時だった。

 半年に渡る週7バイトと夕飯モヤシ生活を経てようやく購入した幻の酒、<龍の声>。芳醇な香りと裏腹に飲み口は軽やかで、後から健やかな甘みと爽やかな酸味、そして暴力的な旨味が押し寄せる、龍をも唸らす銘酒……の、はずなのだが。

「……?」

 俺は手元の皿──酒浸しになったエイヒレの皿から、銘酒をもうひと啜り。

 …

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オレモー!
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