逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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砂塵の影

赤砂街は不穏な緊張感に包まれていた。大通りに見えるのは二つの人影のみ。かたや黒いローブ姿で、目元以外を隠した男。かたや砂煙舞い上がるこの地には一見似つかわしくない、燕尾服姿の壮年紳士である。

 ゴォン……鐘の重い音とともに、互いに一歩踏み出す。決闘の始まりだ。

 壮年紳士……バルアートはステッキとともに二歩めを踏み出し、耳を済ませる。普段は子供たちから『雷親父』も親しまれる彼も、いざこのような

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アリガトゴザイマス!
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