逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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「アーク・サマー」

伊庭がアークと初めて会った日も、彼女は白いワンピースだった。

 初めて訪れる別荘地への山道で、伊庭は電動バイクを停める。休憩がてら眼下の景色を多重現実のキャンバスに写し取ろうと、絵筆を走らせていた。

 その時だった。

 不意に茂みから、鮮やかな緋の色が飛び出してきた。

 アークだった。

 伊庭は茫然と彼女に見入った。美しいコントラストだった。濃い緑を背景に、緋色が燃え、白いワンピースが一

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さらに参るぞ
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黒い海に降る星

雲一つ無い満月の夜。
山の上に少年と少女。二人は眼下の港町を見下ろす……町明かりはない。
何時からこの世界は狂い始めたのだろう?

クジラやイルカの座礁数が異常増加してから?

2年前太平洋ヨット横断に挑んだ冒険家との通信途絶から?

リゾート地や漁場での原因不明海難事故が急増してから?

環太平洋地域で正体不明の肉塊が毎日の如く漂着しだした頃から?

南太平洋の無人島が一夜にして消滅してから?

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