逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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ワニガメを撃て

「シモヘイヘは老衰で死んだ」と三度唱えろ。俺の中に根差した経験がそう囁く。狙撃手が直接命を狙われることは少ない。同時に、狙撃手にはマインドリセットと安寧が必要であり、額を濡らす汗はどうもその集中を阻害するからだ。

 六月の東京には珍しく、屋上は乾いた風が吹いていた。俺はスコープを覗き、階下の様子を伺う。目標はマンションの陰に隠れ、茂みに身を潜めている。
 誰かの犠牲を出さず、早々に処理すべき問題

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