逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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無常命脈の誓い

「なぜって、仕事です。
まあ、そう言ってしまうと味気ないですかね。

貴方が聞きたいのも、そう言った意味ではないでしょう。
しかし、今は悠長に話している場合ではないのでは? 貴方、早く手当しないと死にますよ。ほら、もっと他にも考えることあるでしょう。

……仕方ない。では少しだけ。

まあ、発端が帝国の王位継承を巡る争いというのは貴方も察しがついてるでしょうが……うん?
ああ、帝都から飛ばされるだ

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その感性、練り上げられているなぁ
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夜を撫でる手

早朝。
ひんやりとした心地よい気配に、目を開ける。
薄っすらと青みがかかった静謐な空気の中、ぼんやりと周囲に目をやると、部屋が樹海になっていた。
ベッドを中心として半透明の植物達が所狭しと生態系を構築し、淡い緑色に発光する粒子が海中のクラゲのように漂っている。苔むした布団から身を起こしあくびをする俺の横を、光る小魚の群れが泳いでいった。
「あたりだな」
素晴らしい目覚めだ。
昨日は大小様々な虫達が

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当意即妙なるその姿勢に敬意を表し、ここに感謝を。
8

グッバイ、オールドマン

「親父ィ、死んでくれ」

 銃口が私のこめかみに向けられていた。
 5年ぶりに再会する息子の姿。
 酷く痩せこけて骨と皮ばかりの相貌。その中で縦に裂けた金色の瞳だけが爛々と燃えるようにギラつき異彩を放っている。

 蹴破られた書斎のドア越しに倒れている、頭部を撃ち抜かれた部下の死体を見るにどうやら伊達や酔狂ではないらしい。

「なっ──」

 連続する銃声。
 3発の弾丸が、私の頭蓋に叩き込まれた

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地獄の仏、闇に差す光明、暗夜の火、干天の慈雨、お前ッッッ!
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人よ、竜の手を引いて

 澄んだ水面を思わせる青い瞳。
 その奥に湛える深く透き通った静謐な気配を、今でも夢に見る。目覚めた後も、瞼の裏に焼き付いて忘れられない。
「E-03-03『ディアクリア』」
 無論、それは幻だ。海を統べ、陸を制し、空に君臨した彼ら。遥か昔に空の果てより来たり、人類に英知を与え導いた彼らはもういない。
 人は、竜に捨てられた。
 人竜乖離と呼ばれた星降る夜。全ての竜はふと一斉に夜空を見上げ、僅かに

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あなたの道に光あれ、幸福に満ち、苦難の先に救いあれ
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