逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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俺と元俺の国喰いのススメ



「ひったくりだね」
「……捕まえろって?」
「勿論」

俺の隣の小さな影は長い髪を波立たせ、軽く頷いた。
俺は、背を押す風めいた銀色を視界の端に見て、両手の暗器グローブをぎちりと嵌め直す。黒い革が指を締め付け、瞬間、血が巡る感触が強くなる。

「焼き肉屋の路地。突き当りの右、質屋の裏口への階段前」

つま先で地面を叩く。重く硬く、仕込んだ金属はいつも通り頼もしい。

「一発殴ったら、懐から銃

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