逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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『牧竜』

湾曲した杖を突きつけ羊たちの鼻先から進行方向へ差し向ける。先頭のリーダーを誘導すれば羊たちは驚くほどの一体感で曲がりくねる山道を下っていく。ラマの背に揺られながら牧場へ帰りつくと祖父が山鹿のシチューを用意して待ち構えていた。硬いパンと山鹿のシチューはあまり好きではなかったが遠い日の思い出が香辛料となり祖父が骨までしゃぶりながらワインを愉しむ姿を思い出すと笑みがこぼれてしまう。

 羊や妖精と戯れた

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お倒産スイッチ「や」「やーめたっ!」
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御筆一筆、仕りて候

墨染の空を背に、朱塗りの塔が乱れ立つ――その絶景奇景を眼にした者は、黒い鬼人と赤い人鬼が入り混じり暮らす、この玄魔京そのものをそこに見て取るだろう。
 屹立する塔の中、一際高くそびえ立つのは都の誇る九重塔。その瓦屋根に男が一人。総身を黒く染め上げた、その男は名を”亞乱”と言った。
 亞乱は顔をぐいと上げ、中天で不遜に燃える赤日を睨めつける。常より紅い。奴ばらめが蠢き出す兆しと見える。
 続けて視線

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