逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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記事

ゲート・ブレイカー 第一話「破門」

「ハチコ、戻ったぞ」

門関連犯罪対策特別捜査隊と書かれた扉を開き、小柄な女性が入ってくる。黒髪のポニーテール。勝ち気な瞳。

「ナナミ先輩、平気なんスか。さっきの現場で派手にフッ飛ばされてましたケド」

長身の男が立ち上がり、心配そうな視線と声を寄越しながらバタバタと駆け寄ってくる。不潔な訳ではないが、ボサボサとまとまりのない栗毛。眠そうに下がったタレ目。対照的な二人組である。

「アタシは軽い

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Not singularity

スーパー悪党になりたい。
 なぜ毎日図書室で本を積んで勉強するのか、なぜ毎日狂ったように身体を鍛えるのか。聞かれて私はいつもそう答える。当然、皆が笑う。
 笑わない者は一人だけ。
 私の宿敵だ。

 鋼鉄の塊が破壊の限りを尽くしていた。先週、米軍から強奪された多脚砲台。戦車と自走榴弾砲を同一機種で兼ねるという馬鹿げた代物が、その馬鹿げた火力で先端技術センターを更地にしていた。
 砲塔に腰かけていた

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聖拳"B"、魔神銃(マシンガン)"J"

南緯47度9分、西経126度43分の海中より現れた怪異によって地球人類の8割が死に絶えたのは、20XX年の暮れのことである。

 歪んだ角度の構造物を擁した島とともに暗い水底から浮上してきたその”神”は、姿を表した際に軽く身を震わせ――それだけで、環太平洋に住まう人々のことごとくを狂死せしめた。
 島に鎮座した”神”は悍ましい声で咆哮すると(このとき、更に多数の犠牲者が出た)その身より数多の眷属を

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感謝の極みです・・・!
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黒い来訪者

どんな調子のいい日でも、一日の終わりは疲れ切っている。上司に些細なミスで面白くない説教を食らい、自分と無関係の理由で頭を下げ続け、満員電車で痣までこしらえた日なら尚更だ。
 というわけで私は、食う・風呂・寝る以外何もできないしたくない状態だった。空腹の胃がきりきり音を立てる。口の中は苦い味で一杯だ。たぶんストッキングも伝線している。くそ。
 明日にでも世界が滅びてくれないかな、半ば本気で思いながら

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5

死の舞踏

【散弾銃にナーイフ、スラグ弾に手斧、しーあげーに戦化粧…】
「変な歌を作る暇で手を動かして」
 はーい、と不服そうな声が無線から返る。母校の情報工学部から引き抜いた才媛だが気分屋が玉に瑕だ。もっとも政府の汚れ仕事に対し真摯に取り組むべきかは微妙なところで、実際、彼女の前任者は自殺している。
「先輩、準備できたっす」小規模司令部と化したリビングに後輩が駆け込んでくる。「今回の鬼は美人さんっすねー」

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6

Into the Cocytus

スフィアの高すぎる天井に対し照明は小さく弱く、主な光源は魚脂を撒いて着けた焚火だった。一日の最後をより惨めにする光景だ。
「お疲れ様」腰を下ろした俺に、顔見知りの機人が肉汁の入ったカップを差し出した。ひどい一日だったよ、と言って受け取る。正確ではない。ドッグに侵入した大魚の鰭に3人叩き潰されただけで済んだからだ。
「何だ、メシの不味くなるツラが食ってやがるな」魚人が歩み寄ってきた。奴とはフロッグマ

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14

緑の補色は全部赤

赤毛の彼女は太い肉をがつがつと二口かじって、背後の砂浜へと捨てた。
「いい島だ」
肉はぼおんぼおん、とバウンドして元あった場所に落ちる。
「ぐぐ……」
足元を見た。血濡れの迷彩を着た男が彼女の脚を掴んでいた。胸元には禍々しいヤギのピンズも刺してある。
「……やっぱ嫌な島。そうじゃない? 何? 悪の組織? どうでも良いけどさ」
彼女は足を払って散弾銃を一丁抜き、腕ごと肩を吹き飛ばす。
呻き声は無くな

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宇宙の真理を解き明かした!
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