逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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the Flame Reflection

 2042年10月31日、六畳一間の安アパートの一室にて。

 片隅に設置されたWiFiルーターが熱波を発し、型落ちタブレットの画面が炎を噴き上げた。飛び出た火の塊が一つ空中に蟠ると、徐々に形を変えていく。それはやがて人の形をとり、目と口を開いた。

「こ、れ、は……」

「な、なんなんだこいつ……」

 部屋の主であるヤスシは腰を抜かしてへたり込んだ。熱い。そしてわけがわからない。

「正義、だ

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人生の悪役

 幸八は3歳の娘を殺してしまった。例の怒りの発作が起きたのだ。
 昼飯時のフードコートで、ハンバーガー越しに顔面をガラスコップに叩きつけたのち、破片で喉を抉ってやった。
 我に返ったときはもう遅い。
「ち、違うんだ。娘の自殺を止めようとしたんだよ、本当だ。なっ」
 弁明の後、幸八はぐったりした娘を放り捨ててその場から逃げ出した。

 信号を無視してクルマをぶっ飛ばし、新築の一軒家に幸八は帰宅した。

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Mr.ラッキー:オリジン

 「あんたは運がいい子だ。街を飛び回ってるマントの変人どもに負けないくらいにね。それがあんたのパワーさ」
 77歳のときに7階から落ちて死んだばあちゃんの言葉を真に受けた俺が間違いだった。
 俺はツイてると信じ続けて人生を転げ落ち、この前博打で全財産をスった。そして今は銀行強盗の真っ最中だ。
 「撃て!撃て!こいつだって当たれば死グゲッ」
 赤い影がひらりと舞ったかと思うとリーダーのゼフがレッドフ

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