逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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竜切り華五郎の余生と今後

通り一遍の出会いと別れがあり、二月ばかりの月日が過ぎた。特に変わったことはない。午前7時に起き、午後11時に眠る。竜を切ろうが都を守ろうが生活様式にずれはない。細やかな変化をあげるなら、職を辞したことだろうか。大したことではない。仕事の時間に別のものが代入されただけだ。重要なのは枠組みであり内実に大きな意味はない。たとえば今日の来客対応も、植木の世話と置換されたものでしかない。

「華五郎殿にとっ

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忘死郎冥府下り

冥府の空の色は、薄墨に血をぶちまけた色だった。
 赤子の声が響く風の中、俺は亡者を袈裟懸けに斬り伏せた。

「鎮守裏の池に気を付けろとあれほど…」

 痩せこけた亡者は現れた時と同じく、意味の無いことを呟きながら二つ別れになって地面に崩れ落ちた。

 俺は刀を収め、砂利石に覆われた冥府の道を再び歩き出す。

 ひねこびた木の上で、骨だけのカラスが断末魔の声で鳴いた。
 そして、乾いた笑い声と共に飛

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