逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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第五背板市

蟻の頭をラッパで撃ち抜いた瞬間、市内に三度目のサイレンが鳴り響いた。一度目は開始を、二度目は中間を、三度目は終了を表す。追い詰めた蟻は二匹。間に合ったのは片方だけだった。震えるもう片方を押しのけ、死骸を解体する。蟻の甲皮は固く刃物を通さないが、関節に刃を入れれば簡単にばらすことができる。必要なのは油臓のみ。擬翅を落とし胴を裂く。どれだけ丁寧に取り出しても、油臓を包む膜は薄く、微かな傷から染みだした

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