逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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虚空太郎

昔々ある村に仲の良い老夫婦が暮らしていた、ある朝その二人が妙に騒がしくしていたので村人達が様子を見に行くと、なんと子供が産まれたのだという。

 「ほぅら太郎や、村の者らもお前の事を祝っておるねえ」

 歓喜し高い高いの動きを繰り返す婆、その腕に抱くは虚空、翁が撫で回すのも虚空であった。遂に呆けたか、村人らは冷めた目であしらい、あるいは見向きもしなかった。そうしたある日、翁は村人にこう語る。

 

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