逆噴射小説大賞2019:エントリー作品

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Aの至福

『骨の貴婦人、飢えたる口の貴婦人、未だ飢え続ける弱者を飲みこむ者、間断無き空虚の肉の無い女王よ、我々は貴方に救済を懇願する』
――『ハリの啓示』より

@Cassie1997
樫田さん、お久しぶりです。お元気ですか?
お時間ありましたら、ちょっとお話したいんですが、どうでしょう?

@AIbouty
……信じられない。
冗談はやめてください。相川はひと月以上前に亡くなりました。
貴方は彼女のアカウ

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二楽荘の慟哭

1932年10月、東洋の美が炎に消えた。

 中華の美が燃える。微細な彫刻の施された竜が炎にとろけた。凍てつく荒野の石柱から採集された拓本が灰となる。
 アラビアの美が燃える。部屋の噴水は枯れ果て、炎を押し留めることはできない。砂漠の中の無名の都市から発掘された紅玉を火が彩る。
 エジプトの美が燃える。大ピラミッドの壁画が白昼の砂漠さながらの陽炎の向こうに佇んでいる。ピラミッドの地下の五本の指の像

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邪神戦争都市

海上都市、ニューダニッチ。2040年初頭、イギリス洋上に姿を現したアクアポリス。完全自給自足を成し遂げた理想都市として、早くも市民希望者が続出。数年が経過した今でも、審査に並ぶ列が絶えない程の人気都市である。

 市民には様々な義務が生じるが、その中の一つが深夜外出の禁止。特にこの決まりは厳格で、深夜帯は一部の区域が『封鎖区画』として通行不能となり、一般区画とは物理的な『壁』によって分断される。最

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ムッハッハ!オセワサマデス!
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