逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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ノート

創世巨人のゼナン

「おはよう、被検体49号。言葉はわかるよね」

突如現れた異界の科学者。彼のもたらしたクローン技術は世界を変えた。最強戦士のクローン、伝説的剣士のクローン、選ばれし勇者のクローン…その力は邪を圧倒し、人の世は平和になった。

…はずだった。

「僕の名はマガタ。人間に滅ぼされた魔王のクローンだ。

そして彼は偉大なる夜の一族、その始祖のクローン。あっちのは大陸を腐海に沈めた魔導士のクローンで、僕ら

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ありがとう!
5

花の婚礼

それが何年前の出来事だったか、今となっては定かではない。

僕と友人は長い休暇を利用し、遥か異国の街へと観光に来ていた。

華麗な建造物の合間を縫うように、強い日差しを照り返す石畳の坂道が、上へ下へと曲がりくねりながら、どこまでも続いている。

2頭の驢馬が、大きな果物籠のような荷台を背に乗せ、急な坂道をゆっくりと進む。
それぞれの荷台で揺られているのは、僕と友人、そして観光客一人ずつについている

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うなぎ
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星切り迷い星

昔々、太陽と月と星とが同じ空にいた頃の話です。

ある時、父の太陽と子供の星々が仲違いをしてしまいました。
母の月は、仲直りの為に太陽と星々とを説得しました。
しかしそれでも星々は北極星に連れられて出ていきました。
そしてこの世は昼と夜と二つに分かれたのです。

月は皆を愛しています。
そう、月は今でも皆を仲直りさせるため、
昼と夜とを行き交っているのです。

そして明けの明星と宵の明星だけは、

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カリフォルニア・ロールド・ハロウィン

黒檀木目調の静かな執務室にたなびく髑髏形の煙がケタケタと笑っている。
「なんて言ったかな、サヨナ・・・ああ、成敗か」
デスクに座り、糊の付いたスーツに身を包む執務官とは対照的である。
黒のソファーに半ば眠るように掛け、口元の葉巻から煙をたなびかせる男はまるで時代錯誤な風体であった。鼻先の煙は渦巻き逆巻き散り消えず。魔法使いは革製の帽子にどこまでがマントか区別がつかないローブを纏っていた。
「良くあ

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邦題:ニンゲンスレイヤー・聖都炎上(原題:“ユースレス”・ザ・ゴブリン)

巣穴が。炎上している。

◆◆◆

私が生まれた時、兄弟達は笑い、燥ぎ、顔を顰めていた。

私は兄弟達から見て異形だった。

私の腕は兄弟達の様に器用に道具を使う事も、剣を持つ事も出来なかった。しかも兄弟より腕が二本多く、その二本はこの巣穴では何の役にも立たなかった。

だから私は“役立たず”と名付けられ、鎖で繋がれるのも、食事が兄弟の残飯で有ることも当然だと思った。

ただ私にも兄弟より長けてい

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ハロウィンナイト・コー!ホー!

ハロウィンは祭では無い。商戦だ。セールス・コンピューターと呼ばれる俺の仕事はこの戦いを制することである。

「…という訳で暫く忙しい」

「ふざけんな!」

木杭が撃ち込まれるが、難なく躱す。

「分かってるのか!?私たちはモンスターなんだぞ!?」

「だから?」

「絶対ハロウィンの人気者になれるだろ!」

オオカミ女の妻 シーラはイベント好きだ。今回も随分はしゃいでるようだ。

「シーラ、この

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ありがとうございます。
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「ナイトバード」

同級生に名前を呼ばれた。現実で、ではない。

未だ昼前、私は世界史の授業の最中にあり、教室に響く声は教師の物だけだ。その同級生も別のクラスで同じ状況にあるはずだった。

しかしそれは幻でもない。声が聞こえた瞬間から私の視野は、左右の目で別の絵を見るように、現実の教室風景と同時に全く違う景色を捉えていた。

胎金界。魔術の世界、私の知る唯一の平行世界。同級生の平衡存在は石壁の倉庫で蹲り、無闇矢鱈にあ

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🐘🐘.🐘…🐘..🐘.…..🐘.🐘…🐘🐘…
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エイリク大陸物語①「獅子王と甲冑の騎士」

0.王都にて

 夕刻、黒馬に乗った騎士がただ一人出陣した。黒光りする甲冑は禍々しく、その下の素顔を見たものは無い。もっとも<<英雄殺し>>が王城から出ることは少ない。英雄マルスがあのように討たれてからは特に。

 また一人希望の担い手となっただろう少年が死ぬ。<<英雄殺し>> の行軍を目にした者は皆、顔も知らぬその子の為に祈った。

 しかし、行軍が目的地に近づいてくると人々の反応も変わった。今

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ありがとうございます。
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餓老妖精奇譚

妖精は今回の試練に興味津々だった。これまで来た者といえば、尊大な貴族や英雄気取りの騎士ばかり。
今回来たのは老人、しかも年齢にそぐわぬ引き締まった体。試練を失敗すればそれまでだが、きっとやりおおせるという予感があった。

これは暇を持て余した湖の妖精の気まぐれであった。
適当にでっち上げた試練を成し遂げれば、自分の愛以外であれば、金銀財宝でも死者蘇生でも願いを叶えるといって送り出す。忠告を与えたの

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テァン、無双を舞う

「生命の本質は振動だ。わかるな」
「はい、先生」

テァンは静かな息を吐き、自らの内奥へと心を移した。

ドク、ドク、ドク…

心臓の鼓動。体の脈動。己を構成する微細な分子の律動。風が吹きわたり、テァンの髪を揺らす。感じる。駆ける動物達。鳥のさえずり。命のやり取り。生命の鼓動。大地。すべてが振動している…。

テァンは目を見開く。

目の前には斧を振りかざした男。テァンは流れる動きで男に触れる。

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ありがとう!
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