逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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温泉街の怪人

痛みで熱を帯びた呼気は、足湯から立ち上る湯気よりも白かった。

 踏み抜く雪に腹から垂れた血が混ざる。目がかすむのは寒さだけが理由ではない。「鳥嶋ァー!」遠くで組の連中が俺の名を叫んでいる。いや、耳が馬鹿になって小さく聞こえているだけか。「鳥嶋ァー!」想像して腹の底が冷えた。もつれる足を必死で動かす。路面電車の駅。倒れる。電灯が時計を照らしている。午前二時。火を落とした温泉街は眠りについた巨大な昆

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極楽転送機

「いいか。君には二つ、選択肢がある」

 殺風景な部屋。
 眼の前でパイプ椅子に縛られ、涙と小便を垂らし、ガタガタ震えている若い男に、俺はいつものように無表情に告げる。
「一つはここで、鉛玉を眉間に食らって素直にくたばること。もうひとつは……」
 親指で後ろを示す。こいつの仲間数人が、棺めいた機械装置に寝かされ、管まみれになっていく様を。
「あれだ。半年ほどだが、死ぬまで幸福を味わえる。夢の中でな

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福助があなたを守護し、防御力が上昇します。
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アニー・ドギーバッグ

トイレだ。向かって右が男性用、左が女性用。ハイヒールをカツンと鳴らし、迷わず右へ。
「おい姉ちゃん、こっちは違」POW!小便中の酔っぱらいを黙らせ、一番奥の個室の前へ。
POWPOWPOWPOWPOW!「ギャッ!?」ドアも開けず蜂の巣。クソしながら死んでろ。五人目。



宵闇。中華街の袋小路。追い詰めた。
「見つけたよ、ゲドン。ゴミにまみれて死ね」
「誤解だよ、アニー。君の妹を」
POW!銃弾

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福助があなたを守護し、防御力が上昇します。
8

世界再編の遊戯

クロガネとカゲロウ。
二人の闘いは終盤を迎えようとしていた。カードは残り8枚、4組を残すのみ。数を合わせ最後にカードをめくった者がこのゲームの勝者となる。

クロガネはゆっくりとカードをめくる。

1枚目、星の7。
2枚目、若葉の8。

…ミスだ。

「おやおや」

カゲロウは笑みを浮かべて言った。

「これはいよいよ後がない」

二人の周囲には白い光が渦巻く。これは世界再編の光。勝者が望む世界が

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やったぜ!
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