逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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歯抜けの犬は肉を噛めない

〈禿げ猫〉について覚えていること。全身無毛。爪に毒。妖猫のような瞳。女。本名不詳。

 三十分。絞め殺すのにそれだけの時間を費やした。可愛らしい、小柄な老婆だった。爪に垢が詰まっている。老眼鏡の奥で白内障の瞳が濁っている。ずり落ちた鬘の下には綿毛のような白髪。表の名札には、当然〈禿げ猫〉ではなく桜井葉子という名が書かれていた。

 復讐の必要はない。五十年前、そう告げて死んだ依頼人の名は思い出せな

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