逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集
陸奥ミステリアスツアー ~奥の細道異聞~
「大変大変!乗り遅れちゃう!」
上野駅で東北新幹線のホームに向かう途中、メイドさんが僕を追い越していった。
ものすごく可愛いけど声は何故かイケメン。プラチナのショートヘアからヘッドドレスが落ちる。
「落としましたよー!」
彼女?を追って新幹線乗り場入り口の改札を通過し、エスカレーターに足を踏み入れたその時「あ・・・!」
僕は足を滑らせて転げ落ちた。地下へ続く長い長いエスカレーターを。
「うわぁああ
おまじないは皮を剥いて
最近うちの学校ではみかんの皮を使ったおまじないが流行っている。
まず、みかんを皮がヒトデ型になるように剥いて、内側にそれぞれの願いごとを書き込む。
そしてその皮の先端をおまじないに参加する人がそれぞれ持ち、願いを意識しながら引っ張って裂き、手元に残った皮の断片を乾燥させお守りにするのだ。
そうすると願いを叶える手助けをしてくれるのだという。
剥かれておまじないに使われたのは、みかんだけでなく
魂の蚕食者 Ab-Hastrum
「噫! アブ=ハストラム!」
彼はそう叫び、息を引き取った。痛ましくやつれ果てた姿で。彼はスポーツマンだった一方で読書好きで、図書館に籠ってる様な私ともよく話が合った。いい奴だった。
最期の彼の言葉、アブ=ハストラム。それはアリエル・モントロール作のファンタジー小説“Wrtum”シリーズに登場する邪神の名前だ。
物語の最大の敵であるアブ=ハストラムは、邪悪な者共を率いて異世界ウルトゥム
ピクルス!〜僕の相棒〜
「ピクルス!あったよ!」
僕はテーブルの大瓶に札束を見せる。
ピクルス、と呼ばれた瓶にはホルマリン漬けの生首が入っていた。
「そいつぁ重畳!でも汚れてよく見えねぇナ。」
僕はお母さん"だった"物からハンカチを取り、瓶を拭く。
「これでどう?」
「気がきくねェ!相棒の手際にはお天道様もひっくり返っちまうゼ。」
お父さん”だった”物も関節に合わせてナイフを入れ、燃えるゴミの袋に投げ入れる
タンス預金をしていると聞いたので全額下ろしに来た
罪と罰だっけ?金貸しババアをぶち殺して大儲けする話って。まあ、俺達もそんな感動的な話にあやかりたくて、タンスにしこたま貯めこんでるって婆さんから、恵まれない子供たち(俺)のために寄付してもらおうと、家まで来たわけなんだわ。
「すまねえ、アニキ……このババアがいけないんだよ、小さい頃オレをいじめたバアちゃんそっくりなんだ」
「オメエは悪くねえよヤス。うん。とりあえず、タンスだかぬか床だかを探し
フライング・ベイビー・ブルース
空がどこまでも青い日だった。
その日生まれた赤ん坊の背には、みな白い羽が生えていた。
愛らしく、ちいさく、いとけない羽だった。
濡れた羽が乾く頃、赤ん坊たちは一斉に飛び立った。
生まれたばかりの赤ん坊たちは、まだ笑うことも知らず、おわあおわあと泣きながら青空へと昇って行った。
恐れ、嘆き、喚き散らす大人を顧みることなく。
あの事件からちょうど40年が経つ。
つまり俺もちょうど4
恐怖!殺人ハムスター!
「チカちゃあああああん!」
ペットショップで金魚を眺めていた僕が金切り声に驚き振り返ると、上半身がクマのように肥大したゴールデンハムスターが半狂乱の女を叩き潰しているところだった。人の形に膨らんだほお袋からは、はみでた子供の足がぶらんぶらん。
蜘蛛の子を散らすように客が逃げ出す。当然僕も逃げる。
割れる水槽、飛び散る金魚。
ペシュッと妙な音と共に頬を何かが掠める。何だ?タネだ!ヒマワリのタネ!