逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

1858

ギターを抱いた渡り猫

コバーンの手下、あのニボシ臭いハチワレどもの頭をあニャあきチーズに変えてやったのは、ここニャン年かで二番目に気分のいい出来事だったが、(一番目がニャニかって?あんたみたいないい猫とこうしてお話しできてることかもニャ)そのおかげで、町から町へ、渡り鳥ならぬ渡り猫、ってわけさ。まあ、俺には幸い相棒のこいつがあるからニャ、こいつをかきニャらしながら、甘い歌の一つでも口ずさめば、とりあえず食うものと宿に困

もっとみる
感謝の極みです・・・!
4

荒野の探偵

その男は寂れたバーの扉を押し開けて現れた。
「水をくれないか」
 男はイギリスなまりで言う。それが癇に障ったのだろう。今、イギリス人は荒くれガンマンと向かいあっている。決闘だ。
 両者の間に乾いた風が吹き抜ける。バーの店主が思わず唾を飲む。そして緊張が張り詰め、張り詰め……弾けた瞬間、両者はほぼ当時に銃を抜き、銃声が三度鳴り響く。
 ガンマンは目を見開き、地面に銃が二丁落ちる。
「てめえ、なんで」

もっとみる

Save The Western

アリゾナ州トゥームストーン。
陽が西に傾き始めてからもう随分と経つ。
タンブルウィードを転がす風が酒場のスイングドアを揺らしてゆく。

大通りの左右には大勢の見物人。
まぁここではよくある決闘ってやつを観に来てる。
当事者でなきゃ俺だって観に行く。

背中合わせに立ち、10歩歩いたら振り返って敵を殺る。
実にシンプルだ。牧場のときはそうもいかなかったけどな。

一歩。

三歩。
この辺で振り返って

もっとみる
お前を落花生の国に連れていく
8

スペース・シェリフ

現在もなお拡大を続ける巨大宇宙ステーション《フロンティア-9》
その職人街の一画に俺が常宿とする酒場《黄金の蜂蜜酒亭》はある。ここの名物はなんといっても高純度飲料用アルコール溶液に複数種のシナモ・スパイスを混ぜ、蜂蜜を加えることでアルコール度数を絶妙に調整した蜂蜜酒だ。ストレートでもいけるし、カクテルでも旨い。何よりこの店の香辛料がきいた肉料理とよく合う。

ここの親父は退役した元降下歩兵で、俺の

もっとみる

Six Action Army - Man 悪魔のガンマン

タンブルウィードの転がる小さな宿場町を、危険なアウトローの集団が支配していた。彼らを率いるリーダーが、町の広場で絞首刑に処された保安官を、銃の的にして辱めている。サルーンからはアウトローどもが凌辱する町娘たちの悲鳴が漏れ出ていた。

「31、32……34人か。どうだ」

宿場町の見張り塔の上で、俺は右手でスマートグラスを外しながら左手の腕時計に話しかける。

「"再装填"後の戦闘力であれば成功率は

もっとみる

ハロウ・イン・アキバ

ぎい。サルーンのドアを開けると、客の何人かが俺を睨んだ。凶悪な面構えがずらり。
「らっしゃい」
メイド服の店主の嗄れ声。珈琲と砂糖の香りが充満する中、俺は悠然と歩を進め、カウンター席に座る。
「なんにするね」
「日替わりパスタと、キャラメルカプチーノで」

店主はごつく毛深い指で注文を書き取り、無言で了解する。
奥の方では、棒付きキャンディをしゃぶってカードゲームをしてる連中。ミント風味の清涼菓子

もっとみる
福助があなたを守護し、防御力が上昇します。
4

荒野のタグ・スリンガー

「「「ホーッ!ホーッ!」」」

 荒縄で縛られたスマホを振り回し、web荒野に棲む電子原人たちが襲って来る! 上空に飛び交うのはツィツィ鳥だ。目玉や内臓を突つき出す腐食性の猛禽。俺の死体を食い荒らそうと、気が早いことにやってきたわけだ。だが、やるもんか。

 疾走する電子馬の上で、俺は左手で手綱をとり、右掌を上に向け、集中する。エナジーが集い、掌大の「#(ハッシュタグ)」となる。俺の武器だ。

もっとみる
ブッダがあなたに加護を与えるでしょう。
9

Hanged-Men ハンドマン

銃声がして、振り向くとカウンターの男が死んでいた。

 「ウイスキーを一杯。何も混ぜないでいい」

 死んだ男は、自分の脳漿が混ざったグラスを、痙攣する手で握りしめている。煙を上げるスミス&ウエッスンを持った男が、それを死体から奪い鼻元へ運んだ。

 「バーボンを脳漿で割ったカクテル。"ペヨーテ"の好物として有名だな」

 私は男に注文通りの一杯を差し出す。だが男は受け取らない。

 「"ハンドマ

もっとみる

赤い悪魔を撃て!

姉のケリーが赤革の男に撃ち殺されてから一週間が過ぎた。
ロイ・ペンフィールドはシドンの町の酒場でウイスキーを傾け、ひたすらに時を待っていた。
その酒場が赤革の男につながる、最後の手掛かりだった。
保安官バッジを捨てたことに悔いはなかった。ケリーの仇を取れるなら安いものだ。

ケリーは立派な人物だった。ロイが3歳のころに死んだ母の代わりに父と二人でロイを育て上げ、ロイが町に住み始めてからも、辛い牧場

もっとみる