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逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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「逆噴射小説大賞」とは、ダイハードテイルズ出版局が主催し、社会派コラムニストの逆噴射聡一郎先生が審査員に加わる、コンテンポラリーで由緒あるパルプ小説大賞です。今回の本文文字制限は…
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#相撲

メキシカン・ラプソディ

メキシカン・ラプソディ

10月31日の夜。僕は先刻投稿した『プログレッシヴ相撲』の記事共有ツイートを送信すると、大きく伸びをした。
『パルプ小説冒頭400字』。楽しい企画だったが、応募は今ので最後だ。今日はもう休もう……。

KRAAASH!

その時突如、アパートの扉が破砕!一体何が?僕は戸口の向こうを見遣る。

そこにいたのは力士だった。

僕はそいつの奇妙な出で立ちと、投稿作品一覧が表示されているPC画面を交互に見

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相撲

俺は土俵に手をつくと、二度、三度と背を伸ばした。

対するは横綱・朝凪。会場は一杯。俺の名を呼ぶ声が多い。

両者1敗で迎えた千秋楽である。俺は相撲人生で初めてチラつく優勝の二文字に舞い上がったが、国技館に入り、支度し、花道を通り、朝凪の前に来たことで一気に現実に引き戻された。

横綱・朝凪の体は脂肪の下の筋肉がはっきりと分かるほど引き締められ、激しい稽古を今場所も積んできたことをはっきりと語る。

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相撲~踊る横綱~

悪辣なる娑婆手為親方の罠により、我らが横綱・阿羅は大事な千秋楽の土俵へ向かう途中に悪漢たちに襲われる!娑婆手為親方は自らの部屋の大関・正無手無を優勝させ横綱にし、阿羅を追放して角界を私物化せんとしているのだ!

「どかんと、どうなっても知らんぞ!」

阿羅は優しい心とは裏腹に不正や悪事に対しては人一倍敏感で潔癖ですらある。その怒りが、五体に漲っている!阿羅は悪漢共にぶちかました!

(阿羅関…何故

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ブラック・ファラオ VS リトル・ブラック・サンボ

ブラック・ファラオ VS リトル・ブラック・サンボ

横倒しになった軽トラが水平に飛ぶ!

ナイスサンドイッチ!

暴徒が壁と軽トラに挟まれ圧搾死!

先程迄の渋谷ピープルの浮かれ具合が水を打った様に静まり返る。

視線の先には不夜城の灯りの下でも尚黒き闇…黒い無貌のスフィンクスの化粧廻しの黒人力士!

相撲通の絶叫が響く!

「“黒きファラオ”…!九龍坊(くろんぼ)だ!」

■■■
弥助は信長気に入りの力士である。

土俵を這う様な低姿勢からのかち

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ロード・オブ・ザ・リング-土俵の王-

 大相撲アサクサ場所、この日の最終取組は夢乃島対十束。両国ナショナルアリーナが最高潮に達する。

 その名の通り、ゴミで埋め立てられた夢の島出身の力士が夢乃島だ。
 洗脳で強化された心、インストールで習得した技、そして義肢や人工筋肉の体を持つ力士が増えた昨今、サイボーグ力士に文句を言う好角家はいない。ましてやゴミから組み立てられた夢乃島は、人々の夢の結晶だった。

 夢乃島が後方に跳ねる。バーニア

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相撲・オブ・ザ・デッド

世界は崩壊した。

正確に言えば、まだ存続はしているが以前の世界は崩壊したと言えるほどに変化した。悪鬼羅刹が巷に溢れ、魔力法力が幅を利かせる。法はある。それを決めるのは魔力に長じた魔王か、法力を使いこなす法皇かだ。

「2つで十分ですよ!勘弁して下さいよ!」

俺は邪悪な深海生物の天ぷらを4つ要求したうどんを食べる。味はいいが見てくれは宇宙生物のそれだ。きっと俺に魔力か法力が沢山あれば見てくれの良

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ラストスタンド・ヨコヅナ

 足元から広がる土の感触、あの場所程ではないにしろ、馴染む。幾年ぶりの土だ。かつての横綱、黄龍はこの場所を懐かしむ。だがここはテスト会場。彼に相応しい場所ではない。だが彼にはもう一度、最初からやり直す意味があったのだ。

 あらゆる産業、スポーツがロボットになり変わられた現代。無論、相撲も例外では無かった。様々なギミックを内包した相撲は武道ではなく娯楽として昇華されていくこととなる。

 神事とし

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爆裂力士!!スモウギア

爆裂力士!!スモウギア

CRAAAASH!!!
田島のDアイランドは山崎のタイムTウィンドの容赦のないハリケーンハリテを喰らいダウン!

「弱すぎるぜテメェ。お前の代わりに、オレがこのギアをかわいがってやる」

ガキ大将山崎はビール瓶を大きく振り上げる!

「やめて、壊さないで!」

そんな願いも空しく、ビール瓶が振り下ろされようとしたその時である!

「待ちな!」

「なんだてめぇ!」

恐るべき蛮行を前に毅然と立つ、

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ヨコヅナ・フォートレス (邦題:横綱要塞を突破せよ)

ヨコヅナ・フォートレス (邦題:横綱要塞を突破せよ)

心技体、そして霊。
人は知る由もないが、力士の身体にはニューロンの速度で動き回る小さな精霊「角霊」達が宿っている。猛き力士には角霊が集い、角霊に愛されし力士は力を得て横綱となる。この循環により、我が国の五穀豊穣は保たれて来たのだ。

だがある時、大関「鬼乃若」に宿る角霊の1人が取組中に発狂。多数の角霊を殺傷せしめ、力士管制は崩壊。力を失った鬼乃若は受身を誤り長い休場を余儀なくされた。さらにその角

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孤独のハッケヨイ

孤独のハッケヨイ

最後のオオゼキ、希望乃海が死んだ。
享年六十八歳。
史上最高齢の現役リキシとして最後まで土俵にあがり、土俵で死んだ。
取り組み相手の御結山が一人で看取った。行司はいない。

かつては六百人を超えるリキシによってピラミッドが形成されていたオオズモウ。しかし残った現役リキシはただ一人… コムスビの御結山だけとなった。

「おれ一人じゃスモウとれねえよ… オオゼキ…」
御結山は独り、ハラール・チャンコ屋

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邪神相撲

(俺が幼い頃、父は相撲の歴史の闇に触れ意味のわからない言葉の羅列の遺書らしきものを残して自殺した。俺が覚えているのは、天井からぶら下がっている父の死に顔が何かから開放されたような晴れやかな顔に見えたことだ。)

「西ぃ~、九頭龍ぅ~~九頭龍ぅ~~。」

俺の目の前にいるのは、大関、九頭龍。巨体と人間離れした怪力と異様に離れた目、潰れた鼻、ナマズかカエルのようなペッタリとした口が特徴だ。

出身は四

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全時代的連続横綱殺人事件

全時代的連続横綱殺人事件

 四股踏みによるテラフォーミング。外宇宙力士の撃退。核汚染の浄化。偉大なる横綱、鳳乃鷲は同時に邪悪な横綱としての側面を持っていた。

 八百長――力士の星操作は勝敗の結果だけではなく、自然災害、宇宙航行の安全、その他全てに関わりがあり、反抗的な力士は鳳乃鷲によってヤマへ送られた。

「発勁用意」

「発勁用意」

 表向き、鳳乃鷲は偉大なる力士だ。野試合を断ることなどない。そして全盛期は過ぎたとは

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エンジン・オブ・エドリキシミュータント

浦賀沖に現れた、黒塗りの蒸気絡繰巨人は幕府に開国を迫った、集まる野次馬や役人に戦慄が走る!

超蒸気技術の四巨人は野次馬を薙ぎ払った!威嚇的デモストレーションは大成功だ!これをみて、夜の寝付きが悪くなること誰が責められることか?

ペルリ提督はショウグンに、不平等な条約を叩きつけに来たのだ。蒸気巨人から降り立った彼は荘厳な絡繰鎧から蒸気を噴き出し、巨人達のサーチライトで照らされる!まさに、神の降臨

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機動強襲装甲力士マテバ

機動強襲装甲力士マテバ

その日もマテバは飲んだくれていた。
適当な店で酒を飲む。相撲中継が始まれば変えさせる。
それがマテバの毎日だった。
その日までは。
「よぉ、探したぜ」
「エッ!?オヤカタ大佐!?」

夜の街を二人は歩く。
「まったく。元装甲化力士兵(アーマードリキシ)ともあろうもんが情けねえ」
「元装甲化力士兵だからですよ。敗戦で部隊は解散。お決まりの戦争アレルギーで戦場帰りは大相撲にも戻れねえ。安い恩給で酒

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