逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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眠れる彼女の夢の中

教室の窓から空を眺め、空想に耽る彼女の横顔に、幾度も見惚れてきた。

彼女は、僕の恋人でもなく、幼馴染でもない。ただのクラスメートだ。机の位置が二つ挟んで後ろにあるだけ。会話を交わすことも、ないではない。クラスメートなんだから。でも、彼女の幼馴染で恋人は、別にちゃんといる。
いや、いた。この間、いなくなったのだ。

「神隠し、っつうのかなあ……ふっと蒸発したんだってサ」
「はァ。気体になって消え去

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ブッダがあなたに加護を与えるでしょう。
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極楽転送機

「いいか。君には二つ、選択肢がある」

 殺風景な部屋。
 眼の前でパイプ椅子に縛られ、涙と小便を垂らし、ガタガタ震えている若い男に、俺はいつものように無表情に告げる。
「一つはここで、鉛玉を眉間に食らって素直にくたばること。もうひとつは……」
 親指で後ろを示す。こいつの仲間数人が、棺めいた機械装置に寝かされ、管まみれになっていく様を。
「あれだ。半年ほどだが、死ぬまで幸福を味わえる。夢の中でな

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あなたの健康値がアップしました。
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薔薇の華美羅を添えて

目を覚ます少しだけ前、あなたはこれが夢の中であることに気づいているだろう。あなたは夢の中に現実のあなたを招き入れ、夢は少しづつ崩壊へと向かっていく。

 あなたの感じているそれが枕の感触と似ていることに気付き始めるころ、窓の外の鳩の鳴き声や、風になびく木々の葉のこすれ合う音が何者かに姿を変え、夢の中のあなたを追い立てる。逃げ場をなくし、切羽詰まったあなたは咄嗟に目を覚まして、終り行く世界からの離脱

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