逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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勝海舟幕末航海記 ~文久の書 第2章・流浪~

「こんなものでしょう」と彼は飄々と言ったんだ。鮮烈に覚えている。その時の彼の顔、ギラリと光る白刃、千切れ飛ぶ浪士の四肢までも。

竜馬君をあんなに疑ったのは後にも先にもあれくらいだ。気前で腕の立つ用心棒が聞いて呆れる。確かに私は当時既に浪士連中から目の敵にされていたし、実際襲われたわけだけど、それでも、その…分かるだろ?お近づきになりたくないという人種だよ、彼は。え、政治家にあるまじき…?いいだろ

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エールッフ年代記

「エール、エローヒーム、エローホー……」

聖都エルフリムに、神を讃える声がこだまする。今朝はひときわ音高く。

「主に選ばれしエールッフの民よ、いと高きところにいます方に感謝せよ」

皇帝の司式のもと、戦勝を祝う荘厳な儀式が行われる。
臣民は涙を流して喜び、ひれ伏す。都は活気を取り戻す。

使徒到来紀元1022年。
三大陸の覇者、エールッフ帝国皇帝ミカエルフ2世は、冬をようやく平穏に迎えた。先年

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大天狗国(テングリア)

チンギス・カンは天狗だった。この事実を知った時、私は目が眩み、膝が震えるのを感じた。だが、考えてみればわかる。源義経は天狗に武芸を習った。彼が大陸に渡り、チンギス・カンとなった。この有名な二つの伝説から、自ずと結論は導かれる。チンギス・カンは天狗だったのだと。

義経は天狗に成っていたのだ。星々の海から降臨した大魔王に。その超常的な力は海に嵐を起こし、アイアンゴーレムを操り、富士山を噴火させたとい

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スキ、リスペクト、スキ!
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不死の日のエドム

「日の神にかけて。今日は『誰も死なぬ日』でさ、ヨブの旦那」
薄汚い牧童は、そう言って男に微笑み、右手を挙げた。
「試してみる。首を出せ」

「いや。痛いは痛いんでね。罪になりやすぜ」
「構わぬ。贖い銀は先払いだ。俺の神に誓う。そこの連中、証し人となれ」
ヨブは、銀の入った革袋を呉れてやる。

牧童と証し人らは銀を確かめ、肯いて受け取る。
「じゃ、どうぞ」
剣が一閃し、牧童の首を断つ。ごろりと落ち、

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大吉です。すべてがうまくいくでしょう。
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邪馬台国世界大戦

邪馬台国を巡って全面戦争が勃発した。福岡は佐賀・大分と手を結び、熊本へ戦車部隊による電撃戦を開始。武力で邪馬台国福岡説を承認させんとした。県知事は宮崎・長崎・鹿児島に救援を呼びかけ、三県も軍を派遣。佐賀と長崎、大分と宮崎が睨み合い、熊本・鹿児島連合軍は福岡軍と膠着状態となった。

事態を重く見た奈良県は周辺諸府県に軍事同盟を呼びかけ、近畿・中四国連合軍による九州征伐が行われることになった。無論、連

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スキ、リスペクト、スキ!
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胡漢英雄記

「ルィイイウィ……イイイイ……ウィイイィ……」

洛陽の上東門。埃っぽい雑鬧を横目に、少年が門柱に倚りかかり、嘯いている。
年の頃は十代半ば。深目隆鼻の胡(えびす)である。まわりの大人も、みな胡。老いた門衛も懐かしそうに目を細めている。

「これ、バイよ。騒ぐでない」
叱られ、少年は喉歌をやめる。生意気そうに、ふん、と鼻を鳴らす。
「おじさん、いつもより人通りが激しいのは、なんでだい……」
「帝が

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