逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集
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本
死が二人を分かつまで
痛む肺。振り返れば仮面の巨体。徴魂吏(グリムリーパー)。白鎌が身体を通り抜ける熱さと魂を剥がされる寒さ。
それがユキが最後に見て感じた物だった。
魂魄本位制度に移行してから半世紀。価値が決して摩耗しない魂の需要は上がり続けている。
市は納税義務を14歳にまで押し下げ情け容赦ない課税により魂を狩る。
僕は雨に打たれながらユキだった物の前で立ち尽くす。寒さは感じない。安物の義体にそんな