逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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雛崎さんちの幽霊家族

包丁、ハサミ、カッターナイフ、爪切り、髭剃り、カミソリ…ありとあらゆる刃物が空中で静止し、コハクに切っ先を向けている。

 ポルターガイスト。その中心にいるのは10歳くらいの少女で、憤怒の形相でコハクを睨みつけている。コハクは「またはじまった」とばかりに溜息をついた。それが少女の逆鱗に触れた。

「ばかぁーッ!」

 少女が叫ぶと、浮遊していた刃物が一斉にコハクに向かって飛んでくる。

「オンクリ

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陸奥ミステリアスツアー ~奥の細道異聞~

「大変大変!乗り遅れちゃう!」
上野駅で東北新幹線のホームに向かう途中、メイドさんが僕を追い越していった。
ものすごく可愛いけど声は何故かイケメン。プラチナのショートヘアからヘッドドレスが落ちる。
「落としましたよー!」
彼女?を追って新幹線乗り場入り口の改札を通過し、エスカレーターに足を踏み入れたその時「あ・・・!」
僕は足を滑らせて転げ落ちた。地下へ続く長い長いエスカレーターを。
「うわぁああ

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地表を覆う無限の寿司と、彼女と結婚する方法

「娘は、『強く思ったことが必ず実現する』時期がある。なんだろーが確実に実現する。5年に1回、5日間。今日はその1日目だ」
彼女の父は、俺の顔を睨みながら言った。
いやいや、パパさん盛りすぎっしょ。
「君の不真面目な態度は気にくわないが、私は公平さを重んじる。君に……」
「あ〜お寿司食べたいな〜」
隣の部屋の彼女の呑気な声が、終わるか終わらないかのタイミングで、宅配の寿司が届く。俺は1時間前にそれ

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できそこないのエピタフ

「はい、皆さんお早うございまゴふゥ――ッ!?」

力自慢の山田が金属バットで担任の頭を叩き潰し、2年4組の朝はいつも通り始まった。

日直の前田が無言で席を立ち、感情の死んだ目で教室を見渡す。あちこちに目立つ空席、その一つに視線が止まる。

「……木下がいません」

教室内の反応は薄かった。最近の木下は明らかに様子が変だった。次に脱落するのはあいつだとみんな薄々思っていた。

「今日何するゥ?」

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バッカス・ファックオフ

※1杯目※

なんでも神様にはソックスだかバッカスだかの酒の神がいるそうだが、
だとすりゃそいつはどうしようもないクソで、クソみたいに
俺を呪ってるんだろう。
じゃなきゃ人が禁酒しようと決めた時に限っていい酒に
巡り合わせる道理がねぇ。

そして俺みてぇに弱い人間は、いい酒に出会っちまうと一瞬前までの
反省なんて忘れてすぐそれに飛びついちまう。
で、滅茶苦茶に酔ってトラブルに巻き込まれるってわけだ

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面白かったですか? それは良かった!
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任侠娘のドロイドマリッジ

「つまり……キサマが娘の」

 ヤスダ組長はギロリと睨みを利かせた。
 組長の視線の先には、アイドル然とした男が平然と正座。

「はい、私がマチコさんに購入、カスタマイズされた、汎用人工知能搭載型男性ドロイドA7002k号です」

「名前は」

「あっくん、とお呼び頂ければ」

 普段から、そう呼ばれているらしい。
 マチコが耐えられずに両手で顔を覆う。ドロイドはイケメンであり、明らかにカスタマイ

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