逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集
寿司職人VSデーモンコア
重たげな扉が開き、調理服姿の寿司職人が姿を表した。対峙するはデーモン・コア。鈍色の放射性物質 。中央で横一文字に分かたれたベリリウム球の中に、邪悪な真珠、あるいはワサビのように潜み居る。
ベリリウムの上の半球と下の半球が一部の隙もなく合わさった時、それは破滅的な反応を起こし、周囲の生命に速やかな死をもたらす。職人の使命は、この半球同士を限界まで近づけること。その際使うのは十本の指のみ。つまり
アタック・オブ・ザ・ケセランパサラン
「またケセランパサランが人を襲いました。死亡したヘギンズ氏はサンタフェでハネムーンを過ごしており……」ザザッ。カーラジオは不快なノイズと共に途絶えた。車がポンコツだからだ。今日という今日は俺もそれを思い知った。
行く手は何マイルにもかけて荒野。建物の影も形も見当たらない。エンストしないことを祈るばかりだ。視界の端を水牛の群れが横切っていった。一面の青空には白い雲が一つきり。いや、違う。本当に雲
アポロ:ヴァンパイアキラー
アポロンは羊飼いの守護神にして太陽の神。またその名を冠したアポロ計画は、太陽神の加護を受けて月に潜むヴァンパイアを討たんとする大規模遠征作戦であった。
宇宙服姿のアポロ11号の乗組員たちは、茫然と月の原野に立ち尽くす。彼らの囲む中央には半ば白砂に埋もれて眠る一体のヴァンパイアがいた。これほど無防備な姿を前にするのは、乗員たちの誰もが初めてだ。怪物は月の影の面に居城を築き、夜になると地球に飛来
ギロチナイゼーション 1582
焼け落ちんとする本能寺は炎の中で光り輝いていた。畳の上に座す織田信長の胸のうちは穏やかだ。彼の前には一本の小刀が横たえられている。割腹の後は、燃え盛る火が介錯人のかわりとなろう。言うなれば彼は自らの野望に身を焼かれて死ぬのだ。それも悪くない。
ふと、目の前に人影が射した。さては敵の刺客か。業火の中をここまで――天にはどこまでも嫌われたものだ。「名を名乗れ」信長は顔を上げずに問うた。「私はギロ