逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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フラワーガールズ 第一話

 「あのー、ちょっといいですか?」
 夕日を背に立つ女の子に向かって、わたしは声を掛けます。
故郷の島から海を渡って約五時間。ようやくナユタに着いたかと思えば、思わぬ事態で。
「やっぱり良くないと思うんですよ。たとえどんなに辛い事があったって、次の瞬間には、良い事があったりするじゃないですか。つまり、その、簡単に諦めてはいけないというか……」
 波が波止場に打ち寄せています。しどろもどろになりなが

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ウリエルの蜥蜴『嘆きの谷に、青い鳥は舞う』

 ニュー・ゴールデンバレーから、そのいけ好かない男がやって来たのは、街が雨期に入る直前の事だった。

 その頃、おれはウォルーメン・ハーレムの一画にある安アパートメントの、さびれた一室に構えた自宅兼事務所で慎ましく暮らしていた。つい先日、二千ギルヴィの収入があったってのに、その日も、朝食は買い置きのパンに目玉焼きだった。朝食があるだけましだって言う奴がいるかもしれないが、知った事じゃない。二千もあ

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魔の鴉がやってくる。

 鴉が鳴いている。
 七ツ森麻來鴉は串に刺した肉の具合を確かめた。焚火の上で肉が焼けつつあった。串は近くに落ちていた枝を研いだもの、肉は一時間前に狩った猪の肉である。
 東京奥多摩。夜の川岸。
 時刻は間もなく、午前一時を迎えようとしている。
『出たよ、麻來鴉。大物だ』
 どこか幼い声がそう言った。しかし、それは奇妙な事だった。川岸には麻來鴉のほかに人の姿はなかった。
 焚火の中で、薪が爆ぜる。

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