逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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入金日1週間前、残高わずか20MB

「0100010010010100」
助けて、と女は言った。俺と同じ制式最適化ローブで外見情報は一切ないのに、なぜか俺には依頼人が女とわかった。

視覚と聴覚のクラウド保存が実装されてわずか3年。
上の連中による保存の義務化にも、サーバ国営化にも正面から反対する奴はいなかった。
皆、思い出が大事なのは同じだ。

すぐに容量の枯渇が最大の社会問題となったが、自動保存は止まらない。
容量は金で取引され

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昭和93年のサラリマン

頑なにケータイを持たないでいた先輩が、急にICチップを脳に埋め込んできた。
しかもSuicaだという。

「いちいち切符を買わなくていいのは便利だよなあ」

タッチ部分にお辞儀して改札を通る先輩は誇らしげである。
前頭葉へのインプラントは保険も効くし日帰りで十分な術式だが、雑な術後管理のために脳をカビらせて死ぬ例もある。思慮深い彼ならリスクを考慮し、きっと死ぬまで紙の切符を使い続けると思っていた。

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