逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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記事

完璧なディストピアの作り方

地上を舐め尽す警報音に追われ、僕は廃棄場の底にいた。

 〈オルダ〉の多脚刺肢に貫かれ、イトーは満足げに笑って逝った。漂白と脱臭を塗り重ねた今の地上でそれは貴重な感情だった。

「人間性が大切なんだ」

 彼の言葉を思い出す。 

 ネオサイタマに夢中になってニュースピークに憧れた大学時代。僕とイトーが冗談半分で立ち上げた「焚書愛好会」の活動は、SNSで拡散されあっと言う間に広まった。RPの参加

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お姉さまがあなたを見ている

『図書室も無けりゃ本も無い。それで図書委員があるなんて変な話だ』
「うるさいな、何よ図書室って」

 頭の中に、男が住み着いた。名前は臼田澄夫。正体は多分、前世の自分。先日彼の夢を見てから、思い出した様に現れた。実際彼はただの記憶で、幽霊や別人格なんかじゃない。

 けれど私は、世界観のまるで違うその記憶を受け入れられず、自分とは別の存在だと考える事にした。と言っても、要は弾みで浮かぶこの男として

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絶罪殺機アンタゴニアス

甲弐式機動牢獄は、囚人たちが特殊刑務作業に従事する際に搭乗する更生支援兵器であり、その外観は巨大な蜘蛛を思わせる。
 胸部下面から伸びた機銃が十字型の火を噴き、命乞いをする貧民たちを容赦なく血煙に変えた。散発的に浴びせられてくる反撃の銃弾は、その装甲に傷一つつけることはない。
 逃げ惑う人々をかきわけて、暗い目をした男がうっそりと歩いてくる。
 その両手に二挺のちっぽけな拳銃が現れた時、囚人らは失

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