逆噴射小説大賞2018:エントリー作品収集

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温泉街の怪人

痛みで熱を帯びた呼気は、足湯から立ち上る湯気よりも白かった。

 踏み抜く雪に腹から垂れた血が混ざる。目がかすむのは寒さだけが理由ではない。「鳥嶋ァー!」遠くで組の連中が俺の名を叫んでいる。いや、耳が馬鹿になって小さく聞こえているだけか。「鳥嶋ァー!」想像して腹の底が冷えた。もつれる足を必死で動かす。路面電車の駅。倒れる。電灯が時計を照らしている。午前二時。火を落とした温泉街は眠りについた巨大な昆

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