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東宮生まれ東宮育ちの6年生、桂木杏奈はこの町が大好きだった。だから自販機コーラ一掃事件や血みどろ軍手大量発生事件といった難題も解決してきたし、転校生のマリちゃんに町を紹介して馴染んでもらうのもぞうさもないことだった。そうしてスーパーの店長に「杏奈ちゃんは東宮の顔役だね」なんて言われて以来、杏奈は得意げに自分を“かおやく”と呼ぶのだった。 夏休みのある日、おつかい帰りの杏奈の目に見慣れない姿が留まった。暑い中茶色のスーツを着た、老眼鏡をおでこに上げて電柱に書かれた住所を
死の荒野の土は黒く、バイオ生物の頭骨が転がっていた。辺境地域における最後の盾である生協の武装バンが不毛の荒野を疾走していた。その走行風景は野生のチーターを思い出す走りだった。 「兄弟、目的地にはいつ到着するんだ?」 重サイバネ武装職員のチューマは相棒のドロイドドライバーに目的地の到着時間を訪ねた。生協の輸送業務は基本的にツーマンセルだ。すなわちドライバーとボディガードである。生協職員は基本的にメガコーポの保護の外にある辺境地域に出向くことが多い。辺境にはレイダーや危険バイ