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【二次選考結果】逆噴射小説大賞2022

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小説の冒頭800文字で競う「逆噴射小説大賞2022」! その二次選考の突破作品集です。
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#アクション

百刃封じ [Forge a hundred blades]

 ヒカリの眼前、骸骨の顎が大きく開く。立ち並ぶ鋭い牙。  火床の熾火は朱く、金床の鉄材はまだ温かい。いつも通りの鍛冶場。鼻先に迫る死を除けば。  牙はしかし、寸前で止まった。骸骨の頭を誰かが鷲掴みにしている。チエだ。チエは骸骨を土間に叩きつけ、ブーツで頭蓋を踏み砕く。そしてヒカリを見もせずに言った。 「いいから鍛冶をしろ」 「勝手に決めないでください!」  ヒカリは警戒していた。チエは今日会ったばかりの、しかも明らかな異常者だ。それは真夏に黒い外套を着ているからでは

天煉の祓魔刀

 君たちは腰を落とし、観測刀の鯉口を切った。  朧鮫革が巻かれた天正拵えの柄が、掌に吸い付くように馴染む。  重厚で淀みがない動作。君たちは自分がなぜこのような所作を取ることができるのか疑問に思った。  目の前には、鵺の姿。  闇黒の中に饐えた虹色を含んだ、八間三尺の巨体。  立ち上がった蟷螂にも、明王の骨格標本にも見える。細部は不安定に揺らめき、雑像のようにチラついていた。  その姿に意味がないことを、君たちは知っている。  瞬きをひとつ。  ただそれだけで鵺は仔犬ほどの大