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【アイアン・アトラス・プレジデント!】#3

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「安い! 安い! 実際安い」「毎日お米を食べよう」「あなたの電話が今すぐ安くなる! 無料査定!」「ヒートリ、コマキタネー……アカチャン!」

 川沿いの建築群が発する大音量の広告音声がタマ・リバー川面に反響し、広告ネオンライトを投げかける中、モヒカン船長が操舵するスピードボートは高速ジグザグ航行を継続している。コミタは身を乗り出し、吐いた。「オゴーッ!」

「フフッ、やはりこのネオサイタマの猥雑とした様相には、喧噪の極点を通り超えて到達する一種の郷愁とゼンがあるように思います」

 サトルは得意げに言った。

「ア? 何?」

 アイアンアトラスは聞き逃した。コミタはペットボトルの水で口をゆすぎ、涙目でサトルを見た。

「CEOマン=サンはネオサイタマ久しぶりなんですか? 何処の都市の人なんです?」

「私はね! 特定の都市に属する存在ではないのだ。大局的に、この地球の行く末を見据え、日々リーダーシップをとって行動する責任を負っているのですよ。まあ、強いて言うならば、本社の……いや、会社名は言わぬが花です。かつて私は確かにネオサイタマにその身を置いていた時期もあります。しかしその時代、私は繁華街などに繰り出すことなど皆無でした。そしてその後CEOとなってからは、世界各地を飛び回り忙殺される日々……庶民の暮らしなどというものには縁がない人生を送ってきたといえましょう」

「あのう、あとどれくらいでタマリバーくだりって終わるんですか?」

 コミタは蒼い顔で船長に話しかけた。

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