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【日報】スマブラに鉄拳のカズヤが参戦する意味をおまえは理解する(逆噴射聡一郎)


よくきたな。おれは逆噴射聡一郎だ。おれは毎日すごい量のテキストを書いているが、だれにも読ませるつもりはない。しかし先日のニンテンドーダイレクトの発表において「スマッショブラザーズに鉄拳のカズヤが参戦する」というニュースを知ったおれは、この記事を書かずにはいられなかった。

逆噴射聡一郎先生プロフィール:社会派コラムニスト。昔からダイハードテイルズ・マガジンに時々寄稿してくださいます。

おまえはスマッシュブラザーズを知っているだろうか? それは色々なキャラクターが出て殴り合い、吸い込んで食ったり、吐き出して崖から転落させてころすゲームだ。そこには話し合いとかヌルいものはいっさい存在せず、ノンストップの暴力だけがあり、世界中の老若男女を完全に興奮させ続け、すごい人気と面白さが築き上げられている。そしてストリートのキッズたちが夢を託すタイトルでもある。NINTENDOはそこに、鉄拳のカズヤを投げ込むというのだ。

サルーンでNINTENDO配信を見ていたキッズが「KAZUYA・・?」「カズヤ誰よ・・?」などとざわつく中、おれだけは冷静に真の狼 -WOLF- の野生の感を集中的にとぎすまし、その本質を理解していった・・・・・・・。

まずスマブラは本質的に、敵を崖から転落させてころすゲームである。そうして過酷なMEXICOで成り上がってきたのだ。そしていよいよその暴力的な生い立ちを認めざるを得ない刻が来たのだといえるだろう。そしてそのうえで・・・・おそらくスマ・ブラはキッズに社会の真の厳しさを伝える責任を果たす段階に来ているのだと思う。

もし、世界のキッズがGAMEで勝つことに本気にならず、ぼんやりとインスタとかザッピングしてYou Tubeとか動画見るだけの腰抜けになれば、ストリートは暴力によって飼い慣らされ、いずれカズヤのようなとんでもないやつが権力を握り・・・・第三次世界大戦を起こしてしまう・・・・・WAR・・・・・・炎が世界をのみこみゲームどころではなくなる・・・・そうならないよう、つねにビリビリした緊張感を持ってGAMEに本気を出し、一日一日を真剣にE-SPORTSに取り組んでゆけ・・・・スマブラで真の男になれ・・・・・・そういう示唆を、カズヤ参戦にこめているのだと気づいたのだ。

だから、真の男であるおれは完全に落ち着きはらい、サイバイバルナイフで切ったハムとオりーブを食べながら「ついにカズヤもスマッショブラザー図に出るようになったか・・・」と静かにうなずいていた。おれは危けんなMEXICOに住んでいた頃から貧しいなりに鉄拳をかなりやっていたとゆう生い立ちがあるし、若き日は倒した相手の死体を蹴って台をパンチされたり、立ち上がって上から覗き込まれるなど日常茶飯事に危ない橋も渡ってきた。そういった本物の緊張感の中で、危険と隣り合わせで生きてきたといえるだろう。だからKAZUYAがようやくNINTENDOというシャバに出てきたのを見て、おれは更生したマフィアを見るようなあたたかい視線を送ったのだ。

だが、フロアのKIDSの反応は、おれの予想に360°反するものだった。

「誰?」「KAZUYA?」「知らないんだけど」「なんだカズヤかよ」「マジがっかり」「ニーアーを出せよ」・・・・・カズヤ参戦に対してK.I.D.Sたちから浴びせられたのは、そんな心無い言葉ばかりだった。あるいはそもそもカズヤが何かすら知らない。おれは苦々しさを喉の奥にながしこむように、静かに、テキーラをのんだ。そして・・・・・・・哭いていた。


カズヤを知らないやつは全員あほ

最初にはっきりゆっておくが鉄拳はマイナーゲームでもなんでもない。今現在、対戦格闘ゲームの最前線タイトルの一つとして、世界中でめちゃくちゃプレイされており、鉄拳7は10年ぐらいずっと売れ続けて今でも売れ続けて700万本ぐらい売れている大人気タイトルだ。しかし、王様のブランチとかで毎週取り上げられたりしてないせいで、こうやって日の当たるシャバに出れば「誰よ?」とか言われてしまうのだとゆう事を痛感した。

だが、おれはカズヤも知らないあほのKIDSをいっぽうてきに腰抜けと決めつける気にもなれなかった。むしろ、いたたまれない気持ちになったし・・・まわりを見渡せば、おれと同様に鉄拳をプレイする真の男たちが皆・・・・・おれに似たような心境で、この断絶をしみじみと噛み締めているようでもあった。

キッズの困惑はもっともだ。同じ格闘ゲームでも、バーチャファイターはなんかオシャレだったし、ストリートファイターは対戦格闘ゲームの元祖でかなり早い時期からウメハラとかで有名だったりディズニー作品にも出演したが、その間m鉄拳はずっと場末のゲームセンターでプレイヤー同士が借金を踏み倒してゲーム代を捻出し殴り合いをしたりオシボリを投げつけあったり留置場に入ったりし・・・・ゲーム筐体の周囲は油と煙と暴力の気配で満たされていた。住む世界の背景が違う・・・そうゆうイメージがあった。

その後、鉄拳はオンライン化とかE-SPORTの波などの要素によって、徐々にクリーンになっていった。しかしそれでも・・・・依然として、殺伐とした世界観に片足つっこんでいた。ちょっとやればすぐに相手から挑発メールがいきなり送りつけられてくる無法のMEXICOであり・・・・・カズヤはそんな恐ろしさの象徴のようなキャラクターなのだ。

もしやすると、日本の人々の間でひろく鉄拳が認知されたのは、2019年のパキスタン・ショック事件のときであったかもしれない。これは突然パキスタンからやってきたアルスラーン・アッシュとゆう若者が、世界のトッププレイヤーたちをボコボコに倒したうえに「母国のコミュニティでは俺は一番弱い」みたいなことを言い残して去っていった事件だ。あまりにもエピソードとして素晴らしすぎるので鉄拳を知らない層にもすごい話題になったわけだ。

そんなわけで少なくとも日本の昼の世界での鉄拳の知名度はまだ少ない。だが・・・・いいか、よくきけ。スマブラプレイヤーにとってはカズヤは、パキスタンからやってきたアッシュみたいに異次元だ。だから、希望に溢れたティーン・エイジャーの目からすれば、なんだかわからない恐ろしい目つきのムキムキの男が自分達のスマ・ブラの世界に不敵な態度で現れてガノンドロフを崖から捨てた事に本能的な恐怖をおぼえ、小便をちびりそうになった・・・その気恥ずかしさと身体の震えをごまかすために「カズヤとか知らない」「ニーアーにしろ」とか震え声でブーイングしてしまったとしても・・・・・仕方のないことだ。

だが、そんな泣き言はもう言っていられない。なぜならスマブラに参戦するからだ。おまえは今すぐ、カズヤについての真の知識を得ねばならない。カズヤについて知るのがこわい腰抜けは今すぐママのところに帰り、ニンテンドー・スマ・ブラの自動アップデートを止めてもらえ。そして一生、世界の真の姿から目を背け続けていろ。だがおまえは真の男だから、この先を読み、そして知るはずだ・・・・・・。カズヤとはなんなのかを。


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