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S3第10話【タイラント・オブ・マッポーカリプス:後編】分割版 #4

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 010010101……【美】……【像】……【隗】……0100101……暗闇に01が閃き、ノイズにささくれた漢字が浮かんでは消え、遠くに浮かぶ故郷めいた巨大な存在が遠ざかっていった。コトブキは再起動を果たした。「……いけない」彼女は腕に力を込め、己を押し潰す瓦礫をはねのけた。「ハイヤーッ!」

 KRAAASH! 起き上がった彼女はすぐにザック達を探した。なんたる粉塵、なんたる破壊か。何かが衝突してきて、そして……。……彼女はトコノマに居たはずだ。下の階へ床ごと落とされたのだろうか?「ねえちゃん……ねえちゃん、どこ!?」「ザック=サン!?」コトブキは声の方向へ走った。

 キュイ、キュイイ、ニューロンの奥でシステムが駆動し、彼女の視界がサーモ表示になる。天井材を幾つも押しのけた先に、ザックがいた。無事だ。だが彼の傍らではミズマルが額から血を流し、青ざめている。「俺は平気! それより……」「ミズマル=サン! それに、侍女の方は……」コトブキが駆け寄る。危険な状態だ。そして、侍女の姿はない……。

 コトブキはミズマルの手を取り、脈拍を確かめる。「ザック=サン、下がってください」彼女の胸に手を当て、AEDショックを与えた。「ハイッ!」「……ンアーッ!」ミズマルが覚醒し、咳き込む。「ここは。私は。侍女のエメは」呟き、状況を把握する。破壊だ。

 砕けた壁の穴から外の光が差し込んでいる。「崩れて、落ちたんだ」ザックが言った。「龍だ。タイクーンのオオカゲが、城に体当たりをかけた。滅茶苦茶だ……」「ここは危険です。部屋の外へ」コトブキが経路を確かめる。ザックはミズマルに肩をかした。「この人を、安全な所に移さねえと」

「貴方たちの……目指す場所は」ミズマルが掠れ声で尋ねた。「喋らないほうがいいぜ」ザックが気遣うが、ミズマルは強いて言った。「お願い。私は貴方たちに力を貸したい。出来ることは今、それしかない」「……」三人は廊下に出た。「お願い」

「……UNIXサーバー室を探しています」コトブキが答えた。「解き放ったネットワークを加速させ、ネザーのジツを破るんです」「UNIX……」ミズマルは思考を巡らせた。「わかる限りの事を、伝えます」「でも、まずは安全を確保です」「私は置いていきなさい。殿を……あの人を終わらせなければ……」「ねえちゃん。行ってくれ」ザックが言った。「俺に任せて」

「ザック=サン……」コトブキは胸がいっぱいになった。もはや躊躇ってはいられない。「それでは……ミズマル=サンの事、お願いできますか」「勿論だぜ。お姫様を守って、ぜってえ生き延びてやるよ」ザックはサムアップした。ミズマルはコトブキに経路を伝える……。


◆◆◆


「ケケエエエエエン!」「ケケエエエエエエエン!」巨大な二体の青銅の鳥の怪物は、空をつん裂く咆哮とともに、振り上げた頭部を突き下ろした。「「イヤーッ!」」KRAASH! 爆砕する地面から、ニンジャスレイヤーとタイクーンは別々の方向へ飛び離れた。

「奴め!」コヒバリの背、アカゾナエのファイアワークが唸った。「死ね、陛下の敵!」彼が弓を向けた相手はニンジャスレイヤーだ。そしてドゥームサーペントも同様。毒鉤爪の生えた鉄甲を擦り合わせ、コヒバリの背から跳ぶ。「ネフィラ=サンの仇、取らせてもらうぜ、ニンジャスレイヤー=サン! イヤーッ!」

 ドゥームサーペントはキリモミ爪回転でニンジャスレイヤーに襲いかかる!「イヤーッ!」着地体勢のニンジャスレイヤーは防御を強制される! だが、そこへ飛来する爆発矢!「イヤーッ!」斜め下から有刺鉄線が渦を巻いて飛び、鉄条網が矢を絡めて押し留める! アナイアレイターだ!

 KA-BOOM! 矢が爆発し、四方八方に鉄線が降り注ぐと、ネザーキョウ、ムーホンの区別なくゲニンを捉え、引き裂く!「次から次へとクソ共!」アナイアレイターが叫んだ。ニンジャスレイヤーはドゥームサーペントを蹴り飛ばし、第二の爆発矢をスリケンで撃ち返す! KA-BOOM!「アバーッ!」ゲニン巻添死!

「ケ、ケエエエエン!」ファイアワークの乗るコヒバリが首を巡らせ、ニンジャスレイヤーに直接攻撃をしかける! ニンジャスレイヤーの目が燃える!「イヤーッ!」KRAAAASH! 嘴攻撃を受け止め、大地を刳りながら後退するニンジャスレイヤー! もう一体のコヒバリはタイクーンへ向かう!「ケエエエン!」

「エイッ!」タイクーンは嘴攻撃を跳んで躱し、ヤリを下へ投げ下ろして頭部を貫通すると、突き刺さった槍の柄を踏んで、さらに跳んだ。「イヤーッ!」跳んだ先には陽炎を纏いし巨大な青銅鎧兵器、テンマ有り!『イヤーッ!』巨大刀がタイクーンを襲う! タイクーンはヘシキリブレードで受ける!

 KRAASH! 衝撃波を散らし、タイクーンとテンマは互いに弾かれた。『タイクーン! アケチ・ニンジャよ!』テンマは巨大刀を構え、増幅音声を放った。一方、タイクーンは地面に縫いつけられたコヒバリの機関部を垂直落下刺突で破壊し、テンマを見上げた。「神聖なるタチアイの最中に、何しに参ったか!」

『愚かなり、アケチ・ニンジャ』放電する蒸気を噴き出し、胸部装甲が展開。胎内玉座に座るジョウゴが、酷薄な睨みでタイクーンを見下ろした。「畢竟、貴様は王の器にあらず。オダ・ニンジャのカラテを、意志を簒奪し、偽の権威もて君臨す。我、真の王ジョウゴ。第六天魔王は我の名である」

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