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ENDSINGER翻訳作業中です(杉ライカ)

KADOKAWA/エンターブレインから日本語版が出ているジェイ・クリストフ=サンの和風スチームパンク小説「ロータス戦記」シリーズ、最終巻(5&6巻)となる「エンドシンガー」の翻訳作業を進めています! こちらもトリロジーの最終巻にふさわしい、とても素晴らしい内容です。めちゃくちゃ面白い。前巻から結構間が空いてしまったので、なるべく早くみなさんのもとに届けられるよう作業を進めています!

エンドシンガー(3部)はとにかく戦争!戦争!戦争!という形で、いろいろなスケールの戦いがギッシリ詰まっており、これまで出た主要キャラたちが見事に伏線を回収していき、自らの運命に反抗していきます。ここまで読んできた方はもう内容を知っていると思いますが、ジュブナイルなので1部(ストームダンサー)のあたりはまだおとなしいのですが、2部(キンスレイヤー)からどんどん血腥くハードになっていきます。割とこう、普通のキラキラしたジュブナイルしか読んでいない少年少女層を、クリストフ=サンのフィールドであるゴリゴリの血みどろスチームパンクファンタジー/ミリタリーSFにシームレスに溶接して連行していく感じがあり、とても好感が持てますね。個人的には、ジュブナイルの少女主人公モノで、話の途中で身籠っていることが発覚し(しかも相手は同年代の幼馴染の美形ショーグンで、いろいろあって主人公に半殺しにされてスチームパンク鋼鉄義手を伴って復活し、今は主人公を殺すためだけに生きている)、そのままお腹を気にしながら頑張って戦うという作品は初めて読んだので、それだけでもまず凄いなという感銘を受けました(もちろん中絶するかどうかも考えたりします)。もちろんそうした生々しさをただドラマや人間関係やアクセントのためだけでなく、身籠っていること、母になることへの不安感などが、〈識〉(Kenning)という異能の力の変化にもうまく転化されていて、ファンタジーのギミックを非常に上手く使っています。

クリストフ=サンはオーストラリア在住の45歳なんですが、おそらくダイハードテイルズの面々やボンド&モーゼズ=サンと同じようなものを食ってきた感が強く、ダイハードテイルズ著作が好きな人には完全にど真ん中といった感じの、ジュブナイル和風スチームパンクです。あとは英米の現在進行形のファンタジー/ミリタリーSF/スチームパンクエンタテイメントを好んでいる人にもオススメです。また2012-2014年の作品なので、やはり同時期のものとしてニンジャスレイヤー第3部にも近いテーマ性がありますね。両者とも、使っている言葉や設定がエキゾチックなので日本の読者の方にはイロモノっぽく見えてしまうところもあるかもしれませんが、割と現在進行形のファンタジー/SFの文脈としてど真ん中なところを取り扱っており、どちらも本物の骨太の物語です。

さてクリストフ=サンといえば、著作「NERVERNIGHT」の映画化決定のニュースが最近出ていましたね(ストームダンサーも映像映えするので、NEVERNIGHTが当たったらぜひしてほしい)。クリストフ=サンは、日本だとまだ「ロータス戦記」と「イルミナエ・ファイル」(エイミー・カウフマンとの共著で、よく日本語版出せたなと思うめちゃくちゃクレイジーな本。X-FILESとかHUNTER:THE RECONNINGとかが好きな人は黙って買うべきです)しか出ていないし、Wikiもできていないくらいなんですが、とてもいい作家さんなのでもっと日本でも知名度が上がっていってほしいですね。ということもあり、ようやくうちではロータス戦記を一通り紹介できそうなので、NEVERNIGHTもどこかから出たらいいなと思っています(映画化でどこかが版権取ったかもしれない)。

また日本語版の装丁はエンブレ繋がりということでtoi8さんに描いていただいているのですが、これもエンドシンガーがどんな感じの絵に仕上がるか楽しみですね(クリストフ=サンも毎回日本語版の装丁は楽しみにしてくれていて、監修が回るとすぐにツイッターにあげてくれています)。ちなみにこれは第2部「キンスレイヤー」のユキコです。

ついでなので各国版を紹介しておくと、まず英語版のソフトカバーがこんな感じです。シンプルにユキコがかっこいいですね。文学っていうよりはエンタテイメントよりで、ジュブナイルよりなことが一発でわかりますね。

謎なんですけど、ハードバック版になると実写になるんですよね突然。ソフトカバーみたいなゲームっぽい絵柄だと、図書館とかカタい場所にに置きにくいからかなあ……。

あと個人的に無茶してて好きなのがフランス語版ですね。メンポをつけて、めちゃくちゃ艶っぽい感じになります。ジュブナイル層というよりは、ハナからゲーマー層とか向けなんじゃないのかな……。各国いろいろなアプローチがありつつ、根っこは同じなのが感じられ面白いですね。

キンスレイヤーになるとダイショーを装備し始め、ニンジャ度が増します(ユキコはダイショー持ちませんが、イメージなのでアリです)。

エンドシンガーではついに隠しきれないスリケンが溢れ出す! やった!(ユキコは投げませんが、敵が手裏剣投擲機を使うのでアリです)

こう各国で振れ幅がいろいろあると、なんだか楽しいですよね。というわけで、日本語版も鋭意翻訳中です。発表までもうしばらくお待ちください!

【補足】エンドシンガーは2020年の段階で上&下巻ともに翻訳と校正を完了していますが、KADOKAWAと原作出版社との契約の事情で、発売できない状態が続いているようです。出版社間の契約事情などについては残念ながらダイハードテイルズ側ではノータッチであり何も動けないため、読者の皆さんにユキコとブルウの旅の終わりをお届けできないのは大変心苦しいですが、将来的に状況が変わり、発表可能となることを祈っています。

(杉ライカ)

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