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【サイレント・ナイト・プロトコル】#6

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 KRAAASH! ガラス破砕に似た音は現実のものだった。外壁が失われ露天したコケシマート2階、UNIXデッキの周囲に01ノイズと閃光が散り、ニンジャスレイヤーが出現し、膝をつく。「ヌウウッ……!」固唾をのむような、一瞬の沈黙。そののち、クローンヤクザは再び襲いかかった!「ザッケンナコラー!」

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはクローンヤクザに次々にカラテを叩き込んだ。赤黒の影は打撃とともに徐々に加速し、砂塵を放射しながら地を蹴った。「イヤーッ!」「グワーッ!」空中に跳ね上げられたヤクザを蹴り、さらに飛ぶ!「イヤーッ!」

 直後、アダナス攻撃ヘリの容赦なきミサイルがUNIXデッキを直撃、床を崩落させた。ニンジャスレイヤーは眼下の様相に構わず、ヘリの着陸脚スキッドを掴んでいた。「イヤーッ!」鉄棒選手めいて身体を回転させると、彼はヘリ側面に取り付き、対応しようとしたヤクザを引きずり落として、操縦席に乱入した。

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」強化ガラスにクローンヤクザの緑の血飛沫が飛び散り、ヘリはコントロールを喪失、振り子めいて揺れる。……そこへ、KA-BOOOOM! 地上から放たれた熱弾が直撃した! ナムサン! モーターマサシの腕から展開した電磁砲だ!

「ハーッハハハハハ! ターマヤー!」黒煙を吐いて落下する攻撃ヘリを眺め、プライベティアが快哉した。「いいぞアイリーン! お前は俺が寝取った機械の中でも最上だ! ニンジャスレイヤー野郎を殺せ!」BOOOM! モーターマサシはさらにミサイルを発射! 空中で爆ぜてクラスタ散開!

「イヤーッ!」燃え落ちるヘリの中から飛び出したニンジャスレイヤーに、糸を引いてミサイル群が襲いかかった。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは跳躍回転の中から四方八方にスリケンを投擲。ミサイルを撃ち落とし、湿地に斜めに生えた廃信号機の上に、止まり木めいて着地した。

「ちょこまかと蚊めが!」プライベティアは唸り、スキットルのサケをメンポに差し込んで飲酒した。モーターマサシが動き始めた。ガションキュイイーン。ガションキュイイーン。鋼鉄の獣の足音が大地を揺らす。そしてペンドゥラムは息を吐き、指を立てた。「イヤーッ!」眼前に直径3メートルのカラテミサイルが生じた!

 突き出したペンドゥラムの中指には、鎖を垂らす指輪が嵌まっている。鎖の先端が鎌首をもたげ、廃信号機から跳躍するニンジャスレイヤーをぴたりと示した。巨大な白熱球が動き出した。モーターマサシよりもやや速い速度で飛翔。ニンジャスレイヤーへの追尾を開始した。ナムサン。これぞ恐るべきディレイド・カラテミサイルの秘技だ。

「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」装甲車が回り込み、増援のクローンヤクザを吐き出す。そしてアサルトライフルによる十字ヤクザ砲火を開始した。BRRRTTTT! 包囲領域外へ逃さぬ構えだ。ニンジャスレイヤーはフックロープを廃道路標識に引っ掛けて宙を駆ける。「イヤーッ!」

 逃れる先は崩壊ビル林立地帯。だが、跳躍方向! 空気が輪郭を持ち、フェティッシュにぬるめく黒一色のニンジャが遮った!「イヤーッ!」繰り出された回し蹴りをニンジャスレイヤーは防御し、斜め後方に落下。地面を滑り、カラテを構え直す!「ドーモ」ニンジャはアイサツした。「アンタゴニスです」

 滑らかな頭部の表面に意味不明な記号が瞬き、そののち「仇」「見敵」「挨拶」などの漢字が遷移し、やがて、はみ出すほどに大きい目が映って、ニンジャスレイヤーを見据えた。表面すべてがモニタ機能を持っているのだ。「ドーモ。アンタゴニス=サン。ニンジャスレイヤーです」アイサツを返す! 

「イヤーッ!」オジギ終了からコンマ05秒。二者は同時に動いた。アンタゴニスはニンジャスレイヤーの前傾突進の攻撃軌道を先読みし、前蹴りを打つ。ニンジャスレイヤーは一瞬速く地面を抉り掴んで逆さに跳び、死角から蹴りを浴びせた。「イヤーッ!」アンタゴニスは腕で受ける。顔面の記号が歪む!

 ニンジャスレイヤーはアンタゴニスを相当の使い手と判断、ワン・インチ距離から激しい短打を浴びせた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」アンタゴニスは打ち返す。六つの目が表示され、意味不明な記号となり、そして「仇」を映した。「「イヤーッ!」」回し蹴り同士が衝突! 間合いが離れる!

「スッゾ!」「アッコラー!」追いついてきたクローンヤクザが再び十字ヤクザ放火を浴びせる。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは一回転の中からスリケンを扇状に投擲し、次々に仕留めながら、二回転の勢いを乗せた回し蹴りをアンタゴニスに浴びせた!「グワーッ!」転がるアンタゴニス!

 ニンジャスレイヤーは追撃に出ようとしたが、一瞬の隙を奪ったのはそこへ襲い来た電磁砲弾だった。咄嗟に身を躱すと、熱弾はマフラー布を突き破って飛翔し、奥のビル廃墟を貫通した。KA-DOOOM!「……!」水飛沫と轟音を伴い、じわじわと傾く廃墟を背後に、ニンジャスレイヤーはモーターマサシを睨んだ。

「逃さんぞニンジャスレイヤー=サン!」殺戮機械に追いついてきたのは、帽子を手で押さえ、片足義足で軽々と走るプライベティアだ。「アイリーン! いまいち狙いが緩いぞ! バカめ。俺がやらねばならん!」モーターマサシに呼びかけると、背部装甲が展開。プライベティアは躊躇なくそこへ飛び込んだ。搭乗機能覚醒!

『ハァーハハハ! お前の機能、この俺のジョルリ・ジツが遺憾なく発揮してやろうな!』スピーカーから音声を発し、プライベティアの乗った殺戮機械は熱ブレードでニンジャスレイヤーに斬り掛かった!『イヤーッ!』「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは跳躍回避! 蹴り返す!

『効かぬわ!』モーターマサシは攻撃の勢いのまま走り抜け、負傷したクローンヤクザ溜まりに突っ込んで惨殺しながらドリフトする。トライアングル・リープしたニンジャスレイヤーに襲いかかるのは、アンタゴニスだ。「イヤーッ!」「イヤーッ!」蹴りとチョップがぶつかり合う! そこへ……光球!

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