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エイジ・オブ・マッポーカリプス シーズン4 プレビュー

◇総合目次 ◇ニンジャスレイヤーとは
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 それは世界全土を電子ネットワークが覆いつくし、サイバネティック技術が普遍化した、混沌の近未来。


【忍倫】


『安い、安い、実際安い』重金属酸性雨の中、鈍色の空に、マグロツェッペリンの広告音声が響き渡る。昼下りの市場を行き交う者達の佇まいは雑多だ。編笠を被った電子傭兵、自我もつウキヨ、スモトリ崩れ、ジャンク屋、サラリパンクス。月破砕から10年以上が過ぎ、街は混沌の色彩をより鮮やかにする。

 出自も所属も目的も異なる人の群れを掻き分け、ケブラー装束の男が荒っぽく押し通る。男はニンジャであった。追われていた。血塗れの刃を手に、息荒く、幾度も後ろを振り返る。だが追跡者を引き離す事はできていない。「どけ!」「アイエエエ!」スシ・ソバ屋台を薙ぎ倒し、路地裏へ走り込んだ。

 一方、追う者は着実な足取り、極彩の人々を最小限の動きでかわしながら、ニンジャの後に続く。七色のペンキに、黒い墨を垂らしたようだった。短い黒髪、黒いPVCパーカー姿の、鋭い目つきの男だった。彼の名は、マスラダ・カイ。またの名をニンジャスレイヤー。


■NINJA ENTERT@INMENT■


 ネオ・シャンゼリゼのオープンカフェで、薄汚い老人は黒いコーヒーを啜った。「アケチ・ニンジャは斃れ、サツガイを蘇らせんとする邪悪なるティアマトの企みも、まずは退けられた。……だがもはや、リアルニンジャたちの復活と現世侵略の潮流は、おいそれとは止めがたい有様」

「長き眠りより目覚めしワンソーの子らは、アケチ・ニンジャが唯一人のニンジャソウル憑依者に滅ぼされた事を、にわかには信じなかった。彼奴らは平安時代の禍を知らぬ。ゆえに侮った。ニンジャスレイヤーなどニンジャのまがい物、恐るるに足らず、とな。然らば……誰が、如何にしてそれを証明する?」

「カラテはさらなるカラテを呼び、ソウルはさらなるソウルを呼び起こす。空位の玉座を巡り、新たなイクサが幕を開ける。オセアニアを血と呪いの闇に閉ざすシャン・ロア。暗黒メガコーポを私するヴァイン。ケイトー・ニンジャはYotHを手に何をか陰謀せん。或いは、見よ……エジプトの暗黒ピラミッドを」

「ファラオニンジャのセトは、目覚めたばかりのワンソーの子らを束ねんと、いにしえの狩りの儀式を執り行なわんとす。ナラク・ニンジャの力を宿したあの若者が望むと望まざるを問わずして、暗黒の遊戯は既に火蓋を切ったのだ。ダークカラテエンパイアの空位の玉座をめぐってな」

「……そしてそれが、大いなる災いを招いた。すなわち、エイジ・オブ・マッポーカリプスの到来よ」


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NINJA SLAYER: AOM
SEASON 4
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「聞け。偉大なるカツ・ワンソーの子らよ」セトは鮮血の盃を掲げてみせた。彼は茫漠たる荒野の只中におり、頭上では黄金の立方体が輝いている。太古のジツの力によって、彼を取り囲む石板群の表面には、恐るべきニンジャたちの不明瞭なバストアップが一人一人映し出されていた。

「この肥沃な世界の土を再び踏みし我らは、時にいがみ合い、時に憎しみ合い、血塗られし領土争いを繰り広げても来た。だが、今はひととき禍根を忘れん。古式ゆかしきイクサ儀式の場で、互いの戦士の優劣を決めるとしよう。格好の獲物が現れた今この時にな」

「獲物?」「異な事を」「……」「試合の類か?」「望みを申せ」石板に映し出されたニンジャ達が口々に言葉を発した。セトは満足げに喉を鳴らし、片手を差し上げた。そして言った。「ストラグル・オブ・カリュドーンの儀式を、ネオサイタマの地にて執り行う。狩りの獲物はニンジャスレイヤー也」

 石板会議出席者のざわめきは静まり返り、虎視眈々たるアトモスフィアが取って代わった。彼らは儀式の意味を熟知していた。ストラグル・オブ・カリュドーン。即ち「狩人の印」を刻んだ獲物を追い詰め、最初に獲物の心臓を引きずり出して血を飲んだ者が勝者となる。勝者に与えられるのは絶対の承認……!

「試練にあたりては、無論、我ら各自が代理戦士をたてる」セトは言った。「我らは各々が領域を持ち、その維持に腐心しておる。故に代理戦士をネオサイタマへ遣わすべし。粛々と試練を執り行い、勝者となった者の主が、ダークカラテエンパイアの空なる玉座を守る摂政の座につき、余の者らを従えるのだ」

 異論を唱える者はなかった。石板会議出席者の一人として、己の敗北を恐れてはいなかった。主催者となるセトが何らかの企みを持っているであろう事も、全て承知の上だ。「カツ・ワンソーの子らよ。試練に名乗り出るならば、この神聖パピルス片に各々のハンコをつくべし!」

 セトが掲げたパピルスには、既に彼自身のハンコが打たれていた。そして、おお、見よ! 連なるように、六つの刻印がたちまち焼き付く! 則ち計七名のリアルニンジャが儀式に参加する! 勝者は他の六名に対し絶対的な優位を得る! いまやその誰もが自らの勝利を確信し、高笑いを上げた!「狩りを始めん!」


◆忍殺◆


『安い。安い。実際安い』『凄いローンだ! 今すぐ借金!』『愛、それは我が社です』けたたましい広告音声は闇の後ろに遠ざかる。マスラダは雑居ビルの谷間へ分け入っていった。空は狭く切り取られ、古樹めいて張り巡らされた配管パイプが水蒸気を噴き上げる。闇を照らすのは大小のネオン看板だ。

『電話王子様』『スピーカモゲル』『だんご』『裕司と典子』『絶対はい』。様々なフォントとネオンの色彩、ステーキ皿を差し出す牛などが賑やかな看板群が、バチバチと音を立てて漏電するたび、路地は闇と薄明かりを行き来する。裏通りにも市民の姿は多い。表通りよりも胡乱で、敵意ある者達。

 マスラダはニンジャを追い、都市の闇へ分け入ってゆく。タキとのIRCが乱れ、ネオン看板が明滅する。影がマスラダの後に続く。ネオンが火花を散らすたび、続く影の数は増えてゆく。ひとり。ふたり。三人。マスラダは歩みを止めぬまま、追ってくる者達に注意を振り分けた。頭上のビルを、影が横切った。

 今や追跡者は七人に増えていた。追跡……否、包囲である。マスラダは顔に手を当て、離した。ニンジャスレイヤーの顔には「忍」「殺」のメンポが装着されていた。前、後ろ、上。彼は足を止めた。そして、取り囲む正体不明の敵に向かって、アイサツした。「……ドーモ。ニンジャスレイヤーです」


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物語の舞台は電脳都市ネオサイタマに戻る。タキやコトブキと共にニンジャスレイヤーとしての新たな戦いを開始するマスラダ。だがリアルニンジャを束ねんとするセトは、ニンジャスレイヤーをトロフィーとした暗黒のゲームを開催! 世界各地からネオサイタマへ、七人の暗黒カラテ刺客が送り込まれる!

ニンジャスレイヤーAoMシーズン4、2020年11月初旬より連載開始予定!



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