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S3第10話【タイラント・オブ・マッポーカリプス:後編】分割版 #6

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 オオカゲはネザーの風を捉えて飛翔する。ネザーキョウの領土に張り巡らされた五重塔がこの世に引き込むネザーの力。キキョウ・ジツによって、現在その力場は、ホンノウジを頂点とする五都市に結ばれた広大な領域にまで拡大している。だが今オオカゲが目指すのは南の方角である。

 オオカゲは遥か地平に巨大なイクサを見据える。UCAの軍勢が、クワドリガ・インヴェインを柱とするネザーキョウの軍勢とぶつかり合っているのだ。

 そして、オオカゲの食い縛った龍の牙の内。(スウーッ……ハアーッ……)咥えこんだ者の呼吸音が徐々に整い、大きくなってゆく。そして……ズム。ズム。牙が内側から打たれ、揺れ始めた。「カッ……!?」オオカゲは困惑し、歯を噛み合わせようとした。だが。

「イヤーッ!」KRAASH! 鋭利な刃じみて恐るべきオオカゲの牙が、内側から折られ、吹き飛んで、下へ落ちていった。「GRRRR!?」オオカゲは空をのたうつが、その背の二人のニンジャは驚異的ニンジャバランス感覚によってぴくりともしない。オオカゲは口中のものを飲み込もうと、紫の舌を暴れさせた。「GRRRR!」

「イヤーッ!」「シャギャーッ!?」オオカゲが苦悶した。恐るべき顎が開いた。オオカゲの舌を荒縄めいて片手で掴むティアマトが垣間見えた。ティアマトは容赦なくその舌を引きちぎった。「イヤーッ!」「シャギャアアアア!」紫の炎が口中から溢れる。ティアマトは空中へひらりと身を躍らせた。

 KA-DOOOOM! 怒り狂ったオオカゲのネザーブレスが、クルクルと回転しながら自由落下するティアマトに浴びせられる。ティアマトは回し蹴りで紫の炎を払い、牽制のクナイ・ダートを複数投擲する。「シャギャアアア!」オオカゲは紫の火球を浴びせかける。ティアマトは「ふふふ、たまらんな」と呟く。

「噛み合わぬ時もある。それもまた運命じゃ。機、いまだ至らずという事……」落ちながら、彼女はマガタマの力を解き放った。虚空に出現した黒いトリイが彼女を迎え入れた。ティアマトは消滅した。「シャギャアアア! アアアア!」叫ぶオオカゲを、タイクーンは一喝する。「エイッ! 迷わず飛翔せよ!」

「ハンニャアアアア!」オオカゲは異彩の空で8の字を描き、再び南への針路を取り直した。「以て、一騎打ちの邪魔は全て失せた」「城を棄てるのか」「愚かな。ホンノウジに攻め寄せし者どもは我が精兵のカタナの錆よ。而して南方にイクサあり。この空にて貴様との決着をつけ、そののちワシ自ら、前線にて惰弱文明を蹂躙してくれる」「おれも時間をかけるつもりはない」「イヤーッ!」「イヤーッ!」


◆◆◆


 ターン! フスマを開き、コトブキは次の廊下へエントリーした。後方では猛り狂った足音が彼女を追ってくる。ホンノウジ・テンプル天守閣を守るニンジャ、ヴェイパーと、手勢のゲニン達である。ジョウゴが送り込んだニンジャを探し出し、殺すために、彼らは虱潰しに城内をあらためているのだ。

『実際、お前が目当てじゃねえんだ。間違いなくな』タキがノイズ混じりの通信を通して助言した。『今、城の外でメチャクチャな事になってら。さっきの龍野郎の衝突も多分そのせいだ。で、奴ら、城に忍び込んだ奴らを探してる。大変だが、好都合ッてもんだな』「でも……」コトブキは立ち止まった。

 次の部屋の入り口を塞ぐように、不気味な石像がオジゾウ・ガーゴイル像めいて立っている。コトブキは息を呑んだ。生命反応を感知したのだ。像はギョロリと目を動かし、コトブキを見た。「……その身なり。姫か? だが、ワシの知る寵姫にお前のような者はおらんな」ナムサン! 像が一歩踏み出す!

「クルシュナイ! わたし、コトブキ姫です」『ヤバイぜ』「デアエ……!」後ずさるコトブキを咎め、石像がメキメキと音を立てて、奇怪なニンジャの姿を現した。「ドーモ。ストーンビーストです。貴様さては、さきの侵入者の一味!」「クルシュナイ! 違いますよ!」

「権限テウチ致す! イヤーッ!」「ンアーッ!」コトブキはストーンビーストの爪に切り裂かれながら、横の部屋にまろび込んだ。「イヤーッ! イヤーッ!」「ンアーッ!」コトブキはゴロゴロと転がった。帯がほぐれ、レッドカーペットめいてタタミの上に道を生じる。「イヤーッ!」さらに爪! コトブキはジュウニヒトエを脱いで離脱!

 キモノの中から立ち上がったコトブキはキャミソールにホットパンツという動きやすい姿で、ストーンビーストは一瞬、その妖精めいた姿に幻惑された。それが彼の運命を決めた。「イヤーッ!」突如、天井から雨漏りめいて水が滴り、見る間にニンジャの姿を取ると、ストーンビーストを後ろから刺した!

「エッ?」離脱しながらコトブキは突然の出来事を理解しようとした。「アバーッ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!」水のニンジャはトドメを刺す!「何が!?」『振り返るんじゃねえ! なんか知らねえが逃げろ!』タキが急かした。「ハイヤーッ!」SMAAASH! ショウジ戸を蹴り開け、コトブキは逃走!

『追ってくるか? 来ねえか? 来ねえ!』階段を駆け上がるコトブキの頭の奥で、タキは通信越しに喚き続けた。『多分、城の連中が探してる侵入者だ。きっと隠れ潜んでるところにお前が転がり込んできて、アンブッシュのチャンスだと思ったんじゃねえか? もう忘れちまえ。近いぞ、急げ!』「ハイ!」

 階段を昇り終えたその時だ。『ア……何だこりゃ……また……ちょっと伏せろ!』「ハイ!」タキの電撃的指示に、コトブキは従った。KA-DOOM! DOOOM! 凄まじい震動が襲い来た。「……!」コトブキは堪えた。「また……龍の体当たりでしょうか?」『い、いや違う。クソが! 弾丸キャリアの第二波だ!』

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