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パルプ小説の書き方(実践編5):「シーケンスを溶接しろ」(逆噴射聡一郎)

承前

よくきたな。おれは逆噴射聡一郎だ。おれは毎日すごい量のテキストを書いているが、誰にも読ませるつもりはない。CORONAが当局に自粛させられているらしいが、おれは今までドリトス規制などで何度も孤独な修羅場をくぐってきた真の男であり、この程度の圧力でおれのCORONAを自粛させられると思ったら大間違いだ。W・H・OやC・I・Aであろうとおれに関税をかけることはできない。

前回おれは「小説一本を20個くらいのシーンやシーケンスにバラす方法」と「開幕シーケンスの書き方」についてまとめた。今回はその続きとして「好きな場面を飛び飛びで書き、それを溶接する方法」をやる。今回も実務的な話なので最初からマガジンに入れる。

逆噴射聡一郎先生プロフィール:社会派コラムニスト。昔からダイハードテイルズ・マガジンに時々寄稿してくださいます。当マガジン上にて「パルプ小説の書き方講座」を連載していただいています。


前回おれは小説を20個くらいのシーケンスにバラす方法と、チョーかっこいい開幕シーケンスを書けばもはや20分の1が出来上がったも同然であることをおまえに教えた。

ではおまえは小説を書き上げてMAKE MONEYできただろうか? たいていは開幕シーケンスを書いたところで行き詰まったはずだ。そして中には、おれがなかなか次の講座をやらないのを言いことにPRACTICEを中断し、酒やベイブにおぼれ・・・・・行きつけのサルーンで「俺はむかし小説を書いていたんだぜ」などと吹聴してベイブといい仲になり・・・・・やがて子供ができ・・・・年老い・・・・家族に囲まれてオレンジ農園の日差しを浴びながら息を引き取る・・・・・・END OF MEXICO・・・。

何が悪かたのか? おまえが野生の本能を見失い牙の抜かれたWOFLとなっていたからだ。おまえは昔はそんなではなかったはずだ。おまえは真の男であり、CORONAがどうとか、他人がどうとか、そうゆう腰抜けみたいな理由をつけなくても、自分から色々やれる男だったはずだ。春休みは終わりだ。おまえはそうした野生的な精神を徐々に取り戻さなくてはいけない。


ありがちな行き詰まり例

行き詰まりにはいくつかパターンがある。よくある例を書いておこう。例えばおまえが近未来とか異世界を舞台に、おたずね者のガンマンキャラを作ったとする。何しろガンスリンガーはかっこいい・・・・・いつの時代も受け入れられる真の男にふさわしい定番ジャンル・・・・ここまでの所おまえの小説プランは100000点の出来栄えだ。そしてジャンルものの定番として「シーンA:超かっこいいギミックの銃で撃ちまくる場面」「シーンB:銀行を襲う場面」「シーンC:ライバルと1対1で決闘する場面」などを「書きたいな!」と思ったとしよう。

この時点で、クライマックスは「シーンC」に決まったようなものだ。そうすると「シーンC」は必然的に終盤付近に置かれるだろう。つまり、商業レベルの小説の単位である12万文字基準ならば・・・・・・そこにたどり着くまでに10万文字を書かなくてはいけない。10万文字だ。テン・サウザンド。10万ドルといえば1億円にも等しい。この事実を知った瞬間、絶望し、家に帰ってあかちゃんがえりするやつもいるだろう。これは無理もないことであり、12万文字を一度も書き上げたことがない者にとって、そこへ至るまでの10万文字は果てしなく高いMEXICO山脈の頂上のようなものなのだ・・・・。こうして腰抜けがまずEND OF MEXICOする。

一方で、ろくに筋道を描かず開幕シーケンスの「シーンA」から順に書いていく勇敢なあほもいる。だが何もプランが無いので「シーンB」にたどり着くことすらなく、特に書きたくもない酒場でグダグダしている場面などを書いているうちに「これは本当に面白いのか?」「これは本当に俺の書きたいものだったのか?」などというチャチな自問自答にハマり・・・・・筆が止まり・・・・・・やがてサボテンの影で人知れず終わりをむかえる。最初に思い描いた最高のクライマックスである「シーンC」を一文字も文章化することなく・・・・・・その輝きをこの世界に生み出すこともなく・・・・・・いちばん頭の中でホットに躍動している最初の初期衝動を活かせないまま・・・・・やがて「シーンC」が最高に面白いことについても徐々に自信がなくなり・・・・・おれの講座がなかなか始まらないのをいいことに・・・・END OF MEXICOしたのだ。

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