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シャード・オブ・マッポーカリプス(82):人造マスコットバイオ生物「ケモチャン」

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「ケモビール」「うわッ」コケシマートから自宅に向かって、鼻歌を歌いながら歩いていたエーリアスは、路地裏からぬっと現れた奇妙な動物を見て驚き、思わずビニール袋を取り落とした。

「なッ、何だこいつ」エーリアスは軽く身構えた。その動物の大きさは牛ほどで、獅子のような頭と体、アルカイックな眼差しを持つ優しげな顔、猛禽類を思わせる翼、そして蛇のような尻尾を持っていた。


生ケモチャン

ケモ動物(ケモチャン)とは、「ケモビール」のラベルに描かれたキメラ動物じみたマスコットキャラクターであり、獅子じみた頭と体、大きな翼、蛇の尻尾、神秘的な顔つきなどを持っている。この製品プロモーションのためだけに血肉を持つ存在として生み出され、ネオサイタマ市街へと放たれたのが、人造バイオマスコット生物としての「生ケモチャン」たちである。


マスコットバイオ生物の誕生

Y2K以前より、酒造メーカーにおける新製品開発は、生化学や菌類などの研究と切り離せないものであった。ケモビール社はもともと酒造とバイオテクノロジーの大手であり、こうした分野に強みを持つ。

ケモビール社は医療系や美容系のバイオサイバネにも食い込もうとしていたが、最大手の暗黒メガコーポであるヨロシサン製薬に比べれば、その業界シェアは1パーセントにも満たなかった。加えて、保守的な経営体質が災いし、当時はケモビールの消費量も頭打ちを始めていた。

事業多角化を目指したいケモビール社のマーケ部は、自社の製品と知的財産、そしてあまり知られていない自社のバイオテック面での強みをアピールするため、極めて斬新なアイディアを思いついた。それは既によく知られたマスコットキャラクターである「ケモチャン」を、実際に生物として生み出すというアイディアである。即座にプロジェクトチームが結成された。

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