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【ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス】

この小説はTwitter連載時のログをそのままアーカイブしたものであり、誤字脱字などの修正は基本的に行っていません。このエピソードの加筆修正版が、上記リンクから購入できる第2部の物理書籍/電子書籍第3巻「荒野の三忍」に収録されています。また、第2部のコミカライズがチャンピオンREDで行われています。


【ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス】

1

 雷鳴が轟いた。垂れ込めた暗雲に閃光が照り返し、激しい重金属酸性雨が降り始める。窓際を見張るダークスーツにサングラス姿の男は一瞬その閃光に注意を払い、また、もとの警戒姿勢に戻った。

 雑居ビルの一角、闇を照らすのは数本のロウソクだけだ。中央には金糸タタミがあり、そこに、フンドシ一枚姿の屈強な男がうつ伏せに寝そべっている。男は寝そべりながら茶葉と大麻のブレンドをパイプで吸引している。片目は潰れ、岩の如き額とアゴは、男の獰猛な本性をあらわして余りある。

 全裸のオイラン二人が男の左右に膝をつき、どこか不安げな表情で、その全身をマッサージしていた。男の背中には炎を背負ったブッダエンジェルのタトゥーが施されており、汗に濡れて不吉に光っていた。彼はエルダーツチノコクランのグレーターヤクザ、アベルだ。素手でバイオスモトリを殺した事もある。

 天井近くの壁にはミニマム・シュラインがあり、中に飾られた地蔵に、サケとダンゴが備えられている。天井からは赤い裏地の掛け軸が垂らされ、そこには一様に「大きくて長生きなツチノコ」とショドーされている。あまりにも禍々しい呪術的光景であるが、これがヤクザクラン事務所の標準的な内装なのだ。

 常に死線の中にある彼らはブードゥー的な呪術とは切っても切り離せない。それは、レッサーヤクザをヨロシサン製のクローンヤクザでまかなう傾向が強まった現代においても変わりは無い。実際、事務所内、オイランとアベルを除いた四人の構成員は全員同じ顔だ。最新のY-13型クローンヤクザである。

 エルダーツチノコクランはキョートにおいてさほど歴史あるヤクザクランでは無い。しかしヨロシサン製薬とのつながりを深め、積極的にビジネス関係を構築する事でのし上がった。Y-13型クローンヤクザを配備するヤクザクランは現時点ではエルダーツチノコクランただ一つでは無かろうか。

 四人のクローンヤクザのうち一人は窓際、一人は戸口を護り、二人は硝子製のチャブでアドバンスド将棋をしていた(血のかわりにバイオ血液が流れる蒼ざめたクローンといえど、ボットやオイランドロイドの類とは違う。生体脳を持つ人間であり、当然、娯楽も嗜む)。外にはもう一人門番が配備されている。

「早くオイル塗らんかい」アベルが煙を吐き出し、低く言った。二人のオイランは慌てて壺に手を差し入れ、ツバキ脂をアベルの全身に塗りたくり始めた。「カラダ使わんかい」二人のオイランは緊張した面持ちで、一人はアベルの上半身、一人は下半身を、豊満な乳房でオイルマッサージし始めた。

 クローンヤクザは武装していた。窓際と戸口の二人はアサルトライフル。チャブの二人はオートマチック拳銃とカタナを装備している。いつでも襲撃に対処できるようにだ。クラン本部から通達があった。この数日、正体不明の敵に構成員が殺害されるインシデントが続いている。アベルは恐れていなかった。

 アベルはエルダーツチノコクランきっての武闘派として知られている。サディストでもある(彼の性器はサイバネ改造されており、クロームの逆棘が生えている)。戯れに、密室にバイオスモトリを閉じ込め、素手のカラテで全身の骨を砕いて殺した事がある。怪物的な残虐さは味方にも恐れられていた。

「そいつ、ウチに来りゃいいです。クランをナメた奴がノコノコ出てきたら、手脚と背骨を逆向きに折り曲げて、殺してやりますよ」昨日の食事会で、アベルはクラン首領にそう豪語した。取り巻きは震え上がった。アベルは比喩で言っているのではないのだ。

「ん?」アベルはパイプを吸う手を止めた。「外。見て来んかい」音がしたのだ。アベルの獣じみた聴覚は違和感を感じ取っていた。「ハイヨロコンデー」将棋ヤクザの一人が素早く立ち上がり、アサルトヤクザが立つ戸口へ向かって行く。その時、ロウソクの火が唐突に消えたのだった。

「アイエエエ!?」既にして極度の緊張状態にあった二人のオイランが闇の中で絶叫した。アベルは跳ね起きた。「電気つけんかい!」「ハイヨロコンデー!」戸口のアサルトヤクザが手元のボンボリ電源を入れた。明かりの下、眼前に立つ異物存在を目視した瞬間、アサルトヤクザはバラバラになって死んだ。

「イヤーッ!」「アバババババッ!」濃紺の影がくるくると回転すると、戸口のアサルトヤクザはナマスめいて寸断され、バイオ血液とともに床にぶちまけられたのだ!膝立ちになり、広げた両手のそれぞれにドスと呼ばれるダガーナイフを逆手で構えたニンジャはキツネのオメーンを被っていた。

「アイエエ……」オイランの一人は腰を抜かして裸体のまま座り込んだ。もう一人は錯乱して走り回った。「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」「黙らんかい!」オイランの背中にアベルはいきなりカタナで斬りつけた!手元に用意していたのだ!「アレーッ!」あわれ背中を斜めに斬られオイランは絶命!

「ザッケンナコラー!」鍛え上げた裸身にフンドシ一つ、血濡れのカタナを構えたアベルは怯まず叫ぶ!「どこのクランだ!スッゾコラー!」「大変です!」ニンジャの背後で扉が開いた。そして出て行ったばかりの将棋ヤクザが飛び込んできた。「アベル=サン、見張りが死んでます!バラ…」「イヤーッ!」

「アバババババッ!」次の瞬間、紺色の影がくるくると回転すると、その将棋ヤクザはナマスめいて寸断され、床にぶちまけられた!首が転がり、虫の息で呟く「そ、そう、こんな風にアバッ」絶命!「ザッケンナコラー!」「ザッケンナコラー!」窓際のアサルトヤクザとチャブの将棋ヤクザが銃を撃ち込む!

「イヤーッ!」目にも留まらぬ速さでキツネオメーンのニンジャの両手が閃く。短銃ばかりかアサルトライフルの銃弾1マガジン分の銃弾全てが二本のドスさばきによって弾き返された!無傷!「ナムアミダアレーッ!」あわれ、座り込んでネンブツを唱えていたオイランの脳天に跳弾が命中し絶命!

「イヤーッ!」キツネオメーンのニンジャが跳躍する。まるで濃紺の竜巻だ!「アバババババッ!」跳躍軌跡上にいた将棋ヤクザは一瞬にして十数回斬りつけられ、バイオ血煙を噴き上げながらナマスめいて寸断、床にぶちまけられた!そのままニンジャは壁を蹴って窓際のアサルトヤクザへ!「イヤーッ!」

「アバババババッ!」壁を蹴ったニンジャは窓際のアサルトヤクザを回転に巻き込み、あっという間にナマスめいて寸断!その死体を床にぶちまける!「……」ニンジャが窓を背にアベルを睨み据えると、雷鳴が轟き、重い雲を閃光が照らす!わずか一呼吸のうちに、アベル以外の構成員は全員死亡!

「ザ……ザッケンナコラー……」アベルはぜぇぜぇと息を吐き、この突然の闖入殺戮者へカタナを構えなおした。「何者だ……テメェ……」キツネオメーンの濃紺ニンジャは落雷を背に、逆手でドス・ダガーを持った両手をクロスしてアイサツした。「ドーモ、はじめまして。ケジメニンジャです」

「ケジメニンジャだと!?」アベルはオウム返しにした。「ふざけやがって馬鹿野郎……そのオメーンを取りやがれってンだよ!どこのニンジャだオラー!」「俺は何者でも無い……」キツネオメーンのニンジャは無感情に呟いた。「まず貴様をケジメする」「ザッケンナコラー!」「イヤーッ!」

 アベルがカタナを斜めに振りおろした。彼はこのカタナで十人のヤクザを一人で皆殺しにした事がある。おそらくケンドー段位換算で13段は下らないであろうワザマエ、恐るべき速度の斬撃だ。だが!「グワーッ!?」

 ケジメニンジャはアベルとすれ違い、その背後に片膝をついていた。無傷!アベルは己の左手に感じた激痛の正体を知るべく、手を上げてまじまじと見る。ナムアミダブツ!左手の指が全て根元から切り落とされケジメされている!「グワーッ!?」

「ザッケンナコラー!」アベルはしかし強靭な精神の持ち主、この程度でひるむことはない!踏み込みながら大上段の一撃を振り下ろす!「イヤーッ!」ケジメニンジャは振り向きながら飛び上がり、回転しながらアベルとすれ違った。そして着地。無傷!アベルは?「グワーッ!?」カタナを取り落とす!

 右手の指も五本全てケジメされている。もはやカタナは持てぬ!「グワーッ!」「貴様をケジメする」ケジメニンジャはガン・スピンめいてドス・ダガーを手の周囲でクルクルと回転させ構え直した。「ザッケンナコラー」アベルは身構えながら、最近のヤクザ殺害事件の被害者の死体の特徴を思い出していた。

 死体は両手足を無残に切り落とされていた。そして切り離された手の指は執拗にケジメされていたのだ……当然このケジメニンジャの仕業だ!「イヤーッ!」ケジメニンジャが両手のドス・ダガーを閃かせた。「グワーッ!」アベルの両肘から先が切り離された!ケジメ!「貴様をケジメする」

「ザ……ザッケンナコラー!」アベルは切断された両腕を突き出し、なおも攻撃に出た!捨て身!「ウオオーッ!」アベルがケジメニンジャの頭部めがけ右足で蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」「グワーッ!?」右足の膝から下が易々と切断された!ケジメ!

 だがアベルは捨て身の覚悟を決めていたのだ。蹴りの勢いで回転し、左足による回し蹴りを繰り出す!「ヌウッ」ケジメニンジャは身を反らせ回避するが、蹴り足はキツネオメーンをかすめ、跳ね飛ばした!ナムサン!惜しくも当て損なった蹴りの代償に、左脚の膝から下も次の瞬間、切り落とされていた!

「グワーッ!」両手両足を切断されたアベルは為すすべ無く床に仰向けに倒れた。「て、テメェ……?」オメーンを失ったケジメニンジャの顔を見上げたアベルは絶句した。埋め込み式のサイバーサングラスをしたその顔は……顔立ちはあまりにも彼がよく知る顔……クローンヤクザY-13のそれである!

「クローンヤクザ?ニンジャ?」出血多量でアベルは死にかけていた。「どういう事だ」「俺は顔なき顔。俺は亡霊」ケジメニンジャは無感情にアベルを見下ろす。「クソッ」アベルは呻いた。「こんな事してタダで済むと思うなよ……ヨロシサンやザイバツが必ず制裁、ア、アバッ」「……」アベルは死んだ。


2

 ハエの煩わしい羽音とカボスの腐臭が彼を目覚めさせた。独房めいたワンルーム。ブラインド窓から差し込む横縞模様の光が、フートンの隣で寝息を立てる裸の女の背中を前衛的に色分けしている。男が起き上がると、女も目を開いた。

「あなたステキとてもダッタワヨ」女は片言で呟き、男の脇腹を指でなぞる。男は女をちらりとも見ずに、チャブの上の腐ったカボスを眺めていた。ハエがふらふらとその周囲を飛んでいる。やがてそのハエは男のほうへ飛んできて、目の前を横切ろうとする。男は無造作にそのハエを掴み取り、潰して殺した。

「あなたスッゴイワ」女が言った。「ミヤモト・マサシの映画見たワ。同じみたい」「……」埋め込み式サイバーサングラスとへの字の口に隠れ、男の表情は読み取れない。「その入れ墨もテクノね」Y-13という文字列を女が指で触れようとしたとき、男は立ち上がった。「……」

「ワタシこれビジネスだけどまた呼んでねアナタ」「……」男はチャブの上のボトル入り濾過水を手に取り、飲んだ。そして言った。「夢を見た」「夢?ステキネ」「……中身は忘れた。だから夢を見たと証明する事ができない」「そうなの?ステキネ」女は適当に相槌を打った。

 男は女の見ている前で濃紺のニンジャ装束を着込んだ。「アナタ、本物のニンジャみたい」女は目を擦った。男はさらにその上に毛皮コートを羽織る。殺したヤクザから奪ったものだ。チャブの上に二万円素子を投げ、キツネのオメーンを装着すると、ケジメニンジャは振り返りもせず、退廃ホテルを後にした。


◆◆◆


 高級流しソーメン料亭「美の波風」。回転スシ店めいたドーナツ型のカウンターテーブルはコンベアーベルトではなく、かわりに溝の中をローマ水道めいてひっきりなしに水が流れている。その水の中で、生きた金魚とともに浮いたり沈んだりしている白くきらめくヌードルが、ソーメンだ。

「オットット」「オットット」「金魚はいけませんよ!」「オットット」スーツ姿のかしこまったサラリマンが白いソーメンを楽しげに手繰る。だが、半数のスーツ姿の者達はせっかくのソーメンにまるで手を付けず、彼らを不満げに見据えたままだ。この者らはスーツ姿であるがサラリマンではない。

「どうなすったんで?」「せっかくのソーメンですのに……」「オットット!」嬌声をあげる彼らのスーツにはヨロシサン製薬のバッヂが輝く。ヨロシサン製薬はキョート、サイタマ、ともに最大シェアを誇る製薬企業であり、闇社会においてバイオ悪事の九割の発端とも囁かれる暗黒メガコーポである。

 彼らに対するスーツの者らは、誰あろう、エルダーツチノコクランのグレーターヤクザ達だ。当然ヨロシサンのサラリマン達はそれを承知の上でこの席に臨んでいる。それを承知の上で、この自覚・無自覚も定かでない慇懃無礼……万魔殿ヨロシサンの人間は一筋縄ではゆかぬのだ。

 やおら、エルダーツチノコクランの中央のヤクザが水流にハシを挿し入れ、ソーメン二玉をひとまとめに掬い上げると、ショーユもつけず、大口を開けて一息で咀嚼した。そこには金魚も混じっていた。「話、いいですかな?エッ?」ダークスーツに包まれたグリズリーめいた巨体を乗り出す。コワイ!

「アッそうですね!そろそろやりますか!」「ズルルーッ!」「オットット!」読者の皆さんの中で、あるいはこのヨロシサン製薬の態度に疑問を持たれた方もいようか?おそらくそのような方はこれまでにソウカイ・シンジケートあるいはザイバツを接待する彼らの姿をご覧になっていたのではないだろうか。

 エルダーツチノコクランとソウカイヤあるいはザイバツでは格が違うのである……エルダーツチノコクランがキョートにおいてのし上がったのも、彼らヨロシサン製薬の提供する最新型クローンヤクザY-13の力があればこそ。ゆえにヨロシサンは居丈高にもなる。

 そうは言っても、彼らとていっぱしのグレーターヤクザ。彼らが一様にソーメンをひと飲みにして睨みを効かせると、ヨロシサンのサラリマンは曖昧な笑みを浮かべ、カウンターテーブルにハシを置いてかしこまった。「……例の件でございますね」「そうだよ……わかってんだろうが……」

「このたびは、実にこう災難といいますか」ヨロシサン社員は笑顔を崩さない。「ニンジャによるヤクザクラン襲撃とは……恐ろしい出来事もあったものです。ですが、ご安心ください、今回、クローンヤクザの再発注、セプク価格でご奉仕させていただきます……」「ザッケンナコラー!」

 グリズリーめいた最も屈強なグレーターヤクザが立ち上がった。「しらばっくれんのかコラー!スッゾオラー!」「アイエッ!」グリズリーヤクザは社員めがけて写真を投げつける。監視カメラ映像のUNIXプリントアウトだ。そこには惨殺死体の中に立つニンジャ装束の男……クローンヤクザの顔が露わだ!

「こいつクローンヤクザじゃねえかコラー!スッゾオラー!ナンオラー!てめぇんとこのニンジャじゃねえのかオラー!マッチポンプザッケンナコラー!弁解してみろオラー!チェラッコラー!」「アイエエエ!」ヨロシサン社員の最も若い一人が恫喝に負けて失禁!

 エルダーツチノコクランの疑念とはすなわち、ヨロシサン製薬がクローンヤクザめいた自前のニンジャを用いて取引先のクローンヤクザを虐殺、その補充と称して無理やりに買い替え需要を作り出そうとしたのではないかと言う事である。実際その思考は自然であった。社員はハンケチで額の汗をぬぐった。

「こ、これは断じて違いますよ!我々の故意では無いですとも」気圧されながら、チーフサラリマンが弁明した。「原因は目下調査中ですが、」「ヴォラッケラー!」グリズリーヤクザが悪罵を極めた上級ヤクザスラングを叫ぶ!「ドグサレッガー!こっちはクローンじゃねえ兄弟も殺されッコラー!」

 グリズリーヤクザは己の放った言葉によって自らさらに激昂の度合いを強める。顔は紅潮し、怒声はなおもボリュームを増す。コワイ!「調査中!?って事は出所はテメェらって事じゃねえかオラー!?アッコラー!」「アイエエエ!」三人のヨロシサン社員の二番手社員も恫喝に陥落し失禁!

「まあまあ、オチャノ=サン」グリズリーヤクザの隣の金髪ヤクザが制した。「怒鳴っても始まらん」そしてヨロシサン社員へ獰猛な笑みを浮かべる。「誠意見せてくれますよねェ?」誠意!この、どうとでも取れる言葉こそ、日本社会の奥ゆかしさを逆手にとった悪辣なるトラップなのだ!

 金髪ヤクザは続ける「近頃はウチもお金が無い。一円も無いくらいです。誠意が見たい!」「アイエエエ!」失禁済みの二人の社員がガタガタと震え悲鳴を上げる。一円も無いという言葉は謎かけである。決して言質を取らせず、暗に「無料でクローンヤクザの補填を行うべし」という圧力をかけるやり口だ!

「……本社に持ち帰らせていただいて、前向きに検討しましょう」黒髪をポマードで撫でつけた課長サラリマンはアルカイックな笑みを浮かべてそう答弁した。前向き……言わばゼロ回答。このサラリマンの上手である。「明日には回答もらえますよねェ?」金髪ヤクザは食い下がった。「連絡させます」

 課長サラリマンはハンケチで額を拭い「さあ、お昼も終わりだ」席を立とうとした。その時、入り口のシークレットショウジ戸が開かれ、このVIP流しソーメン部屋に、出入口警護のクローンヤクザがまろび込んで来た。「ア、アバッ!」クローンヤクザは乞うように両腕を掲げた。両肘から先が無い!

「何ィ!?」三人のグレーターヤクザは一斉に立ち上がった。「アイエッ!?」三人のヨロシサン社員も同時に立ち上がる。両者にとって青天の霹靂めいた事態が起こった事は明白である!「アバババーッ!」クローンヤクザはカウンターへ倒れこんだ。両腕の切断面から流れる濁ったバイオ血液が流水を汚す!

「襲撃か!?」「ヨロシサン!罠かコラー!」「こっちのセリフでしょッ!」六人が浮き足立つ中、もう一人、新手の闖入者が戸口からエントリーした。濃紺のニンジャ装束、キツネオメーンを身につけたその者は素早くオジギした。「ドーモ。ケジメニンジャです。貴様らをケジメする」

「出、出やがった!」金髪ヤクザがチャカ(ヤクザカスタム短銃)を素早く構えてケジメニンジャを狙った。「こいつだ!こいつ!ザッケンナコラー!」発砲!他の二人のグレーターヤクザも迷わずケジメニンジャへ発砲!

「イヤーッ!」ケジメニンジャはその場で高速回転した!両手で逆手持ちしたドスが全ての銃弾を弾き返す!「アバーッ!?」グレーターヤクザの一人が額に跳弾を受けて即死!金髪ヤクザとグリズリーヤクザは死んだ兄弟分を唖然と見下ろす!「イヤーッ!」ケジメニンジャが跳躍!

「アバーッ!」まるで超小型の竜巻が襲いかかったかのような惨事!ヨロシサン社員の一人が両手指全てをケジメされ、さらに一秒後には全身をナマスめいてバラバラに切断されて床に散乱した。課長サラリマンとニュービーサラリマンは死んだ社員を唖然と見下ろす!「イヤーッ!」ケジメニンジャが跳躍!

 その時だ!「イヤーッ!」ドーナツ型円形カウンターの奥から毛むくじゃらの何かが跳び上がり、課長サラリマンめがけたケジメニンジャの跳躍攻撃をインターラプトした。切磋音が響き渡る!「アイエエエエエ!」ニュービーサラリマンが驚きのあまり再失禁!

 ケジメニンジャは思わぬ新手に攻撃を阻まれ、バック転して距離を取るとドス・ダガーを構えなおした。毛むくじゃらの人影は背中を丸めて両手をつきだした。その指先に鋭利な爪が光る。彼の身を包む毛皮ボディスーツは……どうやらニンジャ装束なのだ!

 異形のニンジャは獅子の下顎を模したメンポの隙間から獣じみた涎を垂らしてオジギした。「ヒヒッ、ヒヒヒヒ!ドーモはじめまして、ケジメニンジャ=サンとやら。私はサヴェージです」ニンジャ頭巾を突き破って飛び出したサーベルタイガーめいた犬歯をぎらつかせ嘲笑う!

「君ィ!」課長サラリマンが咎めるように言った。「タイミングが遅いんじゃないのかね?出世できないよ?ウチの社員が一人殺されたぞ?」「テメッコラー!」グリズリーヤクザがカウンターの反対側からチャカを課長サラリマンに向けて威嚇する。「どういう事だオラー!ニンジャ潜ませてたのかオラー!」

「当たり前だよ、我々は善良な市民なんだ」課長サラリマンは眼鏡を直しながら吐き捨てるように言う。「貴方がたのようなアウトローとネゴシエイトするにあたって、もしもの事を想定するのは当然です!」「うるっせェー!」サヴェージが大声で叫び、二者を黙らせた。「集中できねぇだろうが!殺すぞ!」

「アイエッ!」課長サラリマンは素早く部屋の奥へ引き下がった。「とにかくそのケジメニンジャとかいうヨタモノをやれ!頼みましたよ!」「言われなくてもやってやるぜェー!」サヴェージは地団駄を踏み、吠えた。「アォォーン!」ケジメニンジャは攻撃姿勢を取った。「……ならば貴様からケジメする」


3

 鮮血に塗れた流しソーメンVIPルームで二人のニンジャは対峙した。毛皮ニンジャ装束のサヴェージは逆手のドス・ダガーを中腰姿勢で構えるケジメニンジャと睨み合う。「てめぇにはな……」サヴェージが懐から素早く取り出したのは、あやしからん、小型注射器であった。「地獄を見せてやるよォ!」

「クスリだぁ?ズバリでもキメるんか」グリスリーヤクザはカウンターの陰から訝しんだ。部屋の隅にうずくまるヨロシサン課長が答える「あれは我が社で研究している強化薬だ。サヴェージ=サンの邪魔にならぬよう隠れていなさい。死にますよ!」「ヒヒヒ!そうだぜェ!」サヴェージは己の頸動脈に注射!

 途端にサヴェージの毛皮ニンジャ装束の下の肉体がはち切れんばかりに膨れ上がり、筋肉の塊めいた屈強な身体となった。「アオーン!」サヴェージは咆哮し、一瞬身をかがめたと思うと、次の瞬間には驚くべき勢いで跳躍していた!「イヤーッ!」天井を蹴り、その勢いでケジメニンジャに襲いかかる!速い!

「イヤーッ!」ケジメニンジャは上方から襲いかかるサヴェージの爪攻撃をドスで受け流す!「アオーン!アオ!アオーン!」涎を撒き散らしながら狼めいた叫びをあげ、サヴェージはさらに空中から連続カカト落としで攻撃!

「ケジメ!」ケジメニンジャはその足を切断しにかかる。風を切って繰り出されるドス!だが足袋を突き破って生えたサヴェージの足の爪は、危険なダガーを弾き返す!「アオーン!」反動で後方へジャンプしたサヴェージは壁を蹴ってふたたび襲いかかる。速い!

「アオーン!」「イヤーッ!」「アオーン!」「イヤーッ!」「アオーン!」「イヤーッ!」飛びかかりながら両手の爪を振り回すサヴェージ、そしてそれをドスで素早く受け流し続けるケジメニンジャ!ゴウランガ!驚くべき高速戦闘だ。カウンター上のタバスコ瓶や絵皿が攻防に巻き込まれ次々に砕け散る!

 互いに一歩も引かぬ攻防!いや違う!身体能力において勝るサヴェージが徐々に押しつつあった。彼が注射した強化薬は狂犬病ウイルスをもとにした危険なパワードラッグ。理性を犠牲に恐るべき戦闘能力と残忍さをもたらすのだ。「アオオオーン!」ドスを受け流した右手の爪がそのまま心臓を狙う!

「殺せーッ!」課長サラリマンが興奮して叫ぶ!しかし!「ケジメ!」「グワーッ!?」ケジメニンジャがドスを構え回転するとサヴェージは突き出した己の手を押さえ後ずさった。指先の爪全てが短く切り取られている!「ケジメ!」ケジメニンジャは竜巻めいて高速回転しながらさらに接近!「グワーッ!」

 サヴェージは右腕を押さえて後ずさった。右腕の肘から先が失われ、鮮血を噴き出す!空中を飛んで流しソーメンの水流へ落ちた右腕先は、金魚と共に汚れた水を泳ぐ!ナムアミダブツ!惨たらしくも滑稽な悪夢的光景!「ケジメ!」ケジメニンジャが回転しながらサヴェージへさらに突き進む!

「ザッケンナコラー!」頭に血をのぼせたグリズリーヤクザがカウンターから身を乗り出し、回転するケジメニンジャにチャカを連射!だがそれは焼け石に水、むしろアブナイ!「ニンジャのイクサに生半可に手出しすべからず」……マッポーの世で忘れ去られた平安時代の金言である!

「やめッコラアバーッ!?」止めようとした金髪ヤクザのこめかみに、ドス回転で弾かれた跳弾が命中して死亡!「アバババッ!」当のグリズリーヤクザも跳弾を受け死亡!「アッ!」さらにニュービーサラリマンも死亡!「アイエエッ!?」課長サラリマンは腰に跳弾を受けうつ伏せに倒れる!「動けない!」

「イヤーッ!」サヴェージは後方回転ジャンプで間合いを一気に離し、戸口に立った。「片腕がどうしたァー!これで決めてやる!」これはサヴェージの切り札!跳躍し空中で爪を構え高速前転!ケジメニンジャを切り裂きにかかる!「ズタ肉になりやがれ!アオオーン!」

「イヤーッ!」ケジメニンジャはひるまず高速横回転を続ける。いや、その回転速度は二倍の速さになった!空中からの縦回転攻撃を高速横回転攻撃がまるでランドリーめいて吸い込む……二者の影が重なり合う!そして、おお、ナムアミダブツ!「アババババッアババババッアババババーッ!?」

 なんたる酸鼻!心臓の弱い読者諸氏は目をそむけていただきたい!竜巻めいたケジメニンジャの回転の中心部からポップコーン機械めいて噴き上がるのは、回転に取り込まれ細切れにされたサヴェージの身体だ!ケジメニンジャのドスは二本、サヴェージは片腕。速度もケジメニンジャが二倍!当然の帰結か!

 爆発四散すらできぬまま、サヴェージは無残な死骸となって散乱した。彼にこれほど恐ろしい死に様を迎えさせるカルマとは何だったのであろうか!?否、ニンジャとは、考えうる限り最悪かつ理不尽な死に様を想定し、覚悟すべきもの。サヴェージとてそうであっただろう……ナムアミダブツ!

「あ……ああ、痛い!動けない!」床に這いつくばった課長サラリマンは呻き声をあげ、死んだヤクザやサラリマンの両手指を恐るべき速度でケジメしていくケジメニンジャを絶望の視線で見上げるのだった。ここは隔離された秘密VIPルーム……もはや助けは望めない。

「なぜ!なぜこんな事をする!」課長サラリマンは泣き声をあげた。ケジメニンジャはゆっくりと近づいた。「助けてくれ」ケジメニンジャは課長サラリマンの前でキツネオメーンを外す。厳めしいY-13クローンヤクザの顔が現れる。彼は言った。「……貴様は俺を生産したプラントに関わっているな」

「プラント……」課長サラリマンは逃れようと這いずった。ケジメニンジャはその頭をつかみ、それを阻んだ。「アイエエエ!」実際、この課長サラリマンはクローンヤクザの取り扱い部署の人間である。それゆえに今回の、エルダーツチノコクランとの折衝だ。このケジメニンジャはどこで情報を掴んだのだ?

「言え。研究施設の所在を。貴様を安らかに殺してからケジメするか。あるいは時間をかけてケジメし、そののち殺すか。貴様の回答次第だ。選べ」「アイエエエ……なぜこんな事を?なぜ?なんの復讐だ?」「復讐?」ケジメニンジャは鸚鵡返しにした。「俺は何者でもない。俺は亡霊。意味を探す。意味を」


◆◆◆


#KEJIMENINJA:
YADAGI@YOROSI_SAN:由々しき問題です
WATANABE@YOROSI_SAN:原因究明と報告遅延理由のレポートがASAPです。そしてカジュタ副部長がセプクします。
YADAGI@YOROSI_SAN:よろしいです
YADAGI@YOROSI_SAN:来週から監査です。兼ねてより、プラントの管理体制が問題視されています。今回の件、さらに大変印象が悪いでしょう。副部長セプクで済むか
WATANABE@YOROSI_SAN:good newsもあります。SUBJUGATOR のβ出来
YADAGI@YOROSI_SAN:それは本当にgood newsなるか
WATANABE@YOROSI_SAN:効いています
YADAGI@YOROSI_SAN:ヨロシ・ジツ本当か
WATANABE@YOROSI_SAN:実際ヨロシ・ジツ成功。映像送信出来

!ダウンロードの進行 ■■■■■□□

「……どうした、んん?」ヤダギはUNIXモニタビジョン上の進行バーが停止状態になっているのを訝しんだ。送信データが大き過ぎるのだろう。苛立たしげに机を指でコツコツと叩いていたヤダギであったが、諦めて席を立ち、壁際のコブチャ給湯器に湯呑みを置いた。

「ケジメニンジャ」は実際重大な問題だ。遭遇者が全て殺されているため監視カメラの断片データで判定する他無いが、先日脱走した(脱走は管理部署内で隠匿されており発覚が遅れた。責任者のモロミ副部長は明日セプクする)クローンヤクザY-13型にニンジャソウルが憑依したと結論づけるしかない。

 クローンヤクザY-13型は今年度の重点商品であり、関係業界の注目も大きい。このような脱走事件などあってはならないのだ。この問題が収集できねばヨロシサンの運営そのものが不安視され、メッキキ・エンパイア社は冷徹に格下げの判定を下す。そうなれば……。

「オッチャです」合成マイコ音声が知らせ、暖かいコブチャで湯呑みが満たされた。「サブジュゲイター……」コブチャを飲みながら彼は沈思黙考する。サブジュゲイターがβ移行された事は実際僥倖だ。ヨロシ・ジツの実用化は半ば絶望視していた。サブジュゲイターこそが今回の問題のソリューションだ。

 ヨロシサン製のありとあらゆるバイオ構造物すべてが遺伝子情報として織り込んでいる「ヨロシDNAコード」に作用し干渉、結果としてそれらバイオ構造物を支配、服従させ、意のままに操作するジツ。それがヨロシ・ジツ。サブジュゲイターはそのシステムを実現するために作られたバイオニンジャなのだ。

 ヤダギ専務はコブチャを飲み干す。動画はまだか。ヤダギはワタナベの手腕をおおいに買っている。やってくれたに違いない。サブジュゲイターを一刻も早く投入し、ケジメニンジャとやらを無力化して、今回の問題をかえってプロモーション機会としよう。そして次の役員会でさらなる高み……ブツン!

「停電!?停電ナンデ!?」突如訪れた闇にヤダギは狼狽した。プラントの非常電源復帰はどうなっている?どうもトラブルが続いていけない。よくない流れがある。「非常復帰ドスエ」マイコ音声が告げた。チカッ、チカッ、ボンボリが明滅し、明かりが「アイエエエ!」

 ヤダギの眼前ワン・インチ距離に、キツネオメーンを被った顔があった!「ドーモ……ケジメニンジャです」「アイエエエエエ!?」ヤダギは己の役員室でブザマに即時失禁し、仰向けに引っくり返った。「ケジメェ?ケジメニンジャ?ケジメナンデ!?今ナンデェ!?」「貴様をケジメする」「アイエエエ!」

「なぜ?どうやってここへ?重役室だぞ!?セ、セキュリティ……」ケジメニンジャは首飾りめいて紐で結んだものを掲げて見せた。ケジメされた人差し指だ!「アバーッ!?ゲボーッ!」恐怖でたまらず嘔吐!ケジメニンジャは役職者の指を使って指紋認証を行いセキュリティを突破して来たのだ!

「いったい!いったいなんのつもりだ!」ヤダギは泡を吹きながら問うた。「俺は亡霊だ」ケジメニンジャは低く答えた。「俺は俺が誰なのか知らねばならない」「お前はクローンヤクザだ」ヤダギは言った。「こんなのはおかしいぞ。クローンの分際で」「違う。俺は誰だ」「そんな事……!」「俺は、誰だ」


4

「俺はクローンヤクザY-13型。俺はこのプラントで生み出された。貴様ら人間とは 異なるバイオ血液が流れ、製造から三年ですべての免疫力を喪失して遅かれ早かれ死ぬよう、あらかじめ遺伝的にプログラムされている」「な……な」ヤダギは絶句した。「一体これは」「思いのほか頭が回ると驚いたか」

 埋め込み式サングラスと厳めしいへの字口で、ケジメニンジャの心中は読み取れはしない。ケジメニンジャはヤダギを締め上げた。「俺は鯉だ。情報とケジメの滝を遡り、今こうして貴様の元まで辿り着いたのだ、クローンヤクザ設計者ヤダギ・バンゲロウ。……だがまだ次の滝がある」

「何を言ってアイエエエエ!」「まだまだケジメする指は残っている」ケジメニンジャはヤダギの右手小指をたやすく切断し床へ投げ捨てた。ナムアミダブツ!「アイエエエエ!」ヤダギは再失禁しながら、「こんな狼藉は許可されない!ありえない!」「そう、あり得ない」ケジメニンジャは頷いた。

「後天的な条件付けプログラムが製造直後の全てのクローンヤクザに施される。所持者に対し機械めいて従順な振る舞いを取る奴隷として万全に調整されたのち、晴れてプラントから出荷される。それが我々だ。反逆などあり得ないのだ」ケジメニンジャは淡々と説明した。「よく学んでいるだろう」「……!」

「電気ショック」「アイエエエエ!」「グレア(眩輝)照射」「アイエエエエ!」「断続的なノイズ」「アイエエエエ!」「洗脳映像」「アイエエエエ!」一言一言、プログラム内容を呟きながら、ケジメニンジャはヤダギの片手の指すべてをケジメした。「オートメーション化された行程……」「ア、アバッ」

「俺がその万全の洗脳を脱したのが先か。ニンジャソウルが憑いたのが先か。それは俺にもわからぬ」ほとんど独り言のようにケジメニンジャはヤダギに言い聞かせる。「だが原因が何であれ、俺は今ここにこうしてケジメニンジャとして存在する。そして貴様をケジメするのだ」「アイエエエ……望みは何だ」

「俺はどのみち三年で死ぬ。そのように作られたからだ。貴様らにな」「……!」ヤダギは血を流す右手を必死で押さえた。ヤダギはヨロシサンのクローン技術にずっと関わってきた。クローンヤクザのコンセプトは彼の発案だ。実際Y-11までは彼自身が現場で設計を行ったのである。

 その貢献と愛社精神が認められ、役員に昇進したというのに、その栄光を味わう間もない、相次ぐトラブル……脱走事故……自分が直接関わっていないバイオニンジャの集団脱走すらも火の粉が被さり、そしてこのケジメニンジャ……!ヤダギの目から悔し涙が溢れた。「ブッダ……!」

「感傷か」ケジメニンジャは言った。「理解できる。言わば己の作品に牙を剥かれた衝撃は計り知れぬのだろうな。俺にも涙腺はある。本来的には涙を流すこともできるのだろう。脳の構造も人間のそれと変わりはしない。だから俺にも感傷は備わっているのだろうな」その声音はぞっとするほどに虚無的だ。

「俺は誰だ」ケジメニンジャは再び繰り返した。「貴様ならば、この問いに答えられよう」「……!」ヤダギは理解した。オリジナルの所在を知ろうというのだ。このクローンヤクザの元になったヤクザ。遺伝子提供者の所在を。「し、知ってどうする。何の意味がある。お前の寿命は延びんぞ」

「寿命?なぜ寿命の話になる」ケジメニンジャは言った。「さしたる理由は無い。俺が生まれ出でた事に理由はあるか?貴様が生まれ出でた事には?……これは単なるケジメだ。どの道、俺は長くない。これはケジメだ。それとも、知的好奇心とでも言えば納得するか」「アイ……アイエエエ……」

「言え。言えばひと思いにカイシャクしてやる。言わねば殺す前に時間をかけてケジメする。じっくりとだ。俺は急いでいない」ケジメニンジャは屈みこんで言った。「……ゼイモン」震え声でヤダギは告げた。「ドゴジマ・ゼイモン。レジェンドヤクザ……生きておるとすればかなりの高齢だ。所在は知らん」

「ドゴジマ・ゼイモン」ケジメニンジャは繰り返した。ヤダギは咳き込んだ。「そうだ。今は亡きクラン……キルストームヤクザクランのアサシンだった男だ。総理大臣を殺した事もあるレジェンドヤクザ……すべてのクローンヤクザは彼の提供した遺伝子から作られる。今やかなりの高齢。引退している筈」

「貴様は嘘を言っていない」ケジメニンジャは低く言った。「カイシャクしてやる。ハイクを詠め」「ウウ……」ヤダギは背中を丸め、呻いた。「昇進したが暁に死にますヨロシサン」「……イヤーッ!」「アバーッ!」


◆◆◆


 キャバァーン!「オットこれは!これはかなりタイトだ!」キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!「スゴイ!チャンピオンのタッチ速度このままいけば新記録です!」キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!「アバーッ!?」「アッだめだ!アーッ!これは!……コマーシャルです!」

 テレビの騒音でケジメニンジャは覚醒した。「アナタ起きたのネー」女は床に足を延ばしており、オカキを袋から手づかみでボリボリと食べながら、ケジメニンジャを振り返った。袋を投げ捨て、ケジメニンジャにしなだれかかった。「ネーまた呼んでくれてアリガトネ」

「見た夢を少し覚えている」「ヘースゴーイ」女はケジメニンジャの太腿をまさぐりながら適当な相槌を打った。「アナタとても本当ステキよ……まだ時間あるワヨ」ケジメニンジャは女に構わず立ち上がり、ボトル入りの濾過水を飲んだ。「記憶にない映像だ。夢とは不思議なものだ」

「オモシローイ」女も立ち上がり、後ろからケジメニンジャに抱きついて、両手を前にまわした。「ネーどんな夢見たのネ?」「海だ。俺はそれを見ている。夜の海だ」「フーンスゴーイ」「波が砂を洗う。足元に泡。風だ。俺は独り、立っているのだ」女は指をケジメニンジャの下腹から胸板へ這わせていく。

「ネーもっとシマショヨー、ネー」女はケジメニンジャの首の後ろを舐め、指を胸板から頬へ這わせる。その愛撫が訝しげに止まった。「……ネー、泣いてるの?」「泣いている」ケジメニンジャは無感情に繰り返した。「そうか。泣いている。涙だ」「ネー大丈夫?」「不思議なものだ」


◆◆◆


 地面に敷き詰められたモミジを踏みしめ、彼は黄金色のプライベート庭園へ足を踏み入れた。その背後には首を裂かれて死んだ警備ヤクザの死骸がある。狂ったように舞うモミジが雪めいてその死骸に降り積もり、あっという間に覆い隠してしまう。そしてモミジをかきわけるように顔を出すタケノコ達。

 ケジメニンジャは前方を注視した。人工的に作られた川と石の橋。キョートらしい、奥ゆかしい庭園技術だ。それら川や橋に実用的な意味は無い。だが、それこそがワビである。日本の庭園とは森羅万象のミニチュアであり、それ自体が小型の人工宇宙を表現している……。

 残念ながらケジメニンジャはそのような趣を理解はしない。警備ヤクザによって閉ざされたこの庭園を訪れた目的は明確だ。前方の庭園の中、モミジ降り積もるテンプル風の小さな建物の中に、彼の目指す存在がいる。

 ケジメニンジャのニンジャ感覚はテンプル風建物の周囲の生命存在を探った。反応無し。手薄すぎるほどであるが、レジェンドヤクザといえど、所詮は引退した存在という事であろうか。彼はそれぞれの手に逆手でドスを構え、姿勢を低く下げてしめやかに前進した。

「イヤーッ!」高床へ一跳びに跳躍し、回し蹴りでショウジ戸を破壊したケジメニンジャは有無をいわさず室内へ押し入った。ダルマのウキヨエが描かれたフスマだ。ケジメニンジャは両手でフスマを開け放った。その先の部屋、彼は、チャブの上でアグラ・メディテーションする男を発見した。

 ゼイモン?いや違う!濃緑と金の二色、渦巻くような奇怪な刺繍を施された装束に身を包んだそのニンジャは、アグラ・メディテーション姿勢のまま目だけ開いてケジメニンジャを見据えた。「ドーモようこそ。ケジメニンジャ=サン。お会いできて光栄です。……サブジュゲイターです」

「イヤーッ!」ケジメニンジャは反射的に後方へバック転して間合いを取り、着地の勢いで隙無くオジギした。「ドーモ、はじめましてサブジュゲイター=サン。ケジメニンジャです」サブジュゲイターは不敵にもアグラ姿勢をいまだ崩さぬ!「ケジメニンジャ=サン、残念ながら私はゼイモンではありません」

「では貴様をケジメする」ケジメニンジャはドス・ダガーを構えた。サブジュゲイターは引き続きチャブの上でアグラだ。「今やおわかりと思いますが、貴方が閲覧したであろうドゴジマ・ゼイモンの情報はフェイクの餌です。ここはドゴジマ・ゼイモンの邸宅ですらありません」「……」

「ヨロシサンは貴方が考えるより老獪です。ヤダギ=サンの死亡状況はASAP速度で社内IRCネットワークに共有され、音声監視カメラ映像の会話内容をもとに、ドゴジマ・ゼイモンを探すという貴方の動機を餌にした計画が発案されました。ネットワーク上に偽のレジェンドヤクザ情報が放たれました」

「そうして、貴様が俺を待ち構えていたという事だな。貴様がこの俺を倒すと?」「ハイそうです」サブジュゲイターはアグラしたまま頷いた。「貴方が私に勝つことは物理的に不可能です」「イヤーッ!」ケジメニンジャが仕掛けた!身を沈めてチャブへ突進!下からチャブを跳ね上げる!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」チャブを跳ね上げられたサブジュゲイターはようやく動いた。両脚を180度開脚して垂直ジャンプし、チャブごとひっくり返される事を回避!「イヤーッ!」ケジメニンジャは両手のドス・ダガーを水平に構え、高速横回転しながら空中のサブジュゲイターへコマめいて滑る!

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」180度開脚姿勢のサブジュゲイターはそのまま空中で激しくパンチを繰り出し、回転するケジメニンジャのドス攻撃を丁寧に弾き返してゆく!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

 ゴウランガ!ケジメニンジャの致死的回転攻撃を前に一歩も譲らぬサブジュゲイターのカラテ恐るべし!着地後もサブジュゲイターは嵐の如き両手パンチ連打をやめず、ケジメニンジャの回転攻撃を弾き続ける!なんたるニンジャ器用さ!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

「イヤーッ!」ケジメニンジャは高速回転攻撃からおもむろに後ろ回し蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」サブジュゲイターはその脚をガッチリと抱え込み、後ろへ投げ飛ばす!タツジン!後方へ投げ飛ばされたケジメニンジャはフスマを破壊しながら隣の部屋へ流麗に着地!「ケジメ……!」

 サブジュゲイターは腰に手を当てて直立した。「なぜ私が貴方のカラテ戦闘に付き合うか、お分かりになりますか?」ゴキリ、ゴキリと音を立て、首をストレッチする。「この邸宅内には監視カメラが複数設置されています。我々の戦闘……否、私の戦いぶりがモニタされています」

 サブジュゲイターはやや身を低くし、両手を前に突き出す構えを取った。「このイクサの決着は既に決まっている。ですが私はただ貴方に勝つだけでは許されない。もう少し貴方とカラテする必要があるのだ」「イヤーッ!」ケジメニンジャが壁の柱めがけて回転跳躍した!柱を蹴り、三角飛びで襲いかかる!

「イヤーッ!」回転しながら竜巻めいて飛来するケジメニンジャ!サブジュゲイターは瞬時に身を床へ投げ出し、仰向けになってケジメニンジャの跳躍攻撃の下をくぐり抜ける。そのまま仰向け姿勢で、上を通過するケジメニンジャの脇腹を蹴り上げる!「イヤーッ!」「グワーッ!」

 ケジメニンジャは脇腹を蹴り上げられ、天井へ!「イヤーッ!」そのまま天井を蹴って真下へ跳ね返り、仰向けに寝るサブジュゲイターへ降下攻撃!「イヤーッ!」「イヤーッ!」サブジュゲイターはそのままゴロゴロと転がりながら隣室まで退避!パンキドー由来の回避動作、ワーム・ムーブメントである!

 それを追ってすり足で前進するケジメニンジャへ、サブジュゲイターはそのまま転がりながらスリケンを連続投擲!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ケジメニンジャは素早く両手のドス・ダガーを振り回してスリケンを全て弾き返す!

「イヤーッ!」さらにスリケンが一枚ケジメニンジャめがけて飛来。ケジメニンジャはそれをドスで弾き返す。だが、ウカツ!それはスリケンめいてスリケンではない!ドスが当たるとその炸裂弾は細かいスパイクを周囲に飛び散らせる!「グワーッ!?」「スリケン投擲テスト完了!」

 サブジュゲイターは両脚を振り回すウインドミル動作をしながら立ち上がると、腰に手を当てて再び首をゴキリゴキリとストレッチした。「思えばレジェンドヤクザのクローン身体にニンジャソウルとは実際驚異的要素。ですがそのスリケンは指で挟み取るかブリッジで避けるべきでした」

「イヤーッ!」ケジメニンジャは果敢に高速回転攻撃でサブジュゲイターに突撃!全身に受けた炸裂弾の傷口から細かいバイオ血液の飛沫が飛び散る。そして竜巻めいたドス・ダガー攻撃!「イヤーッ!」サブジュゲイターは冷静に前蹴りを繰り出す。この攻撃に対しては前蹴りがリーチで優位!

 だがその時だ!にわかにケジメニンジャの回転速度が増し、軌道が不規則に揺れて前蹴りをすり抜けた!「何、グワーッ!?」次の瞬間にはケジメニンジャは既にサブジュゲイターの後ろにいた。サブジュゲイターは咄嗟に左手を掲げて防御したが、その代償に左手中指と薬指が一瞬でケジメ!鮮血が噴き出す!

「イヤーッ!」振り向きざまの回し蹴りをケジメニンジャは身を沈め回避!そのまましゃがみ高速横回転で空気を切り裂きサブジュゲイターの懐へ潜り込みにいく!「イヤーッ!」これは実際致命的攻撃!だがサブジュゲイターは蹴りの勢いで背を向けバック転!「イヤーッ!」ケジメニンジャを飛び越す!

 ケジメニンジャを大きく飛び越え着地したサブジュゲイターはそのまま三連続バック転を繰り出し、背後のショウジ戸を破壊してエンガワまで退がり、間合いを取る!そしてやにわに右手をケジメニンジャへ向けて付き出した!「ここまでだ!イヤーッ!」「グワーッ!?」

 サブジュゲイターが右手を突き出すと、ケジメニンジャは突風に吹かれたように不自然にたたらを踏んだ。「ヌウッ!?」「何と、一度では屈しきらぬか!イヤーッ!」サブジュゲイターは付き出した右手を下へ振り下ろす。「グワーッ!?」ケジメニンジャがいきなり崩れるように両膝をつく!

 ケジメニンジャは立ち上がろうともがくが、何らかの不可視のプレッシャーに支配され、それがかなわぬ!サブジュゲイターは右手を振り上げ、振り下ろす!「イヤーッ!」「グワーッ!」ケジメニンジャは両手を床についた。四つん這いだ!「……イヤーッ!」「グワーッ!」ケジメニンジャはドゲザした!

「貴方を服従させる(サブジュゲイト)。これがヨロシ・ジツです、ケジメニンジャ=サン」「……!……!」ケジメニンジャはドゲザしたまま動けない。「貴方の遺伝子が、全ニューロンが、この私への反抗を許しません。そのようにできています」サブジュゲイターは荒く息を吐いた。

「このジツはフドウカナシバリ・ジツの亜種ですが、実際違う。ヨロシDNAを持つ者を無条件に服従させるジツだ。ヨロシサンが特許を取っています。馬鹿げた話ではありますが」「……!」ケジメニンジャをドゲザさせたまま、サブジュゲイターは室内を歩きまわり、ケジメされた自分の二本の指を拾った。

「実際アブナイところだった。決して私は遊びすぎたわけではない。しかしながら貴方に勝ち目は無かった。残念ながら。この指も接合してもらいましょう。貴方の行いは何もかも無駄になってしまいますね」死線に触れたアドレナリン分泌により、サブジュゲイターは饒舌だった。「……!」

「立ちなさい」サブジュゲイターは命じた。ドゲザしていたケジメニンジャは立ち上がった。「オメーンを取れ」ケジメニンジャはキツネオメーンを外した。クローンヤクザY-13の青ざめた顔があらわになる。「なるほどクローンヤクザです。驚いたものだ」「……」

「ヨロシ・ジツはカナシバリめいた一時的な拘束に留まらない」サブジュゲイターはケジメニンジャの顔に右掌を被せた。ケジメニンジャは抵抗すらできぬ!「これは言わば『上書き』です。貴方には使い道があると判断されたわけです。このジツが貴方にどんな苦しみをもたらすか、私にはわかりません」

 サブジュゲイターは右掌に力を込めた。アイアンクローめいてケジメニンジャの顔を鷲掴みにする!「……イヤーッ!」ケジメニンジャの反応は激烈であった。電気ショックを受けたように激しく痙攣!地獄めいて叫びだす!「グワーッ!グングワーッグワーッグワァァーッ!」ナムアミダブツ!「グワーッ!」


5

 ケジメニンジャは己の足元に打ち寄せる冷たい水を知覚した。打ち寄せる波である。彼自身と砂の他には地上に何もない。真夜中の空はオブシディアンめいて荘厳であり、ただひとつ黄金の月が高輝度LEDボンボリめいて輝いていた。

 いや。月ではない。まるくないのだ。あれは黄金の立方体だ。ゆっくりと回転する不可思議なオブジェクトをケジメニンジャはただ見上げるのだった。説明のつかぬ憧憬を掻き立てる、超自然の存在だ。あれは何だろう?そしてこの夢は?そう、夢である、ここに立つ彼はビョウキトシヨリヨロシサンビョウキト

 シヨリヨロシサン静謐な光景をビョウキトシ汚すヨリヨロシサンビョウキヨロシサン製薬のトシヨリヨロシサン社紋ビョウキトシヨリヨロシそしサンビョウキてトシヨリヨロシサンビネンブツめいたョウキトシヨリヨロシサンビョウキトシフレーズが邪悪にヨリヨロ意識を塗りシサンビ潰ョウキすトシヨリヨロシ


◆◆◆


「アバーッ!アッババババーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「アバーッ!アバーッ!アバーッアバーッアバーッ!」「イ……」「横からすまんが、もう何も出ないんじゃないかね?」戸口のガンドーが言うと、ニンジャスレイヤーは振り上げた右拳を中途で止め、振り返った。「……」

「そのう……何だ、時間も無駄だしよ」ガンドーはニンジャスレイヤーから目を逸らし、肩をすくめた。「気は済んだだろ」「……」廃墟ビルのガラスの失せた窓から屋外ガスライトの灯りが入り込み、荒く呼吸するニンジャスレイヤーの横顔と、椅子に縛り付けられた瀕死のニンジャを照らす。

「……」ニンジャスレイヤーは椅子に縛り付けられたニンジャ……ザイバツ・シャドーギルドのモスマンに背を向け、深く息を吐いて呼吸を整えた。そして、「イヤーッ!」振り向きながらの回し蹴りをモスマンの頭部へ叩き込んだ。「アバーッ!」ジゴクめいた蹴りはモスマンの頭部を体から刎ね飛ばした。

 直後、拷問を受けたその身体は椅子ごと爆発四散、片目を抉られた無残な頭部は天井にぶつかって跳ね返り、ガンドーの足元に転がった。「ウープス」ガンドーは両手を広げて首を振った。「ま、下衆な奴だったが、あとはサンズ・リバーのエンマ・ニンジャだかカロン・ニンジャだかに任せりゃイイさ」

 複眼化された眼を持ちバイオ毒鱗粉で攻撃するモスマンは手こずる相手だった。その戦闘能力もさることながら、無実の市民を毒で狂わせ喜ぶさまをことさらに見せつけた事が、ただでさえ拷問や見せしめの残虐行為を躊躇わないニンジャスレイヤーの苛烈さに拍車をかけた結果となった。インガオホー!

「ザイバツ野郎が出てくるとは」ガンドーが言った。「ヨロシサンとザイバツは実際チンチン・カモカモ(註・親密、intimateの日本的俗語表現)関係って事だな。想像以上に一心同体めいてやがる。面倒になるかも知れんぜ」「渡りに船だ」ニンジャスレイヤーは呟いた。

 現在、ニンジャスレイヤーとガンドーが追っているのは、偶然に断片情報を入手した、ヨロシサン製薬による「スゴイナム計画」……アンダーガイオン第三レベルへ、空気清浄システムを利用して正体不明の薬剤ガスを充満させるという大規模人体実験計画だ。放置すれば恐るべき事態を招くであろう。

「ザイバツが絡んで来るほどに、私にとって手間の節約となる。いずれ根絶やしにする相手だ。情報を引き出すニンジャもそれだけ増えるというもの」「引き出す……」ガンドーはモスマンの首を見下ろした。「まあ、そう言う事になるのかね」「そうだ」

 ガンドーは懐中時計を取り出した。「そろそろいい時間だぜ。時間つぶしもお終いだ。オサラバといこうや」ニンジャスレイヤーは頷いた……まるでその頷きをスイッチとしたかのように、ボンという破裂音に続いて、廃墟ビルが真っ白の閃光に包まれた。「「グワーッ!?」」

 ウカツ!閃光弾が耳鳴りと共に網膜へ残像を焼き付け二者を怯ませる中、「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」ヤクザスラングが飛び交い、一階エントランスと上階から大量の侵入者が殺到する!ニンジャスレイヤーのニンジャ自律神経はすぐに閃光弾の目くらましから回復するが、ガンドーはまだだ!

「「「ザッケンナコラー!」」」カタナを構えたクローンヤクザ達である!二人の居場所がトレースされたのか?どうやって?「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは一度に六枚のスリケンをクローンヤクザめがけて投げつける。「「「グワーッ!?」」」第一波の三人は両目をスリケンが貫通し全員死亡!

「「「スッゾコラー!」」」階段を第二波のクローンヤクザが駆け下りてくる。クローンならではの一矢乱れぬ動作でチャカを構える!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは回転しながらスリケンを投擲!タツマキ・スリケンである!「「「グワーッ!?」」」第二波の五人の脳天をスリケンが貫通し全員死亡!

「オイオイオイ!参ったな!」閃光ショックを脱したガンドーが49口径マグナムの2丁拳銃をクロスで構え、正面入り口から突入してくる第三波の四人を迎撃!BLAMBLAM!BLAMBLAM!BLAMBLAM!BLAMBLAM!「グワーッ!?」「アバッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」

 恐るべき破壊力の大口径銃弾がクローンヤクザの身体を豆腐のように破壊してゆく!さらに裏口から入って来る第四波!「大繁盛だなァ。今日はもう閉店だぜ」弾丸をまとめて空中へ投げ、リボルバーから薬莢を排出するとともに、落下してくる弾丸をそのまま受けてリロードする。なんたる曲芸めいた器用さ!

「「「ザッケンナコラー!」」」今度は三人!ガンドーは上階からの別の突入部隊に対応しにゆくニンジャスレイヤーを横目に、淡々と引き金を引いてゆく。BLAMBLAM!BLAMBLAM!BLAMBLAM!「アッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」

「何?」ガンドーは目を見開いた。一人仕損じた?イレギュラーな動きで弾丸を回避したクローンヤクザがガンドーめがけ跳躍する。髪型、サングラス、ダークスーツ、全て同じだ、そして実力も同じはず。だがこの動きは?そしてカタナではなく、両手に持ったドス・ダガー……?

「ウオオッ!?」ガンドーはタツマキめいて回転しながら飛来するクローンヤクザに発砲した。だが弾丸が弾かれる!?「イヤーッ!」回転するクローンヤクザの両手のドスが斬りつけにくる!咄嗟に防御のために掲げた49マグナム2丁の銃身があっけなく切断される!「な……」

 ガンドーのニューロンが激しく信号を流し、時間感覚が圧縮されて、回転するクローンヤクザが、己の動きが、ガンドーを今まさに切り裂きにくる二回転目のドス斬撃が、泥のようにスローモーションになる。どこで間違えた?どこで……?

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ガンドーの目と鼻の先に稲妻めいて滑り込んだ影がインターラプト、致命的攻撃をブレーサー(手首装甲)で受け流した!「ヌオオッ!?」ガンドーは倒れこみ、そのままゴロゴロと転がってデッドリー範囲から退避する。救い主は上階を片付け戻ったニンジャスレイヤーだ!

「イヤーッ!」三回転目の斬撃がニンジャスレイヤーに襲いかかる。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはショートフックを瞬時に回転する胴体へ叩き込む。「グワーッ!」イレギュラーなクローンヤクザは衝撃で後方へ吹き飛ぶが、空中で体勢を立て直し、柱を蹴ってニンジャスレイヤーへ再度跳びかかる!

「イヤーッ!」飛来するイレギュラー・クローンヤクザが激しく回転!ニンジャスレイヤーは側転して回避、スリケンを八枚連続で投擲!「イヤーッ!」「イヤーッ!」クローンヤクザは着地しても回転を停めず、その勢いでスリケンを全て弾き返す。しかも回転しながらニンジャスレイヤーへコマめいて迫る!

「オイオイオイ、まるでこりゃあ……」ガンドーは言いかけた。まるで、ニンジャ?クローンヤクザが?ニンジャ……?「「「ザッケンナコラー!」」」ガンドーは正面入り口を振り返った。さらなるクローンヤクザ集団だ。ガンドーは銃身を斬られたリボルバーを一瞥する。「実際ヤバイか?」

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは垂直にジャンプして回転斬撃を回避。勢い良く跳び上がり天井を逆さまに蹴って跳ね返る。これは奇しくも平安時代においてブル・ヘイケがベンケイ・ニンジャのムテキ攻撃を破ったセオリーと同様である。回転するコマは真上から押さえて止めるべし!

 ニンジャスレイヤーの真上からの降下ストンピング!「グワーッ!?」イレギュラー・クローンヤクザは咄嗟の回避を試みるが、高速回転の慣性で完全回避は間に合わぬ。脳天を踏み潰される事はまぬがれたものの、左肩に重い一撃を受けて姿勢を崩し、スピンしながらダウン!

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはさらなる追撃を加えるかわりに、回転ジャンプで飛び離れると、ガンドーをいきなり抱え上げた!「オイオイオイオイ!一体何を……」ニンジャスレイヤーは相撲の米俵かつぎセレモニーめいてガンドーを肩の上に抱え、階段を駆け上がる!「オイオイオイ!」

「ザッケンナコラー!」正面入り口からの侵入ヤクザが一斉にチャカを発砲!ニンジャスレイヤーは階段を駆け上がる。「上かぁ?どうする気だ」もがきながらガンドーが問う。「屋上だ。跳ぶ!」ニンジャスレイヤーは即答した。「オイオイ、下ろしてくれよ」「今のオヌシは戦力外だ。大人しくしておれ!」

「スッゾコラー!」屋上へ上がる階段に三人のクローンヤクザが立ち塞がる。だが構えたチャカの引き金が引かれるより早くニンジャスレイヤーが赤黒い風めいて駆け抜けると、三つの首がコロナビールのキャップめいてスクリュー回転しながら刎ね跳び、階段を転がり落ちた!

「ザッケンナ……グワーッ!?」「ナンオラー!?」グワーッ!?」下からニンジャスレイヤーを追って階段を上がってきたクローンヤクザ達が転がる首につまずいて将棋倒しになり、なだれ落ちる。それを事も無げに飛び越え、さらに追うのは、体勢復帰したイレギュラー・クローンヤクザだ!

「イヤーッ!」階段の中程から回転ジャンプを繰り出したイレギュラー・クローンヤクザは、廃墟の四角い屋上スペースに勢いよくエントリーした。腕組みして待ち構えるのはニンジャスレイヤー。その赤黒いシルエットはアンダーガイオンのおぼつかない照明を受けて不吉に浮かび上がっていた。

「ドーモ……ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーはゆっくりとアイサツした。その奥でちょうど、助走をつけたガンドーが屋上の淵でジャンプし、隣接するビルのネオン看板、ピンク色の「ハナミはまずローンして」にしがみついたところだった。「後でな!ニンジャスレイヤー=サン」「うむ」

 イレギュラー・ヤクザはなかば本能的に拳を顔の前で組み合わせ、アイサツを返した。「ドーモ。……」ニンジャスレイヤーは彼を凝視し、名乗りを待った。「……俺は……」イレギュラー・ヤクザは、言葉を押し出すように口にした。「俺は。ケジメニンジャです。貴様は排除の対象だ。貴様をケジメする」


◆◆◆


 キョート城、「円卓の間」。

 円形のその広間は壁沿いの八体の木彫りブッダ聖戦士像の足元に立てられた何万もの蝋燭が照明であった。頭上には黒曜石を切り貼りした天の川モチーフのウキヨエ・ステンドグラスが張られており、揺らぐ炎で照らされた影が神話光景の絵図の上で不規則に踊る。

 蝋燭の火を世話するのは二人のオイランの役目だ。宝石を散りばめた首飾りやアンクレット、カンザシを除き、一糸纏わぬ全裸である。美しいが死んだ目をした彼女らは、ただこの部屋と、隣接する詰め所の間を移動する事しか許されない……生涯にわたって。

 円卓のザブトンに正座するニンジャ達の顔は、この広間の巧妙に計算された照明角度によって首から上が覚束ない影となっている。彼らはグランドマスター位階の恐るべき手練れであり、この広間の名にならって「円卓」と称される。出席者は五人。ザブトンの数から、ある程度欠席者がいる事が推察される。

 円卓には人数分の液晶モニターが置かれ、そこには、ヨロシサン社員の手元のハンドヘルドUNIXの画像と同期した、ある光景を映し出している。当然ヨロシサンの社員は円卓に座する事を許されず、黄金のフスマの隣で、犬めいてみじめに座っているのだ。

「さきの映像。廃墟内に死んだニンジャの首が映ったな」一人が思い出したように言った。「ギルドのニンジャだ。モスマン=サンだったか、あれは」彼の名はイグゾーション。「モスマン?誰だ?」隣に座するニンジャ、ケイビインが首を傾げる。「なんにせよ、目ざとい事だ、イグゾーション=サン」

「モスマン=サン?」ロード・オブ・ザイバツの側近、パラゴンが聞き咎めた。「何故そこに?ヤツが殺したのか?ニンジャスレイヤーが?たった今か?何の為に?ナンデ?」ヨロシサン社員を見る。「お前らの預かりだったな、モスマン=サンは」「エッ!ええ、え、はい、左様でございますが……」

 ヨロシサン社員はハンカチで汗を拭った。「モスマン=サンが?こ、殺されたので?そんな!わ、私も皆目見当が……」「ザッケンナコラー!」パラゴンはいきなり灰皿を社員に投げつけた。「アイエエエ!」

「理由も無くザイバツ・ニンジャがこんな小便くさい廃墟で偶然事故死するかコラー!スッゾコラー!」「アイエエエ!」サラリマンは薄っすらと失禁しながら弁明する。「し、調べて報告致します!必ずや!私どもは、その、単に、ニンジャスレイヤーの足取りをトレスする事に成功して、余興をですね……」

「そうだ余興!余興だ」サラマンダーが円卓を威圧的に叩いた。「くだらん話は後でいい!モスマン?犬の餌にでもしろ。俺はニンジャスレイヤーの戦いぶりを見に来たのだ」「はい、断じて!断じてすぐに!」社員はドゲザを繰り返した。パラゴンは舌打ちし、座り直した。

 液晶モニターには小型自動浮遊カメラからIRC送信されてくる映像が映っている。廃墟の四角い屋上でにらみ合うクローンヤクザとニンジャスレイヤーの姿が。「クローンヤクザはこの一人で最後だ。他は皆死んだな。打ち止めだ」ダークドメインが呟く。「オヌシも目ざといの!」ケイビインが口を挟む。

「……何?」他のニンジャが映像にあれこれコメントをつける中、イグゾーションが小型IRC通信機を耳に当てて立ち上がった。「どうした?」とケイビイン。イグゾーションは詫びる。「ちょっとしたインシデントだ。中座させてもらうが、お詫びに今度スシを奢るから、今日の内容を教えてくれ」

「ニンジャスレイヤーが実際目覚ましく戦えばの話だがな」ダークドメインは無感情に言った。そしてヨロシサン社員を睨み、「つまらなければこの下郎はケジメだ」「アイエエエ!」「ハハハ違いない。ではオタッシャデー!」イグゾーションはしめやかに退席した。

 退出するイグゾーションを、パラゴンはじっとりと陰湿な疑いの視線で見送る。ザイバツの高位存在の間でも水面下では様々な思惑が飛び交っているようだ……。「さあ、気を取り直して、いよいよ仕掛けますから!」ヨロシ社員が言った。ダークドメインは鼻を鳴らす。「ニンジャにクローンヤクザごときが」

「そこです!」ヨロシ社員は勢いづいた。「クローンヤクザであってクローンヤクザでない……このY-13にはニンジャソウルが憑依しているのです」「何?」「バカな」グランドマスター達はどよめいた。「そんな例は聞いた事がないぞ」パラゴンは唸った。「赤い血も流れていない奴隷人間が」

「あのクローンヤクザはいわばイレギュラーでありました。皆様の懸念もごもっともで」ヨロシ社員はハンカチで汗を拭った。「制御できるのか。仮にもニンジャ」ダークドメインが言った。「お前の所のバイオニンジャどもの管理も随分ずさんだ。なぁにが、サヴァイヴァー・ドージョーだ!」

「ごもっとも!」ヨロシ社員はへつらった。「それらセキュリティ上のリスクを克服するテクノロジーを今回開発しましてございます。もはやバイオ生命体のイレギュラー行動など万に一つも無い!このクローンヤクザも当初イレギュラーであった所、新テクノロジーによって完全に抑制する事が出来まして!」

 ヨロシ社員はまくし立てた。「今まで以上に、より従順、より安全、より複雑な局面で運用可能な我が社のバイオ戦士が、輝かしいザイバツ・シャドーギルドの繁栄にお力添えを申し上げます!ザイバツ・シャドーギルド!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」


◆◆◆


「イヤーッ!」アイサツ完了の瞬間に仕掛けたのはニンジャスレイヤーだ!木人拳めいた目まぐるしい乱打がケジメニンジャを襲う!ケジメニンジャは二本のドスを防御に回さざるを得ない。厄介な回転攻撃に入る前に優位を得ようという戦術だ!

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」目にも留まらぬ両者の両手!互角!いや、ニンジャスレイヤーが長じた!「イヤーッ!」防御をくぐり抜け、ショートアッパーカットがケジメニンジャを捉える!「グワーッ!」

 ケジメニンジャがドスで反撃!「イヤーッ!」ナムサン、しかしタツジン同士のワン・インチ距離戦闘においては、武器よりも素手が実際小回りが利き有利!ニンジャスレイヤーは手の甲でドスを跳ね上げて反らし、マネキネコ・パンチでケジメニンジャの顎を打つ!「イヤーッ!」「グワーッ!」

「イヤーッ!」ケジメニンジャの逆の手がドスを繰り出し反撃!だがニンジャスレイヤーはその手を手甲で打ってガード!頭突きをケジメニンジャの鼻先に叩き込む!「イヤーッ!」「グワーッ!」思わずたたらを踏むケジメニンジャにニンジャスレイヤーは容赦無く突き進む!

「クローンヤクザのオヌシが何故ニンジャとなったかは知らぬ。イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは右肩にチョップを叩き込む!「グワーッ!」ケジメニンジャが右膝を着く!「知る必要も無い。ニンジャ殺すべし。イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは左肩にチョップを叩き込む!「グワーッ!」左膝も着く!

 ニンジャスレイヤーは瞬時に身を沈めた。ケジメニンジャは咄嗟に眼前でガードの為にドスをクロスしようとする、だが間に合わぬ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」後ろへ宙返りしながら蹴るジュー・ジツ奥義、サマーソルトキックがケジメニンジャを蹴り上げる!空中へ打ち上げられるケジメニンジャ!

「ヌウゥーッ!」ニンジャスレイヤーは両足を大きく開いて腰を落とし、スリケンを構えた。上半身に縄のような筋肉が浮き上がる。ゴウランガ!これは奥義ツヨイ・スリケンの準備動作!しかも、おお、見よ!スリケンをそれぞれの手に持ち、クロスさせて構えている!二枚!二枚同時に投げようというのか!

 空中のケジメニンジャはどうか?ナムサン!彼とて死ぬのを無力に待つようなサンシタではない。己の身をよじり、自らの力で横回転を開始!瞬く間にその身体は剣呑なドス・ダガーのタツマキとなる!「イヤーッ!」

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは二枚のスリケンを同時投擲した!ダブル・ツヨイ・スリケン!反動風圧が屋上の床を吹き荒び、二枚のスリケンはDNA螺旋めいた絡まり合う軌道を描いて、空中のケジメニンジャへ襲いかかる!「イヤーッ!」迎え撃つケジメニンジャの回転が加速し音速に近づく!

 スリケンが空中のケジメニンジャを捉える!ギャリギャリギャリ!不可思議な摩擦音が鳴り響きセンコ花火めいた火花が大量に噴き出す。やがて回転の中から流れ星めいて火の玉が飛び出し、近くのビルの「あッサボテンシティ?」というネオン看板を直撃!破壊!火の玉の正体は弾かれたスリケンだ!

 ギャリギャリギャリ!摩擦音は収まらぬ。二枚のスリケンの残る一枚が火の玉となって回転の中から飛び出し、近くのビルの「武田信玄」と書かれた看板に直撃、粉砕!タツマキとなったケジメニンジャはニンジャスレイヤーめがけて降下する!「イイイイヤーッ!」

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは果敢に迎撃!みずから跳躍し、降下してくるタツマキに飛び込む!なんたる蛮勇!これではバラバラに切り裂かれてミンチ重点……否!ニンジャスレイヤーはケジメニンジャと共に回転を開始した。ゴウランガ!一体何が!?

 望遠レンズとスローモーション処理が可能な読者諸氏には見える!回転するケジメニンジャの手首をニンジャスレイヤーの左手が掴んでいる。これによってニンジャスレイヤーはケジメニンジャの回転と同体となり、斬撃を無効化したのである。さらに自由な右手で、回転しながらケジメニンジャに連続攻撃!

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」繰り出される苛烈なチョップ連打!ケジメニンジャも回転しながら、掴まれていない手で相殺攻撃!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

 反撃を繰り返すケジメニンジャの上腕からバイオ血液が噴き出す!ピラニアに食いちぎられたかのように、大きく抉られた傷口……あのツヨイ・スリケンを無傷で弾き返すことはできなかったのだ!だがケジメニンジャはニンジャスレイヤーのチョップを打ち返し続ける……そして二者が地面に叩きつけられる!


6

「どちらもやりおる!」サラマンダーは液晶モニターに熱っぽく叫び、腰を浮かせた。「素質があるやも知れん……俺の礎となる素質が!」「フン」ダークドメインは鼻を鳴らした。「あんたの獲物になると決まったわけでもなかろうに」「クローンヤクザとは思えんな」パラゴンは唸った。「実際強い」

「余興としてはなかなかよの」ケイビインは裸のオイランの豊満な胸を揉みながらサケをあおった。「確かにデスナイト=サンを殺ったのはこの男か。だが、あのソウカイヤのラオモト・カンの命を奪うほどのカラテか?」「……秘密が隠されておるのだ」パラゴンは陰気に言った。

「あのクローンヤクザはやはりニンジャスレイヤーに殺されると思うかね」ケイビインはダークドメインに水を向けた。ダークドメインはオハギを食べ、言った。「……有効打が打てていない。時間の問題だろうな」

「いや、まだだ。まだ動きがあろう」とパラゴン。「ケジメニンジャのあの奇妙な回転攻撃はカマイタチ・ジツ。おいそれとお目にかかれるジツではない」「知っているのかパラゴン=サン!」ケイビインはパラゴンを見る。パラゴンは陰気に頷いた。「あれはマンジ・ニンジャのユニーク・ ジツだ」

「マンジ・ニンジャ?」「さよう。かつて江戸戦争で悪名を轟かせた不吉なアーチニンジャだ。マンジ・ニンジャのカマイタチ・ジツがひとたび戦場で繰り出されるや、そこに血の池が生じたと言う。後世にあのジツを復活させた者は無い。あのクローンヤクザに憑いたニンジャはマンジ・ニンジャその人だな」

「マンジ・ニンジャ」「左様。神出鬼没、悪鬼の如き戦いぶりで末期の江戸戦争を大いに荒らした。実際、彼の出現が要因となって江戸時代の幕開けは二年ほど延びたとされる」「それほどのニンジャがクローンヤクザに憑いたか。コメディめいておるな」ダークドメインは鼻を鳴らした。

「それほどのニンジャソウルであればこそ……やも知れぬ」パラゴンは言った。「アーチニンジャの力あればこそ、クローンヤクザにあれほどの強さをもたらした。アーチニンジャの力あればこそ、あのクローンヤクザの洗脳を破って自我をもたらし……ケジメニンジャたらしめた」

「そうでございますな!」ヨロシサン社員が勢い込んだ。「そして、そんな危険なニンジャソウルを背負ったクローンヤクザをああして再度制御しニンジャスレイヤーに向かわせているのが、我が社の今回の新技術でございます!」「なるほどよくわかった!」ダークドメインが言った。ヨロシサン社員は笑う。

「これからも弊社はザイバツ・シャドーギルドとウィン・ウィン関係を築いてまいります!」「うむ」「バンザーイ!」「うむ」ダークドメインはどこか冷淡に頷いた。そしてヨロシサン社員の方向に右手をかざす。「だがお前の話は煩わしい。そして神聖なる円卓の間を小便で汚したゆえ、生かしてはおかぬ」

「え?」ダークドメインはかざした右手を前に出した。直後、ヨロシサン社員の足元の床が円くくりぬかれたように開いた。穴めいた超自然の円の奥は、緑の格子模様が蠢く暗黒の宇宙であった。コワイ!「え……?アイエッ!?」社員はいきなり足元に開いたその宇宙に一瞬で吸い込まれた!

 ダークドメインが右手を握ると、超自然の穴は何事もなかったかのように閉じられた。ヨロシサン社員はいなくなっている。どこへ消えたのか?それをダークドメインが他者に語る事は無いだろう。「おお!確かに!ケジメニンジャが仕掛けたぞ!見ろ!」ケイビインが液晶モニターを覗き込み、叫んだ。


◆◆◆


「イヤーッ!」「グワーッ!」ケジメニンジャが先んじた。前蹴りがニンジャスレイヤーの胸板を打ち、弾き飛ばす。ニンジャスレイヤーはバック転を二連続で繰り出し着地。そこへケジメニンジャが危険な横回転攻撃で迫る!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは垂直跳躍!「二度同じ手など実際悪手!」

「それは貴様の行いだ」回転しながらケジメニンジャが叫び返す。回転の軌道が突如不規則にぶれ、ニンジャスレイヤーの降下攻撃を回避!そのまま着地したニンジャスレイヤーの周囲を衛星めいて回転する!アブナイ!「貴様をケジメする!」

 ニンジャスレイヤーは一転、防御専念を強いられる。周囲を回転しながら激しく繰り出されるケジメニンジャのドス斬撃!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

 ゴウランガ!恐るべき攻守の応酬!ケジメニンジャの衛星回転ドス斬撃の執念深さは驚異以外の何物でも無い。それら斬撃の一つ一つを速く、なおかつ丁寧にチョップで弾き、あるいはブレーサー(手首装甲)でそらしてゆくニンジャスレイヤー。そのニンジャ集中力が試されている!

 ぐるぐるとニンジャスレイヤーの周囲を旋回するケジメニンジャもまた、言うまでもなく、ニンジャ集中力を極限燃焼させていた。その鼻の穴からバイオ血液が噴き出し、回転する斬撃の風圧を受けて霧状に拡散する。「ケジメ!ケジメ!ケジメ!」なぜニンジャスレイヤーはバラ肉となって崩れ落ちぬのだ!

 いつしかケジメニンジャの視界は余分な周囲の光景を流し去り、斃すべき敵であるニンジャスレイヤーだけの世界が映し出される。やがてその像すらぼやけ、その動きと空気の振動だけが輝く影となって立ち昇ってくる……。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」背後の暗黒はいつしか不可思議な光景に変わってゆく。平らな水平線と無機質な地面……砂浜……そして宙に浮かぶ黄金の月……敵対者のニンジャソウルの輪郭。ニンジャスレイヤーのニンジャソウル!ナラク!

 ケジメニンジャは困惑した。そして畏れた……ケジメニンジャの内なるニンジャソウル、マンジ・ニンジャは、眼前のこの不定形の混沌めいた存在に、本能的な恐怖を感じた。それはかつての大戦争においてすら経験した事のない、不可解な恐怖である。これは何なのか?彼は何なのか?「イヤーッ!」ケジメ!

「グワーッ!」ケジメニンジャの恐るべき斬撃がついにニンジャスレイヤーを捉える。ニンジャスレイヤーの左手首から先がケジメされ宙を飛ぶ!おお、ナムアミダブツ!ナムアミダブツ!さらにケジメニンジャが高速回転しながら迫る。狙うは右手首だ!「イヤーッ!」

 獲った!ケジメニンジャは容赦なき斬撃の軌道の先に勝利を確信した。この正体のわからぬ敵が内に秘めた不吉な何かをあらわにする前に速攻をかけ、トドメを刺すべし。ケジメニンジャの視界には、煮えたぎる人型の混沌、そこへ伸びるドス・ダガーの刃。その奥には凪いだ海、上空に自転する黄金の立方体。

 この敵を倒し、そして己のビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシ己のサンビョーキトシヨリヨロシ己の生きたサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨ己の生きた痕ロシサンビョ意ーキトシヨリヨロシサ味ンビョーキトシヨリ

 ……「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーのニューロンが加速し、時間感覚が泥のように重くなった。くるくると回りながら飛ぶ己の左手首。感覚が研ぎ澄まされ、激痛が身を焼く。身体の左右のバランスが崩れ、さらにドス・ダガーは襲い来る。

 ニンジャスレイヤーの視界が赤く染まった。その視界がすぐに晴れ、彼は己の右手がケジメニンジャの顔面を鷲掴みにしているのを見た。顔面を掴み、もろともに大きく跳躍していた。ニューロンの指令をも上回る速度であった。ビルの淵を飛び離れ、共に落下していた。轟々と風が鳴り、落下する二者を包む。

 落下しながらケジメニンジャがもがいた。だがニンジャスレイヤーが右手を離す事はなかった。ニンジャスレイヤーはケジメニンジャとともに地面へ落下。その勢いそのままに、砕けたアスファルトへ後頭部から叩きつけた。

「ニンジャ……」フジキドは己の口から発せられた言葉を耳にした。そこへ続く文言に、自らの自発的な意志をも重ねあわせ、言った。「「ニンジャ殺すべし」」ケジメニンジャがもがく。ニンジャスレイヤーは拳の失われた左腕でその鎖骨を殴りつけた。切断面から噴き出す血液は重油めいて燃え上がった。

 ケジメニンジャがもがく。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは右手で掴んだ顔を引き上げ、後頭部を再度叩きつけた。「イヤーッ!」叩きつけた。「イヤーッ!」叩きつけた。「イヤーッ!」叩きつけた。「イヤーッ!」叩きつけた。「イヤーッ!」叩きつけた。左手首切断面は松明めいて炎を燃やしている。

 遅れて落下してきたのはその手首から先である。地面に叩きつけられる寸前、その手首はゴムにでも引っ張られたかのように反撥した。手首の先もまた、重油めいて燃える血液を噴き出していた。炎は糸のように、ニンジャスレイヤーの腕と切り離された手との間でつながっていた。

 腕先の炎は切り離された手を引き寄せ、接合した。ニンジャスレイヤーの左腕は今や肘先が不浄の炎に覆われている。彼がこの不浄の炎を纏ったイクサは今までに数度だけある。ケジメニンジャに馬乗りになったニンジャスレイヤーの双眸を、水たまりが鏡めいて写していた。センコ花火めいた眼光を。

 フジキドは己の下になったケジメニンジャを……否。マンジ・ニンジャを見た。輝く人型の輪郭を。そして周囲に広がる無限の砂浜、真っ黒の空、宙に浮く黄金の立方体を見た。そして己の身体を。ナラク・ニンジャのニンジャソウルと重なり、まだらになった己の輪郭を見た。

「これは」フジキドは呟いた。「これは一体」マンジ・ニンジャが身じろぎした。その輪郭に、凶々しい書体の米粒大の文字が群がる。「ビョーキトシヨリヨロシサン」「ビョーキトシヨリヨロシサンビョーキトシヨリヨロシサン」ぞわぞわと群がる文字はやがてフジキドの身体を這い上り始める。

「ヌウウッ!?」「滅ぼせ!バカめ!」フジキドのニューロンに叱責が駆け巡った。「ナラク!?」「滅ぼすのだ!マンジ・ニンジャを!」「ナラクに従え!フジキド!」思いがけず、頭上からしわがれた老婆の声が飛び来たった。「考える時間は無いよ!」「……イヤーッ!」

 マウント・ポジションから、フジキドは右拳でマンジ・ニンジャを殴りつけた。「グワーッ!」シロアリめいて二者の身体にたかるヨロシ文字の一部が飛び散り、砕け散った。「イヤーッ!」さらに、接合されたばかりの左拳を振り下ろす。「グワーッ!」さらに右拳!「イヤーッ!」「グワーッ!」

 さらに左拳!「イヤーッ!」「グワーッ!」さらに右拳!「イヤーッ!」「グワーッ!」さらに左拳!「イヤーッ!」「グワーッ!」さらに右拳!「イヤーッ!」「グワーッ!」殴るたびヨロシ文字は飛沫めいて砕け散る!残されたヨロシ文字はぞわぞわと蠢き、マンジ・ニンジャの顔部分へ寄り集まる!

 フジキドは両手指を組み、振り上げた。「スゥーッ!ハァーッ!」背中を反らし、拳に力を込める。そして、「イヤーッ!」振り下ろす!マンジ・ニンジャの顔面に、拳が叩きつけられる!「グワーッ!」残るヨロシ文字が、そしてマンジ・ニンジャが爆発四散!「グワーッ!」後方へ吹き飛ばされるフジキド!

「グワーッ!」背中から地面に落ちたフジキドの脳裏に微かに老婆の声が聞こえた。「ようやった……」……今の不可解な体験は?そしてケジメニンジャを倒すことは出来たのか?フジキドは即座にスプリングキックを繰り出し立ち上がった。そして仰向けに倒れるケジメニンジャを見下ろす。

 ダークスーツ姿のクローンヤクザの首から上は無残に爆ぜ割れ、消失している。死んでいる。倒したのだ。そしてここは無限の砂浜などではなく、ビルの谷間、砕けたアスファルトの路地裏だ。フジキドは己の左手を見た。手首にはブレスレットめいた焼け焦げの跡ができている。激しく痛む。

 たった今フジキドが見た光景は何だったのだろう?「ナラク?」フジキドは呟いた。己のニューロン内の返事は無い。フジキドは訝った。ケジメニンジャにトドメを刺しながら、異常高揚した精神が幻覚を見ていたのか?……否!手首の接合傷、死んだ敵。結果は全て現実だ。体験は現実の重みを持っていた。

 エンジン音が背後から近づいてきた。振り向くと、三輪トラックの窓からくたびれた男が身を乗り出し、手招きしていた。「ちょいと拝借!俺は実際探偵であって盗人じゃ無いんだが」ガンドーだ!「乗りな、まだ間にあう……オイオイ何をボンヤリしてる?」「うむ」フジキドは小走りにトラックへ向かう。

「ベストなタイミングだったな、ええ?」ガンドーは路上のケジメニンジャの死体を見やる。「おかしなクローンヤクザだったが、さすがだな。……だが頼むぜ、まだ何があるかわかったもんじゃ無い。『ハイキングはドア・トゥ・ドア』だ」「ミヤモト・マサシか」「あぁ、誰かは忘れた」

 助手席へ乗り込みながら、それでもフジキドは上の空だった。ガンドーは芝居がかって肩をすくめた後、「ハイヨー!シルバー!」叫んで一気にアクセルを踏み込んだ。安定の悪い三輪トラックはよろめきながら急発進した。


エピローグ

「……お目覚めかね」波打ち際に佇むずんぐりと巨大な影が、身を起こした彼を振り返った。「おかしな事もあるもンだよ。ほンとにね」巨大な影の正体は、幾重にもボロクズを身にまとった老婆である。どこまでも続く砂浜と暗い海、そして目の錯覚のような、妙に背丈の大きい老婆。

「ニンジャスレイヤーは?」「帰ったよ」「俺は死んだはず」「そうさね」「……ではこの海は、サンズ・リバーなのか。……貴方はカロン・ニンジャ?」「ファー、ファー、ファー」夜空を自転する金色の立方体の下、老婆は肩を震わせて笑った。「あンたは死んだねェ、それは間違いないンじゃないのかね」

「……」「アイサツをしようね。ドーモ、バーバ・ヤガです。あンたは……ケジメニンジャでいいだろう。あンたをニンジャたらしめたマンジ・ニンジャは滅びた。だが単に『ケジメ』という名前では、ちょっと座りが悪いね、ファファファ!」老婆は低く笑った。

「この際、あンたが自分でつけた名前なンだ。あンたのモノだ。名乗るがいい。ケジメニンジャ=サン」老婆は滑稽なしぐさでアイサツした。「ドーモ、ケジメニンジャ=サン」「……ドーモ。バーバヤガ=サン。ケジメニンジャです……俺の身に何が起こったのだ。ここはサンズ・リバーでは無いのか」

「ここは……ファー、ファー。コトダマ空間というやつさ、ケジメニンジャ=サン」ガラス玉のような老婆の瞳がケジメニンジャを見据える。「何事が起きたのか、はてさて。よう解からん。マンジ・ニンジャは大変に力のあるニンジャだッた。ナラク・ニンジャとの邂逅が、おかしなノイズを生ぜしめたかね」

「ノイズ」「あたしャ、こんなの、見たこと無い。二度三度と起こる事象じャ、無かろうね。おかしな話さねェ。クローンの魂、ニンジャ、はてさて。組み合わせが面白かったものかね。ニューロンの奇跡!ファー、ファー、ファー、ファー、お伽話めいた話さね」

「俺はどうなるのだ。俺がここにいる意味は」「……」バーバヤガは小首を傾げた。「どうもならンね。ただ、ここに在る。意味など無い」ガラス玉のような瞳はこの暗い海よりも静かに、彼を見つめている。そして厳かに付け加えた。「ま、世の中に意味など無いものよ。こりゃゼンだね、ファファファ」

 バーバヤガの背後で海水が隆起した。霧めいた飛沫をまき散らし、骨や布、草などでツギハギされた巨大な家が姿を現した。「ま、少なくとも、ケジメをして回る必要は、無くなった事だねェ。それこそ無意味だ」老婆は海を踏み分け、巨大な家へと歩を進める。玄関扉へ続く階段で、バーバヤガは振り返った。

「ここは穏やかでイイところだが、ちと退屈かもしれンね」「……」「ついてくるかい、ケジメニンジャ=サン。途中下車は自由だよ」独りでに玄関のショウジ戸が開いた。バーバヤガはしばらく戸口からケジメニンジャを見下ろしていた。

 はるか頭上、黄金の立方体は音もなく自転を続ける。ケジメニンジャは寄せては返す波の音を聞いていた。そのまま、どれほど時間が経過しただろう。やがて彼もまた、海の波を踏み分け、階段を上がって、巨大なボロ家へ歩を進めていった。バーバヤガは頷き、ケジメニンジャを迎え入れた。

 二人が中へ入ると、ショウジ戸はピシャリと閉まり、巨大な家は現れた時と同様、海の中へと沈み込んで行き、見えなくなった。そして後には、静かな海と無限の砂浜だけが残った。そしてなめらかな黒い空の上、黄金の立方体はゆっくりと回り続けるのだった。


【ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス】終



N-FILES(原作者コメンタリー、設定資料)

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N-FILESは原作者コメンタリーや設定資料等を含んでいます。
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