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S4第3話【マスター・オブ・パペッツ】#7

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 17世紀! 英国社交界に、紅茶が出現する! その時点においては無論、紅茶とはすなわち発酵されたチャの事を指し、あくまで社交の道具であった。だが程なくして、チャの真実は英国においても明らかとなる……とある謎めいたメッセンジャーの来訪によって! メッセンジャーは、時を逆さまに生きると嘯く謎のニンジャであった!

 紅茶とはなにか? それは茶であり、チャにほかならない。では、チャとはなにか? チャ、すなわちそれは神秘の次元に至る秘儀の扉を開く鍵……チャドーのエレメントである! 英国中枢において門外不出の秘儀とされ、閉鎖世界の中で独自に洗練されていったチャドーは、謎めいた黒ずくめのニンジャ達によって継承されていった!

 そして19世紀末! 日本より帰還したとある英国人エンジニアが奇妙な護身術を提唱した。「肉体鍛錬と精神集中の果てにティルナノグに至る秘儀」……これを進歩的精神として英国民に共有せんとしたのだ。だがその努力は唐突に絶えてしまう。その影に暗躍していたのが、闇の英国式チャドー使い達である! 大いなる真実にいたずらに触れてしまった事が、その伝導者の不幸であった!

 ボックスカラテ禁止令を始めとする様々な女王令はチャドーの秘儀の暴露を防ぐために発せられたものに他ならぬ。ゆえにこそ英国チャドー使いは強大なるカラテを有し……第二次世界大戦においてはエクスカリバー携えしロイヤルニンジャがスピットファイア戦闘機と共にナチスの侵略を阻止したのである!

 ……(しかし、チャドー奥義は20世紀に断絶する)バトラーの声はアヘンの煙の中に滲んだ。香炉、五段のケーキスタンド、ポット、カップ、ソーサーなどの名物シノワズリ茶器はそこに並ぶだけで既に若干の共鳴を起こし、見事な陶磁器がカタカタと震えている。(はじめなさい、マークスリー=サン)

(スウー……ハアーッ……)マークスリーは口を開かず呼吸し、五段のケーキスタンドに配された五大エレメント膳を最小限の咀嚼によって順に摂取していった。体内をめぐるカラテの流れを意識する。身体が輝き始める。(その感覚を覚えよ。タツジンはチャドーに茶器を必要とせぬ。お前もそうなるのだ)

(スウー……ハアーッ……)マークスリーは呼吸を深める。バトラーは後ろで手を組み、恐るべき石像めいてマークスリーを見ている。1インチでも粗相あらば光の速さで乗馬鞭が繰り出され、マークスリーの美しい手を打ち据えるだろう。(20世紀末にチャドーは一度途絶えた。その後の電子戦争は発掘の天啓であり、チャドーにとって福音であった。奥義遺失の悲劇を二度と繰り返すなかれ。KOLに栄光あれ)

(スウー……ハアーッ……)マークスリーは呼吸を深める。乗馬鞭を受けずにここまで続いたのは初めての事だ。もはや美少年は光の精めいた。そしてバトラーも輝いていた。英国式チャドーを極めた存在はKOLにおいてバトラー唯一人。秘儀の発掘が出来たとしても、使い手を新たに生み出す事は至難であった。(だが、お前ならば)

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