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【日報】「さかなのこ」が凄く良かった(本兌有)



「さかなのこ」を観て、ものすごく感動した

ジワジワと絶賛が伝わってきていた「さかなのこ」を見たら凄く良かった。

開幕1分でなんか泣けてしまい、その後も2時間半ぐらいとにかくずっと面白く、スタッフロールの頃にはマスクベジョベジョ、大変でした。あまりにも素晴らしかったので、是非、上映期間中に映画館に観に行っていただきたいと思いました。

キービジュからもわかるとおり、これは、さかなクンの伝記的映画です。さかなクンがどんな人なのかは既に皆さんご存知かと思うのでここで繰り返す必要はないかと思いますが、ギョギョ!と言っていて、ハコフグの帽子をかぶり、めちゃくちゃ魚に詳しく、めちゃくちゃ絵がうまい人で、学術的にもすごい事をしている人……というあの人の、半生が描かれています。

冒頭に「男か女かはどっちでもいい」という文章が無音でバッと表示され、そのあと、のん演じる「ミー坊」すなわちさかなクンが自室で起床し、水槽の魚に餌をやる。そしてクローゼットを開ける。このシーケンスだけで、もういきなり言語化されざるこの映画の強い力が伝わってきました。フィルムに閉じ込められた空気の粒子の感じ。男か女かはどっちでもいい。開き直りとかチョケてるとかではない、真剣、匕首を突きつけてくるような、画そのものの真摯な・静謐な・迫力ある空気感で、この時点で「凄み」のある作品であることが、無音の空気だけで完全にセットアップされ、謎の感動でボロボロ泣いた……!

そこからの2時間半弱は、最初に感じた謎の感動のまま、その感覚を直接言語化せず丁寧に輪郭を与えていくような、ずっと心震わせる体験。人間と人間が言葉と行動でやり取りし、物事が起こり、時間が流れ、各自の人生が進んで、状況が移り変わっていく。セリフが全部よく、ギャグも全部滑らずキマりつつ。なにか超絶スペクタクルが起こるわけでもないながら、全然飽きない。激しい瞬間があるわけでもないながら、やたら心の琴線に来る……!

ミー坊(さかなクン)は普通と違う。じゃあ普通って何だ。「よくわからない」。普通じゃないとされる人は、どうやって生きる? どうやって幸せになる? 幸せって何? 普通の人が決める事なのか?「このままサカナの事ばかりで、勉強もできないと、将来困るのではないですか?」という進路指導の言葉に、ミー坊の母は「それでいいじゃないですか」と答える。それは楽観とか安直な全肯定ではない、覚悟の言葉とも感じました。事実、普通にやれないミー坊に、現実は結構容赦なく、生活も大変になっていく。作品の優しい目線の通底の一方で、そのあたりも無言のうちに描写されてゆく。でも、そのキツさを感じ取るのは、「キツいよなあ」と思う傍観者の俺らであって。でも……それでも、それでも人生は続く。良し悪しとか成功失敗とかそういう単純なものさしを越えて、人生は続く。そういう実感を、胸に落とし込んでくる。そして最終的にミー坊はおさかな博士になる。なんかもう、観てる俺の心がすごい状態になる。生きるを感じる。

今回、漠然とした印象をウワッと書いてるだけだけど、「こうで、こうなるから、こう!」みたいな映画ではないので、いきおいそうなるのは仕方ない……。観てほしい……。

自分、「凄いらしい」ぐらいしか情報を入れずに観に行って、思い切りくらってしまい、震えるほど感動し、パンフレットを買って確認して……監督、誰だろうと思ったら沖田修一、すなわち南極料理人の監督だった! そしてセリフとかとにかく凄いので、これは只事ではないと思ったら、脚本は五反田団の前田司郎だった! 見逃したらいけない作品だったのだ! 映画館で観るの間に合ってよかったと心から思う次第です。


(本兌 有)


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