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忍者ブレイカー 第1話【蠢動】


天 元 風 魔 城 ! 


 渦巻く暗雲と稲妻の閃きの狭間に、この邪悪な超自然の城郭は存在する!

「風魔!」「風魔!」「風魔!」「風魔!」「風魔!」大広間を埋め尽くす百万の忍者が具足を打ち鳴らし、風魔の名を叫ぶなか、黄金の玉座にわかにかき曇り、力ある存在が現出した!

「天魔業臨(てんまごうりん)の時、満ちたり!」「キエエエエーッ!」百万の忍者が応えた……!「今こそ風魔忍軍の再征服の時だ!」「キエエエーッ!」「大将軍!」「ひらに! ひらにーッ!」

「鎮まれェい!」百万の忍者が静まり返った!「どうした。風魔暗黒忍者」「……風が」「詩人(ぽえと)! 服部忍者の遺産を懸念しておるか。さすがだ」「さようでございます」「ころせ……見つけ次第、殺すのだ!」

何かが起ころうとしている……。

備えるのだ!

藤 木 戸 ケ ン ジ よ !


「ウワーッ!」

 教室どころか廊下にまで響き渡る絶叫悲鳴を上げ、突っ伏していた机から回転ジャンプして天井に頭をぶつけたのは学ラン姿の男子高校生!「コラッ! 藤木戸ケンジ君! 廊下に立っとれ!」「やっちまったぜ畜生め!」溌剌(ハツラツ)!

主題歌:
KICK KICK JUMP! 素晴らしいFIGHT! 夢見るBOYは今日もちょっとSTORM! LETS GET STUCK THE NINJA! 忍者ブレイカー!


第1話【蠢動】


「ケンジ君! ちょっとケンジ君」「なんだよ小梅ちゃん。こんな屋上まで来られたら俺の俳句インスピレーションがはかどらないぜ」「迎えに来たんだよ! 高校生で廊下って……しかも早速サボってるし!」「まったく小梅ちゃんには俺がこの町に引っ越して来た3歳の時から頭が上がらないぜ」

「俳句部は部活として認められてないよ!」「知るかよ! 俺のインスピレーションに戸は建てられねえ。古文の授業をさぼったのも、先生よりも古文知識があって古事記や平家物語を全部暗唱できる俺をうとましがってるから、こっちからおさらばしてやっただけだ」「無駄に詳しいんだから」

「学問に無駄などないぜ! そして俺は」(いつか学者になって、行方不明の考古学者の兄を見つけ出すんだ……)ケンジは心の中で付け加えた。

「普段ケンカばかりしてるくせに」「売られたケンカを買ってるンだ。俺は悪くねえ」「買っちゃダメだよ、売られても!」「土下座しろってのか?」「話し合いとか警察よ!」

 ブロロロロー! 

 その時だ。校庭に爆音が轟く。ケンジは屋上フェンス越しに大変な状況を見て取った。「あれは!」ブロロロロー! 校庭をグルグルと旋回するゾク車の群れ! バイクには「藤木戸ケンジ殺る」と書かれた旗がささっている。殺伐! そして囲まれているのは……「あれは生活指導のキメ松!」危ない!

「ちょっとやめないか!」キメ松(いつも髪型と服装をキメている生活指導教員の松村)は周囲を旋回するゾク車を叱責する。だが不良学生たちは聞く耳もたない。他校なのだ!「ヘイヘイ!」「ケンジ出て来いや!」「ケンジヘイヘイ!」「……やべえ……畜生あいつら……許せねえ!」「ケンジ君!」

 ケンジは階段を振り返ったが、思いとどまり、フェンスによじのぼった。「何してるのよ!」「やめさせねえと……俺のせいだからよ!」「ケンジ君!?」ケンジはフェンスを乗り越えると、校舎の壁に垂直に配されたパイプにしがみつき、滑り降りた。「ケンジ君ーッ!」そして不良生徒に向かって行く!

「来たな、ケンジ!」「ケンジヘイヘイ!」「昨日はナメくさった真似してくれたじゃんよ」「武田先輩が許さねえッつったよな?」「ヤクザの舎弟だぜ?」「全校生徒で明日までに2000万円カンパしろや」恐ろしすぎる。キメ松はケンジを見た。「来ちゃいけない!」「うるせえー!」「グワーッ!」

 キメ松をバットで躊躇なく殴りつけた身長2メートル超の男が武田先輩だ。のたうちまわるキメ松を蹴り転がし、ケンジに向かって指をボキボキ鳴らして進み出る。「昨日は後輩が世話になったみたいジャンよ」「その後輩どもにフルーツ屋の爺さんが世話になりかかってたんで、助けたのさ」ケンジは不敵!

「ナメるな!」武田はいきなりケンジを殴りつけた!「グワーッ!?」ケンジは身構えようとしたが、さらに一撃!「イヤーッ!」「グワーッ!?」「殺す! 殺す!」武田はひしゃげたバットを投げ捨て、更に殴る!「グワーッ!」「さすが武田先輩!」「でも死んじゃうんじゃ……グワーッ!?」仲間も!「殺すーッ!」

「グワーッ!」「殺すーッ!」「アバーッ!」危険だ! 何かが起きている。不良生徒は震えながら、武田を見て呟く。「や、やっぱおかしいよ……武田先輩、さすがにそこまでする人じゃ……それに見間違えでなければ昨日までは身長は170ぐらいだったのに今は2メートルくらい間違いなくあるから、ちょっと様子がおかしい……」

「殺す! 殺す! 殺す! イヤーッ!」「グワーッ!」強烈な蹴りを喰らい、藤木戸ケンジは数十メートル吹き飛ばされた。

(俺……死ぬかも)ケンジは思った。そして、KRAAASH! 校舎の窓を突き破り、一階に叩き込まれた。「動けねえ」ケンジは朦朧としながら手元をまさぐった。「ここ、どこだ」

 そこは資料室だ。ガターン! 衝突の衝撃で、神棚に飾られていた埃だらけの物が、ケンジの上に落ちて来た。「いてェ!」ケンジは反射的にそれを掴んだ。光っている。「……竹筒? いや……」ケンジは反射的に筒の蓋を取った。そこから、妙な巻物が出て来た。「何だこりゃ? いや、こんな場合じゃ……」

「ケンジ……アバッ、ケンジィー! アババババ、殺す……それを渡せ! 殺す!」逆光になった武田が壁の穴に現れる! ケンジは息を呑む。武田はもはや武田にあらず。恐るべき忍者モンスターが、そこにいた。「それを渡せ、非忍者。貴様ごとき虫ケラが自由にしてよいものではない」「な、何だってんだ」

「我が名は風魔剛強丸。誇り高き風魔忍者の一人よ!」風 魔 剛 強 丸 !「イヤーッ!」「グワーッ!」蹴り! だがケンジは光る巻物を離さない。何か大事な物だと思ったのだ。そしてその直感が、彼を救った。そして戦いに導いたのだ……。「ウワーッ! 何だ!」巻物がタスキがけに肩に巻き付く!

『ググググ。でかしたぞ、非忍者』

「頭の中に声が! まさか、光る巻物から!?」『あながち間違ってはおらん。俺様は奈落忍者。詳しい説明は省くが、要は遺跡から愚かな学者連中がこの巻物を掘り起こし、使い道もわからずたらい回し……最終的にこの学校の資料室に放置されておった』「すごいぜ」

『そしてこの巻物の正しき価値を知るのは風魔忍軍というわけよ。皮肉な話だ!』「巻物を狙っているッて?」『その通り。俺様が敵の手に渡ればこの世は終わりだな。愉快』「ちょ、待てよ! そんな責任、負えるわけねえぜ!」『ならば目の前の敵を倒すべし』「わ……わかったよ!」『重畳! 変身せよ!』

「変身だと?」『その通り! 巻物をこうして……羅生門!』光がケンジを包む! 一瞬後、そこには白い忍者装束に身を包んだ忍者の姿! 豪覧雅(ごうらんが)!「バカな! 非忍者の屑がそのような……」驚く剛強丸!「名乗れ貴様! 何者だ!」『応えるのだ藤木戸! 今のおぬしの名は、忍者ブレイカー也!』「何だって? ええと……導燃(ドーモ)! 俺の名は忍者ブレイカーだ!」

 忍 者 ブ レ イ カ ー !

「バカな! 許さんぞ!」向かってくる剛強丸!『戦え! 藤木戸!』奈落忍者の声が響く。「ど、どうすりゃいい」『戦え』「畜生わかったよ!」柔術の構え!「巻いていくぜ! イヤーッ!」「ウオオーッ!」ぶつかり合う二人の忍者!

主題歌:
KICK KICK JUMP! 素晴らしいFIGHT! 夢見るBOYは今日もちょっとSTORM! LETS GET STUCK THE NINJA! 忍者ブレイカー!

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」殴る殴る!「バカな!」

 押される剛強丸! そしてヤリめいたサイドキックが決まった!「イヤーッ!」「グワーッ!」蹴り出され、校庭に転がり出る剛強丸!『今だ藤木戸!』「イイイイイヤアアーッ!」「グワーッ!」南無阿弥陀仏! 風魔剛強丸は爆発四散し、その塵と煙の中、身長170センチの武田が気絶して砂利の上に仰向けに倒れたのだ!

 タダーン! 藤木戸ケンジは残心ポーズを取った。校庭の不良生徒やキメ松、心配して出て来た小梅が白い忍者を見て驚いた。「やべえ」ケンジは身を翻し、走り去った。風のように駆けながら、彼は心の中で奈落忍者に問うた。(こんな事になっちまって……俺、どうなっちまうんだ)答えは返らなかった。

第1話【蠢動】

第2話【襲撃】に続く!


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